表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルダーリッチに「不運」の呪いをかけられた剣豪少女、剣だけは最強ですが…  作者: ミコジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/17

リッチを倒すと再確認した事件

ギルドの朝はいつも騒がしい。武器を磨く者、依頼書を睨む者、酒を煽る者。様々な冒険者たちでごった返すホールの真ん中で、霞は乃亜を捕まえていた。


「乃亜、リッチの情報はまだ?」

霞の声には焦りが滲んでいる。仲間との絆が深まり、翼への想いが固まるほど、呪いは一刻も早く解きたかった。


「まだ来てませんね…ダンジョン間転移のせいで、追跡が難航しているんです」

乃亜は申し訳なさそうにタブレット端末を操作しながら答える。


霞はため息をつき、さらに問いかける。

「転移を阻害するアイテムとか、方法はないの? 何か知ってることない?」


「それが…高レベルの封魔結界なら可能性があるんですが、持ち運びできる物は希少で…」

乃亜が眉を下げて説明しようとした時だった。


ガヤガヤと、ホールの端から騒がしい声が聞こえてくる。ギルド職員たちが、大きな樽を台車に乗せて運んでいた。

「おい、どけ! 押収品の移送だ!」

樽の中では、何かがグチュグチュと粘つく音を立てている。


「なんですか、あれ?」

霞が顔を顰めて尋ねる。


「違法冒険者パーティが拠点でスライムを連れて帰って増殖させてたんですよ。その押収品です。服の繊維を食べる種類で、取り扱い注意なんです」

乃亜が説明するのを聞きながら、霞は「物騒ね」と呟いた。


その時。


「てめぇ、俺の女に手を出しただろ!」

「はあ? 知らねえよ、寝ぼけてんじゃねえぞ!」


ホール中央で、二人の冒険者が激しい口論を始めた。ガタイの良い斧使いと、細身の短剣使い。酒の匂いが漂ってくる。

「やめろよ、お前ら!」

他の冒険者が止めに入るが、斧使いが振り払う。その拍子に拳が飛び、命中。短剣使いの体が吹っ飛んだ。


ドゴンッ!


短剣使いの男は、台車の樽に勢いよく衝突した。

バキリと木が割れる音。樽が台車から転げ落ち、そのまま霞の方へと転がってくる。


「え……」

霞は反応が遅れた。一歩下がろうとしたが、床に置かれた誰かのバッグに足を取られ、バランスを崩す。


ゴンッ!


樽が霞の側頭部に直撃した。そして蓋が開き、中から暖かい粘液がドバドバと溢れ出てくる。


「きゃああっ!」

霞は頭からスライムをかぶった。透明で黄色がかったゼリー状の生き物は、瞬く間に彼女の全身を包み込む。


「霞さん!」

乃亜が悲鳴を上げる。


バリリ、ビリビリビリ…!


異変はすぐに起きた。スライムが霞の服を食べ始めたのだ。まず上着の肩部分が溶け、次に胸元の生地がパックリと裂けた。下着のストラップも切れ、ブラジャーがズルリと落ちる。

「いやっ!」

霞は胸を隠そうとしたが、スライムは容赦なくスカートにも侵入し、腰のベルトを溶かした。スカートが床に落ちる。パンティも繊維を食いちぎられ、ボロボロになった布地だけが足元に落ちた。


一瞬の出来事だった。


気がつけば、霞はギルドのど真ん中で、一糸まとわぬ全裸を晒していた。

顔から胸、腰、脚、恥部に至るまで、全ての肌が露わになっている。


「ヒィッ…」

霞は声にならない悲鳴を上げ、その場に蹲った。両手で必死に胸と股間を隠すが、隠しきれない。


「うわあっ!」

ホールのあちこちから冒険者たちのどよめきが上がった。


「「「おおおおお!!!」」」


すぐに歓声に変わる。

霞の裸体はあまりにも美しかった。鍛え上げられたしなやかな筋肉と、女性らしい丸みを帯びた曲線。白磁のような肌がスライムの粘液でテラテラと光り、どことなく艶めかしい。

そして彼女が必死に隠そうとしている分、逆に扇情的に見えてしまう。


「いいケツだな!」

「スタイル良すぎだろ!」

「おおーケツが丸見えだぜ!」

「立って見せてくれよ!」

「手どけろよ、見えねえじゃねえか!」


数十人の男たちの視線が、霞の裸体に突き刺さる。野次はエスカレートした。

「お尻なめてぇ!」

「乳も見せろよー!」

「顔真っ赤にしてんの可愛いな!」


「やめて…見ないで…」

霞は涙を堪えながら、地面に縮こまった。

恥ずかしい。怖い。翼さんに、翼さんの前以外でこんな姿を晒したくない。

そう思えば思うほど、涙が溢れてくる。


乃亜が慌てて自分の上着を脱ぎ、霞の肩にかけた。

「霞さん、これで隠して!」

「乃亜、ありが…」

霞が上着を掴もうとした瞬間、まだ彼女の肌に付着していたスライムが上着にも反応した。


ビリビリッ!

