ルイスを説得せよ!
続きとなります。
お楽しみください。
よろしくお願いします。
東通りに向かってアリスと歩いて行く。
すると石造りの頑丈そうな建物を見つける。
衛兵さんも立っている。
それに人の出入りが特に多い。
不思議そうに見ているとアリスが教えてくれる。
「ヘファさん、ここは『銀行』なのです。お金や大事な物を預ける所なのです。」
ほう、やはりあったか「銀行」、北通りに入ってすぐの所だった。
こんな所にあったのか、今度寄ってみよう。
お腹が膨らんで元気になったアリスは年相応の子供のようになっていた。
このぐらいの子には元気でいてもらいたいね。
良い笑顔だ。
心とお腹を満足させた俺達はさらに進む。
大事な物か・・・。
アリステリア様との唯一の絆のように感じているバッグを手で撫でる。
落ち着くような気分になった。
これからの交渉と言う事で俺も緊張していたのだろう。
「ここから東通りなのですー!」
そんなアリスに、気になっていた事を聞きながら歩いている。
【アリス、真ん中にある高い建物は知っている?】
「あそこは、貴族様の御屋敷なのですー。」
ほー、やはりいるのか『御貴族様』。
アリスも怖がってたし、あまり関わりあいたくはないね。
通りに入った所で改めて見まわしてみた。
東通りは雑貨の露店が多いみたいだ。
結構賑わっている。
「東通りはポーションが売っているのですよー!」
ポーションが売っているのか。
探してる物があると良いなと思いつつ店に目を配る。
すると目的の店らしき所を発見した。
そう、『ポーション』を扱っているお店だ。
アリスを伴って店を見る。
「いらっしゃい、残念ながらポーションは売り切れたよ。」
と、おじさん・・・俺の事じゃないぞ?
が、言ってきた。
店主さんだろうか?
【売り切れですか・・・残念ですね。】
「ヘファさんはポーションが欲しかったのですか?」
【そうなんだよ、売り切れなら仕方が無いね。】
「済まねえな、あんちゃん。開店すると一時間もしないで売り切れちまうんだよ。」
大人気だなポーション。
ルイスちゃんと会う前に実物を見ておきたかったのだ。
【それじゃあ、すり鉢と空き瓶、魔力水はあるかな?】
「ああ、あるぜ。いくつ必要なんだい?」
【すり鉢は五個、瓶はあるだけくれるかな、後は魔力水は少量で良い。】
「あんちゃん錬金術師なのか!?」
【貴方と同じ商人ですよ。】
ゲームと同じなら、この擂鉢と瓶と魔力水と秘薬で作れるはずだ。
店主に聞くとポーションは人気があるのでランクによらず、すぐに売り切れるらしい。
良い事を聞いた
【人気なんですね、でも高かったような気がするんですが?】
「ヘファさん、高いのですか?」
「はっはっは、高いんだぜ、御嬢ちゃん。」
「そうなのですか?」
「まあ、下級ポーションでも十分に売れるんだけどな。」
【高いって、値段はどうなんですか?】
「下級ポーションで銅貨五枚、中級ポーションだと大銅貨一枚、上級ポーションなら大銅貨三枚これが今の相場だな。」
ふむふむ、通常品質の下級ポーションで銅貨五枚か・・・結構良い値段するのね。
【おやじさん、他のランクはどうなのさ?】
「他のランクって・・・ああ、高級品と最高級品の事か?」
【そうそう、このランクはどうなの?】
「どうってなぁ・・・そんな物オークション物だぞ?」
【オークションがあるんですか?】
「ああ、王都で月一度あるらしい。まあ、俺は行った事がねえからな。」
成程、オークションレベルなのか。
もう一つ聞いておくかな。
【そう言えば、おやじさん。『高品質』は扱ってないの?】
店主は少し目を細めた。
「・・・おい、その高品質の事、どこで聞いた?」
【色々な話を聞いているんだ、高品質の噂ぐらいは聞いた事があるさ。】
「成程な、勉強してるじゃねえか、あんちゃん。これは同じ商人だから話すんだからな?「高品質」は大人気ですぐ売り切れるんだよ。それにな・・・。」
【それに?】
「高品質のポーションなんて滅多に出回らないからな、それこそ掘り出しもんだぜ?不純物が無いし即効性の分、値段だってかなりするのさ。」
