外伝:クリスマススペシャル 白い夜と、予報のない贈り物
王都レウェンでは、
年に一度だけ
**「星灯祭」**と呼ばれる夜がある。
空に星灯を浮かべ、
家々に白い布と光を飾り、
「一年で最も、空が優しい日」とされる祭りだ。
ソーマは、その準備で慌ただしい街を歩きながら、
内心ずっと首を傾げていた。
(……これ、
どう見ても……
前世のクリスマスだよな……?)
◆
◆星灯祭って何ですか
「ソーマさん、
星灯祭、初めてですよね?」
リュミが楽しそうに聞く。
「……うん。
名前は聞いたことあるけど」
ガルムが屋台の串肉を頬張りながら言う。
「一年で一番食い物が増える日だ!
細けぇことは気にすんな!」
「それ基準なの?」
セシリアが即ツッコむ。
ノアは、
白い布で飾られた街灯を見上げていた。
「……空が……
今日は……
あったかい……」
イサナは少し離れた場所で、
星灯の飾りを無言で眺めている。
「……境界でも……
今日は……
少し静か」
◆
◆白い飾りの意味
街の中央広場では、
大きな白い樹が飾られていた。
枝には光る星灯。
根元には小さな贈り物。
「……あれは?」
ソーマが聞く。
リュミが説明する。
「星灯樹です。
“空が割れなかった年”を
祝うための象徴なんですよ」
「割れなかった年、って……
毎年言うのか?」
「はい。
割れなかったら、
それだけで奇跡ですから」
ソーマは苦笑した。
(この世界、
基準が重いな……)
◆
◆プレゼント文化
セシリアが不意に言った。
「……で、
“贈り物”は用意した?」
「……え?」
全員がソーマを見る。
「……え?」
ガルムがニヤッと笑う。
「星灯祭はなぁ、
贈り物を渡さねぇと
“来年つまずく”んだとよ」
「完全にクリスマスじゃねぇか……」
ソーマは小さく呟いた。
(やばい。
何も用意してない)
リュミは慌てて首を振る。
「だ、大丈夫です!
形式的なものなので……」
だが――
イサナが、ぽつりと言った。
「……でも……
もらえないと……
ちょっと、寂しい」
ソーマは、
内心で頭を抱えた。
◆
◆即席プレゼント会議
宿舎に戻り、
急ごしらえの会議が始まる。
「俺は肉でいいだろ!」
ガルムが即決。
「論外」
セシリア即却下。
「……私は……
測定具の部品……?」
セシリアは真面目すぎる。
ノアは小さく言う。
「……甘いもの……
また……」
「それ昨日も食っただろ!」
イサナは、
少し困った顔で言った。
「……影に……
形はない……」
リュミは、
静かに微笑んだ。
「……気持ちがあれば、
いいんですよ」
ソーマは、
その言葉に救われた気がした。
◆
◆ソーマの贈り物
夜。
星灯が空に浮かび始め、
街が白い光に包まれる。
ソーマは、
星灯樹の前で立ち止まり、
小さな紙片を結びつけた。
そこには、
短い言葉だけが書かれている。
――
「明日は、
少しだけ穏やかな空になります」
――
リュミが目を丸くした。
「……それ……
予報、ですか?」
「……予報未満、かな」
ガルムが笑う。
「なんだそりゃ!」
セシリアは、
少しだけ表情を緩めた。
「……悪くないわ」
ノアは、
その紙をじっと見つめる。
「……それ……
嬉しい……」
イサナは、
空を見上げて言った。
「……嘘でも……
いい……」
ソーマは、
小さく笑った。
「嘘じゃないよ。
今日は……
空が優しい日だろ?」
◆
◆予報のない夜
その夜、
ソーマの耳奥には
何も聞こえなかった。
だが――
それが、
少しだけ嬉しかった。
(……今日は……
聞こえなくていい)
星灯が空に消え、
人々が笑い、
風が静かに吹く。
世界は、
ほんの一晩だけ、
終わりを忘れた。
◆
リュミが、
そっと言った。
「……メリー……
星灯祭、ですね」
ソーマは、
少し照れながら答える。
「……ああ。
メリー……
星灯祭」




