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エルダーリッチに「不運」の呪いをかけられた剣豪少女、剣だけは最強ですが…  作者: ミコジ


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剣豪2人がパーティのアタッカーに

「暁の盾」に新たな仲間が加わった。見習いアタッカー、佐々木京香だ。

ギルドのカウンターで加入申請書を記入している間も、翼は興奮を抑えきれない様子だった。


「すげえな! 宮本武蔵と佐々木小次郎がウチのパーティのアタッカーにいるなんてよ! 夢の共演じゃねえか!」


翼は目を輝かせ、二人の剣士の末裔を交互に指差してはニヤニヤしている。


「だから、本人じゃなくて子孫ね」

理央が冷ややかにツッコミを入れる。

「しかも片方は見習いだし」

裕樹も冷静に付け足す。


「いいじゃないですか、活気が出て」

真白だけが苦笑しながらフォローするが、霞と京香は揃ってため息をついた。


「まったく…あんたが騒ぐせいで、変な目で見られてるじゃない」

霞が書類をカウンターにバンと置き、不満げに言う。


手続きを終え、ついでに情報収集の為に乃亜のデスクへ向かう。

霞は乃亜に声をかけた。


「乃亜、エルダーリッチの情報は入ってない? まだ見つかってないの?」


乃亜はパソコンの画面から視線を外さず、すまなそうに首を振った。

「すみません霞さん、まだきてません。リッチの転移先までは追跡できていない状態です」


「そう…」

霞の肩がガクリと落ちる。呪いの主の行方が知れない絶望感が、また胸に重くのしかかる。


その様子を見ていた京香が、恐る恐る尋ねてきた。

「師匠、エルダーリッチを探してるんですか?」


霞は顔を上げ、京香を見た。言うべきか迷ったが、これから共に戦う仲間(見習い)には知っておくべきだと判断した。


「あいつを一度倒した時、不運になる呪いをかけられたのよ。私の体質も相まって、酷い目に遭ってるの。呪いを解く為には…アイツを殺すしかないわ」


語るうちに、霞の表情が自然と険しくなっていく。リッチへの殺意が、彼女の顔を鬼女のように変えていく。殺す。殺してやる。その強い決意が、空気をピリピリと震わせた。


ビビッた京香が、小さく「ひっ」と声を上げて後ずさる。


その時、大きな手が霞の頭にポンと置かれた。

翼だった。


「大丈夫だ。霞に何かあっても、俺が絶対に守ってやるから」


彼の低い声と、頭上の温もり。その信頼できる言葉に、霞の中の殺意がスッと霧散していった。

鬼のような表情が和らぎ、頬が桜色に染まっていく。瞳は潤み、唇は微かに震え、彼を見つめる目は完全に恋する乙女のそれだった。


「翼さん…」

霞の声色も、先程までの凄みから、甘い響きに変わっている。


それを見ていた京香は、なんとなく理解した。この二人の関係性。師匠が男に弱いわけではない、この男に弱いのだ。

彼女は理央と真白の間に割り込み、小声で聞いた。


「そうゆう事っすよね?」


理央はニヤリと笑い、真白はニコニコと頷いた。

「そうゆう事よ」


女性陣の秘密の共有が成立した。


さて、新入りが入ったことで装備を整える必要がある。京香の体に合った小太刀だ。

一行はギルド近くの武器屋へ向かった。店先に並ぶ数多の刀の中から、京香の体格と筋力に合う、あまり長すぎない小太刀を選ぶ。


「これなんかどうだ? 扱いやすそうだぞ」

翼が一本を手に取り、京香に渡す。

京香はそれを数回振ってみて、満足げに頷いた。


「いいっすね、これ! じゃあこれいただきます!」


京香がレジに向かうかと思いきや、彼女は胸を張って言い放った。


「お金無いっす!」


「「「はあ!?」」」

霞、翼、裕樹の三人が絶叫し、見事にズッコケた。


「なんで金ねえんだよ! 旅に出る時くらい持って来いよ!」

翼がツッコミを入れる。

「すんません、道中で全部旅費に消えまして」

京香は全く悪びれない。


霞は頭を抱えた。この弟子、前途多難だ。

「仕方ない、私が…」

霞が財布に手を伸べようとした時、翼がそれを止めた。


「いいってことだ。しょうがないから俺が出してやるよ」

翼が自分の財布からお金を取り出し、店員に支払った。


「えっ、翼さん…」

霞は驚いた。自分の弟子の分まで出してくれるとは。

翼は照れくさそうに鼻をこすり、

「見習いの装備代くらい、リーダーの俺が出すのが筋だろ? それに京香もこれから稼げるようになるしな」


その優しさに、霞の胸がまた熱くなった。金銭的な問題ではない。彼の人柄の良さが、たまらなく愛おしい。

霞はポーッと翼を見つめてしまう。


「師匠、顔赤いっすよ?」

京香が横から茶々を入れる。

「そうそう、またまた〜」

理央と真白もニヤニヤしている。

「う、うるさいわね!」


霞は顔を手で扇ぎながら、誤魔化すように言った。


京香の為にも、早めに実戦形式の連携を確認したい。一行はギルドに戻り、日帰りで行ける難易度の低いダンジョンの依頼を受けた。


「よし、行くぞ! 京香、遅れるなよ!」

「はいっ! リーダー!」


ダンジョン突入。

これは京香のデビュー戦である。


「京香、前に出すぎるな! 翼さんの背中から左に入れ!」

霞が指示を飛ばす。

「はいっす!師匠!」


京香は素直に指示に従い、翼の背中の陰に隠れながら敵の隙を窥う。

基本的な戦い方は変わらない。翼が壁になり、理央が援護射撃、真白が回復、裕樹が補助をする中、霞がメインアタッカーとして敵を仕留めていく。


「今だ! 京香!」

霞が敵の足止めをしている隙に、京香が飛び出した。

「ええいっ!」

小太刀を構え、敵の脇腹に切り込む。浅いが、確かな手応えがあった。


「やった! 当たったっす!」


「ああ、いい動きだ」

翼が盾で敵の攻撃を防ぎながら励ます。


霞は弟子の成長を見守りながら、同時に翼の背中も見ていた。

この頼もしい背中が、自分たちを守ってくれている。絶対的な安心感。

そして、その安心感の中で戦う心地よさ。


(この人と一緒にいると、不運さえも越えられる気がするわ)


霞は刀を振るいながら、小さく微笑んだ。

呪いはまだ解けていない。リッチも見つかっていない。

だが、今はこの日常と、仲間との絆を大切にしたい。


「次の敵だ! 気を引き締めろよ!」

翼の声に、霞と京香は同時に答えた。


「「了解!」」


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