そう店主が言う。
【即効性?】
店主に聞き返す。
「そうだ、通常品は味もえぐみがあって、吐き出しそうになるぐらいすごく不味いらしい。それと飲んだ後に動いたり攻撃を食らうと回復が途中で止まっちまうらしいんだ。」
【高品質だと、どうなるんでしょうか?】
「あんちゃん、本当に冒険者じゃないんだな?」
【先程も言いましたが、貴方と同じく商人ですよ。】
「そうか、商人仲間なら教えてやる。高品質は水を飲んでいるようで美味い。更に飲むと一瞬で回復する。物にもよるが解毒でも一瞬だと冒険者が言っていたぜ。」
ほほー、それで品薄なんだ。
冒険者が言っていたのなら、このおやじさんの言う事には間違いはないだろう。
かなり良い情報を聞けたな。
俺のゲーム脳が考えた通りだと思うとニヤリと笑う。
「ヘファさんが悪い顔をしているのですー。」
【シテナイデスヨ?アリスオジョウサマ。】
「ふふっ、してたのですー。」
【キノセイデスヨ、アリスオジョウサマ。】
「あははは!」
ある程度ポーションの相場が分かったのは助かるね。
これからの交渉に必要なんだよね。
ルイスちゃんに利益があると信じてもらえればなんだけど。
アリス達の為にもルイスちゃんから多少強引にでも『信用』を得て手伝ってもらわないとね。
【そろそろ行くよ、ありがとう、おやじさん。】
「まいど!今度はポーションのある時に寄ってくれよ!」
ポーション屋を出て東通りを更に進んで行く。
色々と興味を惹かれるお店があるが、今はルイスちゃんとの交渉が最優先だ。
必要な物は手に入ったので今回はスルーだ。
「ヘファさん、顔がおかしいのです。」
【アリスさんや、顔がおかしいって何の事かな?】
「あははは!」
アリス様は御満悦だ。
テクテクという足音の擬音が似合いそうなアリスの後を付いて行く。
このまま真っ直ぐに育ってくれると良いね。
アリスとは、会話をしながら目的地に向かう。
「あそこの串焼きが美味しいのです!」
【アリスさんや、さっき食べたばかりだよ?】
「あそこの露店は日用品が売っているのです。」
【石鹸とかも売っているのかな?】
「分からないのです!」
【そっかー、アリスでも分からないのか。】
色々聞きながらルイスちゃんがいるであろう場所に向かう。
なんか親子で買い物をしている気分だ。
東通りの真ん中辺りに来た、と思ったらアリスが駆け出した。
「『ルイス』ちゃーん。」
おっと「ルイスちゃん」を見つけたようだ。
人混みを避けながら後を追って駆け出す。
お?
あの子かな?
え?
・・・いやあ、びっくりした。
多少すすけてはいるが、俺好みの美人さんだぁ。
冬の東大通り。
人々が足早に行き交う中、一人の少女だけが立ち止まることなく声を張り上げていた。
「新鮮な果物ですよ。そこの旦那様、子供様への御土産にいかがですか?」
誰にも見向きされなくても。
手がかじかんでも。
その少女は笑顔を作り続けていた。
・・・それが、俺とルイスの出会いだった。
髪の毛は茶色、手入れはされていないようだが、その髪を腰元辺りまで伸ばしている。
茶色い瞳は切れ長の目で、見た感じ眼鏡の似合いそうな学校の委員長タイプの美人さんだ。
年のころは十六~七歳の女性に変わりつつある年齢の女の子だった。
その瞳には意思が宿っており、必ず売ってやるとの言う明確な気持ちが見えた。
それに・・・焦っているのか?
必死に声を上げているが、残念ながら売れているようには見えない。
アリスを追いかけながら、ルイスちゃんを観察してみる。
身長は160cm程かな?
街の人に呼び掛けているその声も、とても魅力的だ。
ただ、その目から光は失われていない。
その顔は自分の事よりも妹達の事を考えて、そんな事を優先しているように見える。
行くところに行けば綺麗な女性に化けるだろうが、そんな余裕はなさそうだ。
ボロを纏っているがそれよりも意志の強さがうかがえる目が印象的であった。
今は厳しいかもしれないけれど、いつか彼女の心からの笑顔を見てみたいな。
「そこの奥様、美味しい果物はいかがですか?」
「ルイスちゃーん!」
【アリスさんや、落ち着こうか。】
ん?