上着も数秒で繊維を食い尽くされ、無残な布切れとなって床に落ちた。


「そんなっ…」

乃亜も顔面蒼白になる。


「どうすんだよ、裸のまんまだぞ!」

「いっそ全部見せろよ!」

ギャラリーの興奮は収まらない。


乃亜は咄噗に決断し、霞の腕を掴んだ。

「こっちです! ギルドの奥に走って!」

「む、無理よ…動けない…」

「ダメです! ここにいたらもっと酷い目に遭います!」


霞は唇を噛み締め、決死の覚悟で立ち上がった。

左手で胸を押さえ、右手で股間を隠す。しかし、後ろは無防備だった。

「走ります!」

乃亜に誘導され、霞はギルドの奥へと全裸で駆け出した。


トタトタと裸足で走る音。その背後から、彼女の引き締まった白い臀部が、揺れるのが丸見えだった。


「うおおっ! 丸見えだよ!」

「あの尻、走ると最高だな!」

「足の奥もチラッと見えたぞ!」

「今夜はいい夢見れそうだぜ!」


野次はますます加熱し、口笛を吹く者までいた。

霞は恥辱に顔を歪め、ただ走ることだけに集中した。

(翼さん…ごめんなさい)


職員専用通路を抜け、誰もいない小部屋に飛び込んだ。

乃亜はすぐにドアを閉め、鍵をかけた。

「ここなら安全です。今すぐスライムを洗い流します!」


乃亜は消毒用のアルコールとタオルを取り出し、霞の肌に残った粘液を丁寧に拭き取っていく。

「このスライムはアルコールに弱いんです。すぐに綺麗になりますから」


「うぅ…グスッ…」

霞は震えながら、なすがままになっていた。

スライムが全て除去され、部屋の隅の汚物入れに捨てられると、乃亜は予備の職員用ジャージを霞に着せてくれた。


「もう…大丈夫ですよ、霞さん」

「あり…がと…う…」

霞はジャージを握りしめ、その場に崩れ落ちた。


「うっ…ううっ…ごめんなさい…翼さん…」

霞は声を上げて泣き出した。

「私…なんて、こんな…恥ずかしい…私、翼さん以外に裸見せるなんて…嫌だったのに…」


大粒の涙が、ジャージの膝部分に染みを作っていく。

乃亜はそっと霞の背中を撫でた。

「霞さん…」

「どうして私ばっかり…どうして…」

「リッチの情報、絶対に集めます。今すぐにでも手配しますから。だから…」

乃亜も目を潤ませながら、霞を励ました。


「霞さんの呪い、解けるまで諦めません。ギルド職員としても、友達としても」


霞は涙に濡れた顔を上げ、乃亜を見た。

「乃亜…」

「すぐに依頼の優先度を上げます。転移阻害のアイテムも、レアリティ下げて入手経路を探します」


霞は何度も頷き、「ごめん…ありがとう…」と繰り返した。

乃亜の優しさは嬉しかった。でも、それでも、あの場所で晒した恥辱は消えない。


ギルドホールにはまだあの野次馬たちがいる。霞を「丸見え」と囃したてた男たちが。

霞はジャージの襟を立てて顔を隠すように、裏口からこっそりギルドを出た。


拠点までの道を、ふらふらと歩く。街行く人々の視線さえ、全裸を見られた記憶を刺激して痛い。

(翼さん…翼さんに、会いたい…)

それだけが、彼女を家へと向かわせた。


ドアを開けると、リビングには翼と他メンバー全員が揃っていた。

「お、霞! どうだった? 情報は…」

翼が笑顔で振り返り、ギルドのジャージ姿の霞を見て、言葉を止めた。

そして、すぐに彼女の目の縁が泣き腫らしたように赤いことに気づく。


「お前、何があったんだ?」

翼は立ち上がり、大股で霞に近づいた。


その瞬間、霞は決壊した。

「ごめ…ごめんなさい!」

霞は翼の胸に飛び込み、子供のように泣きじゃくった。

「私…男の人たちに裸を見られちゃった…それもいっぱい…ギルドの、大勢の前で…」


霞は震える声で、ギルドでのスライム事故の全てを話した。

皆に見られ、野次を飛ばされ、お尻を晒して走ったこと。

許してほしい、と翼に謝り続けた。


「ごめんなさい…私がもっと注意してれば、呪いのせいでも、私がもっと…」

「霞」

翼は大きな手で、霞の頭を自分の胸に引き寄せた。そのままそっと、ぎゅっと抱きしめる。


「大丈夫だ。そんなことで霞を嫌ったりしねえよ」

翼の声は優しく、そして力強かった。

「俺が見てないところでってのはちょっとムカつくが、お前は何も悪くねえ。呪いのせいだ」


霞は翼の胸の中で、また涙を流した。

今度は悲しみではなく、安堵の涙だった。

「翼さん…私…」

「言っただろ。俺は霞を守るって。こんな不運からも、絶対にな」

翼が霞の背中をポンポンと優しく叩く。


他のメンバーたちも、温かく見守っている。

理央が「またリッチが霞さんに嫌がらせしたわね」と怒り、真白は「聖女として、あのリッチを許せません」と眉を顰める。裕樹は「リッチの行動パターンから、次の転移先を推測できそうだな」と冷静に分析を始めた。

京香も「師匠…私が絶対にリッチぶっ飛ばしますから…」と涙ぐんでいる。


翼はメンバーたちを見渡し、宣言した。

「リッチをぶっ倒す。情報を集め、次の転移先で必ず仕留める」


「「「うん!」」」

全員が力強く頷いた。


霞は翼の腕の中で、涙を拭った。

もう、怖がらない。

リッチを倒し、呪いを解く。そして、この男に想いを伝える。

それまでは、どんな不運にも負けない。


「翼さん…」

霞が小さく呼ぶ。

「ん?」

「ありがとう…」

霞は翼の胸に顔を埋め、今はただ彼の温もりを感じていた。


しばらくしてリッチの情報が霞のスマホに入った

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