よく見ると目の下にクマがあるな。
美人さんなのにもったいない。
・・・働きすぎなんだろうな。
堅物そうだけどしっかり者に違いない。
そんな事を考えていると、ルイスちゃんがアリスに気付く。
「アリス!?どうしたの?何かあったの?」
心配そうにアリスに駆け寄る。
怪我が無いかペタペタと体を触って確かめているようだ。
うん、良い姉っぷりだね。
微笑ましい。
ホッコリするよ。
ルイスちゃんも果物、見た感じは洋ナシっぽい物を売っているみたいだ。
籠の中を見ると、どうやら売れ行きはあまり良く無いらしい。
アリスがルイスちゃんに言う。
「ルイスちゃん、えっとですね・・・お仕事の話をしたいっていう人を連れて来たのです。」
アリスからの言葉を聞いたとたん、ルイスちゃんの目つきが険しくなったような気がした。
「またなの?アリス。貴女そう言う話で何度痛い目にあったか・・・覚えてるわよね?」
「ヘ、ヘファさんは大丈夫なのです!」
アリスに追いついた俺をルイスちゃんが「ッキ」っと睨む。
うわ、目つきが怖い。
美人さんが凄むのは迫力があるな。
いや、美人だからか?
ん?
体が青く光るぞ?
なんだろう?
誰かに何かされているみたいだ。
ああ、ルイスちゃんかな?
「え、そんな!?」
光が散ってしまった。
エフェクトが違ったのは失敗したからか?
まあいい。
何はともあれ挨拶だ。
【こんにちは、初めまして。私はヘファイストスと申す者です。長いのでヘファと呼んで下さい。貴女がルイスさんですか?】
当たり障りのない挨拶をする。
返答を待っているとしばらく俺を観察していたルイスちゃんが言って来る。
「そうですが、お仕事の話は間に合っていますので、申し訳ございませんが、お引き取りください。」
目の前でピシャっとシャッターを閉められたようなお断りだと!?
だが、まだだ!
この程度で俺は諦めないぜ?
【ルイスさん、まずはお話だけでも聞いて頂けませんか?】
そう言うと胸の下で腕を組んでこう言われた。
「貴方様には貧しい子供達を体よく使おうっていう魂胆がおありでしょうが、私がいる限りさせませんよ?」
ん?
何の事だ?
話すら聞いてもらえなさそうだぞ?
それに胸の前で腕を組むのは防衛本能だとかなんとか前世の本で読んだ事があるな。
「そう言う訳で、お仕事の話はお断りしているんです!お引き取りを!」
あー、成程。
こういう美味しい話にかこつけて利用されて来てるのかな?
先程の「痛い目」と言う会話でなんとなく分かった。
右往左往しているアリスが声を上げる。
「ルイスちゃん、お話だけでも聞いてあげてほしいのです。」
「っぐ・・・ア、アリスの頼みでもだ、駄目だったら駄目なんですからね!」
ルイスちゃんが揺れた!
微かだが、心が揺れたぞ!
良いぞ、アリス!
「お願い、ルイスちゃん。」
アリスがウルウルした目でルイスを見上げる。
もう一押しかな?
【ルイスさん、話だけでも聞いて頂けませんか?】
「っく・・・ア、アリスがそんなに言うなら・・・話を聞くだけですからね?良いですか!?」
プイっと横を向きながら言う。
アリスの事になるとチョロイなぁ。
心配だと心の中で苦笑いをする。
おっと、顔に出ないようにね!
【結構ですよ。】
だけど良かった。
話を聞いてもらえるようだ。
何だかんだ言ってアリスには甘いのだろう。
良かったと思ってアリスの方に視線を向けると、ルイスちゃんに見えない位置で舌を出していた。
テヘペロ泣き落としとは・・・アリス、恐るべし!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
立ち話だとアレなので、三人で近くの喫茶店らしき所に入る。
店員のお姉さんに周りに人のいない席をお願いして奥のテーブル席に着く。
でも、この店に人がいない。
昼過ぎだからなのかお客さんが他にいない。
もっと賑わっていそうな物だが何でだろうか?
「メニューになりまーす。」
出されたメニューを見る。
メニューにある青紅茶というものが目に留まった。
これにしよう。
【青紅茶を三人分お願いします。】
そう、お姉さんに言う。
するとルイスちゃんから厳しいお言葉が・・・。
「施しを受ける理由がないので御断り致します。」
っく、手厳しいなルイスちゃん。
【貴重な時間を頂いているのですからこれぐらいは御馳走させてください。】
俺が言うとアリスがフォローしてくれる。
「アリスはー、とっても喉が渇いたのですー。」
【ルイスさんも喉が渇いていらっしゃるでしょう?是非、御一緒に。】
「ルイスちゃん、喉が渇いたのですー!」
ナイスだアリスと心の中で「グッ!」と親指を立てる。
「そ、そこまでおっしゃるなら・・・。」
渋々だが受け入れてくれたようだ。
注文を取ったお姉さんが厨房の方へ消えて行った。
さてと・・・話を、と思っていたらルイスちゃんが謝って来た。
「まずは、無断で鑑定スキルを使ってしまった事をお詫び致します。申し訳ありませんでした。」
ん?
先制パンチが来た。
他人に無断で鑑定スキルを使うのはまずいのかな?
俺も気を付けよう。
あれ?
じゃあ降り立った時とさっき青くなったのはスキルを使われていたからか?
降り立った時は誰に使われていたんだろうか?
・・・これも要注意だね。
【いえ、気にしておりませんよ。】
と、俺は笑顔で言う。
「謝罪を受け入れて頂き、ありがとうございます。」
ルイスちゃんが頭を下げる。
頭を上げると表情が険しくなり言って来る。
「それで、どんな美味しいお話で「ヘファイストス様」は私達を利用しようとされているんですか?」
落ち着くなりきつい言葉のボディブローが的確にリバーに突き刺さる。
心の声で『ぐほっ』とか言っちゃったぞ?
だがなんとか堪える事が出来た。
俺はその程度ではダウンしないぜ?
心の中でファイティングポーズを取り直す。
ルイスちゃん良いパンチだったぜ。
さてと、俺のターンだな。
【まずはこれを見てもらおうかと思いまして。】
バックから擂鉢とポーション用の瓶と秘薬を取り出す。
「擂鉢と秘薬?錬金術ですよね?珍しくは無いですね。低級のポーションでしたら早い時間ならその辺りの露店でも売っていますよ?」
【えっとルイスさん、貴女は「鑑定スキル」を使えますね?】
これはルイスちゃんに会った時に俺に対してスキルを使われていたから分かっていた。
先程も謝っていたしね。
どうやら俺は、スキルを使われると体が薄く青色に光っている様に見えるみたいだ。
エフェクトが見えるのは、俺だけかもしれないが。
ああ、確認したい事が増えて行くなぁ。
ルイスちゃんの顔を見ると話を戻す。
「ええ、持っています。未熟なもので「ヘファイストス様」のステータスは確認できませんでしたけれどもね。」
いちいち棘のある言い方だがまあ良い。
まだ彼女の警戒心が解けてないことの表れだからね。
俺はその警戒心の壁を壊すか乗り越えないといけないんだ。
気合を入れて話をしよう。
【失礼ですが、ルイスさんの鑑定のスキル値はどれぐらいですか?】
「スキル値・・・ですか?」
【ええ、自分のスキル値の事ですよ?】
この世界では鑑定を成功させないとそのアイテムなんかの性能が分からないらしいからね。
「ああ、自分のスキル値ですね。ええと、六十四程ですよ。」
【ふむ。なら、ポーションの鑑定は出来ますでしょうか?】
違う方向からアプローチしてみる。
ルイスちゃんは何を言ってるんだこの人?
みたいな顔をしている。
「先程から何を言っているのですか?」
【ポーションの鑑定ですよ。出来るのですか?出来ないのですか?】
少し強めに聞いてみる。
ルイスちゃんは身構えてしまった。
だがこれで良い。
ここからは俺次第だ。
「露店で売っている物ぐらいなら出来ます!出来るに決まっています!」
と、そう言う。
挑発は上手くいったようだ。
【よろしい、ならば見ていて下さい。】
「何をなさるつもりですか?」
ルイスちゃんの警戒心が一段階上がった気がする。
【はい、まずは実践しようかなって思いましてね。】
「実践・・・ですか?」
【ええ、見てもらってからの方が御話に納得が行くかと思いまして。】
「ふん!設備の無い所で錬金ですか、出来る訳ないじゃないですか!」
と、言ってルイスちゃんはそっぽを向く。
アリスは何が始まるんだろうとワクワクして俺を見ている。
錬金の設備?
ゲームではこれで出来たんだがな。
・・・選択をミスったか?
「低級のポーション等は珍しくもないのに・・・それでポーションの鑑定話等を持って来て、私達に秘薬を安値で集めさせようという魂胆ですか?」
ゴフッ、手厳しいな。
だが中身はアラフォーのおっさんだ耐久力はそれなりにある。
これぐらいで挫けるような人生・・・多分、生きてないよな?
あまり自信はない。
【ま、まあ、見ていて下さい。】
「何をなさろうが無駄ですよ。」
【では、始めますね。】
俺は目を瞑つむり、スキルの一覧から錬金術のスキルを選ぶ。
もちろん選択したのは高品質、最高級の回復ポーションだ。
何故かだって?
まずは鑑定出来ない物を見せる事が必要だからだ。
鑑定結果を見てこの子なら恐らく俺の意図に気付くだろうからね、
バッグから材料を取り出すと、瓶を持ちスキルを発動する。
秘薬を擂鉢に入れて魔力水を流し込む。
そして秘薬をすりつぶして行く。
ゴリゴリゴリ・・・
マジで頼むぜ、『アリステリア』様!
スキルが発動し淡い黄金色の光が掌を包む。
手の中に何かが現れる感じがする。
瓶の中に液体が湧き出る。
そう、ポーションだ。
「え!?」
驚いたルイスちゃんの声が上がる。
そう、俺は『回復ポーションの高品質の最高級ポーション』を作って見せたのだ。
なんか金色でポーションがキラキラしてるけど大丈夫だよね?
「魔力壺も無しにポーションが作れるのですか!?・・・け、けれどその低級ポーション等そこいらの露店でも売っていますよ?」
そう、設備も無しにポーションを作って見せたのだ。
「こ、これがポーションですか?」
「出来たのですかー?」
「だ、大道芸ですね。」
と、ボソッと聞こえた。
だがその顔はとても驚いていた。
もうちょっとなんだけれどなと思いルイスちゃんを見る。
あからさまに厳し気な顔をしているルイスちゃん。
そしてワクワクしてこっちを見ているアリス。
出来上がったばかりのポーションをルイスちゃんの方へ差し出す。
「・・・露店のポーションとは違うのですね、こんなにキラキラしているポーションは初めて見ました。」
【ルイスさん、鑑定をして頂けますか?】
ルイスちゃんが瓶を手に取る。
「か、鑑定。」
青いエフェクトがポーションの瓶を包むのだが、エフェクトが散った。
狙い通りかな。
するとルイスちゃんが驚いている。
「そ、そんな!鑑定出来ない、と言う事は中級ポーションよりもその上のランク・・・!?上級ポーションでも大銅貨三枚ぐらいの価値があるし、この街では三人しか作れないって噂で・・・。」
お!
鑑定が出来ないから上級ポーションと判断したみたいだ。
だがそこまでの鑑定しかできないのは、彼女の鑑定は少なくとも中級ポーションまでは鑑定できると言うところか。
これで俺がポーションを作れるのだと言う事をルイスちゃんに示せた訳だ。
「青紅茶です。お待たせしました。」
三人の前に湯気の立つカップが置かれる。
アリスが足をブラブラさせて暇そうだったので何か追加をするか。
時計を見ると十四時五十分、そろそろ十五時だしね。
三時と言えばおやつですよね?
甘い物にしよう。
「えっと、追加良いですか?この『蜜菓子』を二個追加でお願いしますね?」
「かしこまりました。」
そう言うとお姉さんは下がって行った。
「蜜菓子なのです?」
【甘くて美味しいからね。食べてみてね。】
「甘いのです!?」
【うん、もうちょっと待っていようね。】
「はいなのです!」
ルイスちゃんとアリスもカップを口に運ぶ。
「青紅茶・・・懐かしいですね。」
「懐かしいのです?」
「ふふっ、アリスは気にしないで飲んでいいのよ。」
「はいなのです!」
俺が作ったのは「上級ポーション」ではない「高品質」の「最高級ポーション」だ。
鑑定を失敗する事で上級以上のポーションが作れると言う事を知ってもらいたかった。
そしてその目論見は成功した
俺は目の前でポーション作りに必要とされる錬金窯無しで作って見せたのだ。
青紅茶を一口飲んだところで、俺は話を続けた。
【お分かり頂けましたか?俺は五ランクある高品質のポーションを作れるのです。】
「あ、貴方は錬金釜無しで、ポ、ポーションを作れるんですか!?」
【ええ、貴女が今見た通りです。】
「し、信じられない・・・一流の錬金術師でも錬金釜が無いと作れないのに・・・。」
【いかがですか?】
「そ、それに、果物を売っていると、たまに錬金師さんや商人さんが話しているのを耳にするんです。高品質は特別だって・・・。」
【ちなみにそれは「高品質」の「最高級ポーション」ですからね。】
「え!?う・・・嘘!?ま、待ってください!高品質の上級品ですら、この街で三人しか作れないんですよ!?」
【そうみたいですね。】
「それを・・・それを飛び越えて最高級ですって!?そんな物、王都でも滅多に存在しないはずです!」
最高級ポーションと聞いてルイスちゃんの顔が青くなっている。
「それに、高品質の最高級ポーションと言う事は、体の欠損部分も治ると噂されている伝説のポーションですよ!?」
【そうなの?】
「え?」
【俺は作れるだけだから詳しくないんだ。】
「そ、そんな事が?」
完璧な鑑定が出来なくて悔しいのか疑いの目でこちらを見ている。
ルイスちゃんはある程度ポーションの事は勉強しているんだなと感心する。
「それに高品質なんて・・・。」
【高品質が何か?】
「市場の商人さん達が『高品質なんて王都でも滅多に出回らない』って話していました。」
成程、高品質の事は噂でしか知らないのか、なら自身で確かめてもらうのが一番良さそうだな。
もしギルドで調べても、ギルドの鑑定員ならば少なくとも最高級だと分かるだろう。
・・・分かるよね?
【お疑いになるのならば、俺の信仰している創造神『アリステリア』様に誓っても良いですよ?それでも疑うのならギルドで鑑定を受けても良いです。】
「神に誓って頂けるのですか!?」
【もちろんです、俺は貴方に信用してもらうのならそのぐらい致しますよ?】
「こ、高品質でしかも最高級ポーションなんていくらなんでも・・・。」
そりゃー驚くだろう。
けれども値段や相場なんて分かりませんね。
通常は売ってないだろうし、最高級品の相場なんていくらになるなんか想像がつかないしね。
さっきのお店だと下級ポーションしか扱っていなかったようだし・・・売り切れだったけど。
「手品ではないんですね?」
【協力して頂こうと思っている人を、神の名を出してまで騙す必要が何処にありますか?】
「・・・。」
通常品質の下級ポーションがあの相場なら高品質の最高級ポーションは一体いくらになるのかな?
ただ、冷たい汗が背中を流れる。
俺もぶっちゃけポーションが出来るかどうかは賭けだったからね。
スキル様のおかげだ。
『アリステリア』様、ありがとう。
目を閉じて祈る。
ふと、『アリステリア』様の微笑んでいる顔が見えたような気がした。
話を続ける。
「あ・・・あの回復ポーションで高品質の中級品を作って頂けませんか?」
【ええ、構いませんよ?】
成程、ルイスちゃん頭が良いな。
ルイスちゃんはあくまでも自分の目で調べたいのだろう。
この子、いいね。
あくまでも自分の目で見た物しか信用しない。
商人向きの性格をしている。
後は・・・俺次第だな。
消費されてしまった秘薬と瓶をバッグから出し集中する。
バッグから出さなくても良いのだがこうした方が分かりやすいだろう。
先程と同じ手順を踏む。
違うのはポーションのランクだけ。
先程とは違い今度は黄色の光が・・・。
出来上がったポーションをルイスちゃんに渡す。
「失礼しますね・・・鑑定。」
ルイスちゃんのスキル値なら十分に鑑定できるだろう。
「凄いわ・・・高品質の中級ポーション。それに高品質なら水のように美味しいって冒険者さん達が買い求める物・・・これでも大銅貨二枚以上で売れるわ!」
「大銅貨二枚も貰えるのですか?」
「え、ええ、そうね、アリス。」
うん、どうやら分かってくれたようだ。
【ルイスさん、今から作るポーションを良かったら飲んで頂けますか?】
「え?・・・何故ですか?」
せっかくの美人さんの目の下にクマがあるからね。
【その様子だと本調子ではありませんね?調子が悪くてはこれからの仕事に支障がでますし、確認の為にも、是非飲んでみて下さい。】
そう言って飲むように勧める。
「そう見えますか・・・分かりました、頂きます。」
中級ポーションの件と神への誓の事で大分素直になってくれている。
必要な秘薬を取り出し、先程と同じ工程で、今度は中級の高品質スタミナポーションを作る。
赤いポーションが出来上がった。
【鑑定してからで結構です、飲んでみて下さい。】
「分かりました。鑑定・・・こ、高品質・・・。」
結果が分かったのだろう。
「・・・では、遠慮なく頂きますね。」
ルイスちゃんはそう言うと蓋を開けて、『くいっ』と飲み干す。
すぐに効果が出て、目の下のクマが一瞬で消えた。
「体が・・・一瞬で体のだるさが消えました。高品質、噂通り凄い効き目ですね。」
驚いている所を確認出来たので話を続けるかな。
【それで、相談と言うのはこれらの商品を売る人と秘薬等を集める人を探しておりまして、それを仕事としてもらえるなら月に一度ですが「給料」を支払おうと思っております。悪い話では無いと思いますが、いかがでしょうか?】
「きゅ、給金が貰えるのですか?」
【左様です、給金が貰えます。】
この世界だと「給料」じゃなく「給金」なのか。
ルイスちゃんが考えを纏めているようだ。
纏まると質問して来る。
「あの・・・もしですが・・・それが未成年でも頂けますか?」
【ええ、未成年でも支払われます。】
「ほ、本当ですか!?」
【ちなみに売り物はポーションだけじゃないですよ?武器や防具も作れるのでそれも売っていくつもりです。まあ、最初は露店だから思い通りにならないでしょうが。けれども今の貴女達の状況よりは安定して稼げるのではないでしょうか?】
チャンスと思い畳かける。
【そして、しばらくは宿屋で暮らせますし、将来の話ですが店舗を持つ事になれば住む場所は無料で開放出来ます。決して悪い話では無いと思いますが、いかがでしょうか?】
ルイスちゃんは、俺の話を黙って聞いている。
【最終的には、その店舗の店員や経営者等になってもらえれば良いかなと思っているのですよ。】
プレゼン能力の稚拙な俺の言葉はルイスちゃんに届いたのだろうか?
黙って話を聞いていたルイスちゃんが質問をして来た。
「一つ、よろしいですか?」
【はい、どうぞ?】
真面目な顔をして俺を見る。
「初対面でそこまで良くされる謂れがありませんが、私達を、その・・・憐れんでいるのですか?」
そう、彼女からすれば当然の疑問だろう。
でもね、俺はそれだけではないんだよ。
アリスを見つめる。
・・・そう、俺は自分勝手な人間なのだ。
「蜜菓子を二つ、お待たせしましたー。」
「来たのです!」
「アリス、ちょっと待ちなさい。今は大事な所なの。」
「はいなのです・・・。」
【謂れと言われても・・・ちょっとした、本当にちょっとした事なんですよ。】
そうそれはこの世界に来てからの事なんだ。
【ここからは「素」で話をさせて頂きますね。】
と、断ってから話始める。
【さっきね、アリスと昼御飯を食べたんだ。】
「ええ、そ、それはありがとうございます。」
ルイスちゃんが支払いの事を察したようにお礼を言ってくる。
【それがさー、ただのオススメ料理だったんだけどね。】
「は、はい。」
【とっても美味しかったんだよねー。】
アリスを見てニッコリと微笑みかける。
「美味しかったのですー!」
ルイスちゃんの顔が訳が分からないという感じの顔になる。
【そう、懐かしい人達と食べてるみたいで・・・とても美味しかったんだ。】
「???」
【暖かいというかね、久しぶりに幸せな気分になったんだよね。『家族』を感じた、そのお礼じゃ駄目かな?】
そう言うとアリスの頭を撫でる。
アリスが嬉しそうに微笑んでいる。
そう、俺の本当に目指している事は・・・。
遠い目をしてアリスとの食事を思い出しているとルイスちゃんが話してくる。
「・・・正直に言って美味しすぎるお話ですし、怪しんでます。ですが、貴方の今の顔を見て「家族を感じた。」という事が良く分かりました。」
俺に撫でられているアリスを見てルイスちゃんが微笑んでいる。
前向きになってもらえたのかな?
ルイスちゃんの決断はどうだろうか?
しかし俺そんな変な顔をしていたのか?
気を付けよう。
「アタシ達が頑張って稼いでも月に銅貨二十枚を稼ぐのが良い所でしょう。これでは育ち盛りのこの子達にお腹いっぱい食べさせて上げられない。・・・悔しいです、自分の無力さが。」
ルイスちゃんが俯く。
涙が一雫、落ちる。
テーブルの上で握った拳が強く握りすぎて白くなっている。
【それで返事はどうかな?なるべくなら受け入れてほしいんだけど。】
ルイスちゃんが真顔になる。
しばらく考えてから話しかけて来る。
「私達は五人います。」
【知ってる、アリスから聞いた。】
「アナタは、私も含めその全員の面倒を見れるとおっしゃるんですか?」
【うん、そのつもりだよ。】
思案顔になる。
どうだろうか?
受け入れてくれると嬉しいんだが。
ルイスちゃんはやがて呆れたような顔になって言って来た。
「分かりました。半々ですが受け入れましょう。確かに今のままでは三の月まで持つかどうか・・・。」
おお、説得出来たか?
良かった。
俺も緊張していたのか掌に汗をかいていた。
プレゼン・・・成功したのかな?
【それでは、これからよろしくね。】
「ええ、こちらこそ。」
服に手をこすりつけるとルイスちゃんに差し出す。
何をするか気づいたルイスちゃんはそっぽを向いて言う。
「馴れ合いは致しません!それにアナタのようなお人好しには目付け役がいないと心配です。なのでお話を受けさせて頂きます!」
ルイスちゃんが仕方なくといった顔で横を向きながらそう答えた。
頬が赤いので照れ隠しだろうか?
【それでは、せっかくなので食べて下さいね。後は宿を決めないといけないんだよね。】
「それなら、北通りに良い宿がありますので、そこでお願いします。」
【貴女の勧めなら喜んで。】
「・・・ありがとうございます。」
こんな人は初めてだった。
利用するためではなく、見返りを求めるでもなく。
私達の未来を、本気で考えてくれている人だった。
・・・この人なら、一度だけ信じてみてもいいのかもしれない。
【では、商談成立と言う事で、ルイスさん、アリス、蜜菓子を食べてください。ささやかですが、これは祝いです。】
「アリス、折角だからいただきましょう。」
「はいなのです!」
そうして安心したのかルイスさんは目の前の蜜菓子を食べ始めた。
うん、なんとかなったのかな?
「アリス、お行儀が悪いですよ!?」
「だって甘くて美味しいんだもんー!」
「ああ!もう!こんなにこぼしてしまって!」
そうそう、こんな感じな物を守れればいいやってね。
苦労性なのは三女のポジションだっけか?
とか、微笑ましく思いニヤニヤして二人の様子を見ている。
アリスとルイスちゃんの実の姉妹にも負けないようなやり取りが微笑ましい。
昼下がりの店内は、冬空の寒さにも負けないように暖かかった。
本日の投稿分はここまでとなります。
お付き合いありがとうございます。
不定期になるかもしれませんが投稿していきますので今後ともよろしくお願いいたします。
それでは次回「商業ギルドの登録と買取注意」(仮 でお会いしましょう。




