ルリアとの再会
【部隊長に合わせてくれないかな?】
「何だ、貴様は!」
「部隊長は忙しいお方だ、お前のような奴にお会いになるはずは無かろう!」
「まぁ、我らも忙しいのだ。だが・・・心持次第では会わせる事も出来るが?」
堂々と賄賂の請求か・・・こんな奴らでも狼牙騎士団だろうに・・・あの人達ならば絶対に許さないだろうけどな。
【では、これを見ていただけますか?】
「ふん、何を見せられようが・・・!?」
「どうした?」
「こっこっこ・・・。」
「何を鶏みたいなことを・・・。」
「お、お前も見てみろ!」
「そんな物を見たってなぁ。こっこっこ・・・紅玉殿!?」
【もう一度言おう。部隊長に会わせてくれないかな?】
「は、はっは~・・・。」
「すぐに許可を取ってまいります!」
【それと・・・。】
「な、何でございましょうか?」
【賄賂を要求した事を、シェラハザード千人将と副官のアダムスさんに報告するからね?】
「ぐ、ぐうう・・・。」
「そ、それは、ですな・・・アレで、ですな・・・。」
【さっさと動け、俺はお前達程暇ではない。】
「「ハハッ!」」
そう言うと片方が奥へ飛び出して行った。
【部隊長の名前は何と言うのですか?】
ビクビクしているもう片方に聞く。
「コ、コニー百人将であります!」
【コニー・・・コニー・ランバートさんですか?】
「へ、お、お知り合いで?」
【知り合いも何も、一緒に竜種と戦った仲間の一人ですよ。】
「・・・。」
知り合いだと言うと完全に沈黙した。
まあ、賄賂まで取ろうとしたのだからね。
大いに反省したまえ。
と、飛び出した人が戻ってきた。
コニーさんを連れて。
「これは紅玉様、先日は大変お世話になりました。それで、何かございましたか?」
【今連れて行かれております「ルリア」さんは犯人ではありません。その証拠に家主の死んでいた部屋の天井に、犯人の剣が刺さっているはずです。】
「なんと!?では、ヘファイストス殿が族を撃退されたのですね?バーミントン、女性の拘束を外せ、犯人は別にいるぞ!」
「っは!即時軟禁を解きます!」
【暗殺者は悪魔族の手練れです。もうこの街、探索範囲にはいないかと思います。】
「左様でございましたか、情報をありがとうございます。」
【詳しくは後程話します。それで、この二人ですが・・・。】
「何かございましたか、紅玉様?」
【いやあ、遠回しに賄賂を請求されましたよ。】
「何ですって!?お前達、何と言う事を!」
「いや、そのですな・・・。」
「申し訳ありません!」
「許す訳にはいかん、しかも相手が紅玉殿だと・・・恥を知れ!」
バキッ!
「ぐふっ!」
ドガッ!
「っぐ!」
「この二人を独房に入れておけ、紅玉殿、申し訳ありません。私が甘かったせいです。こたびの事は隊長と相談して軍機違反として処罰いたします、今のところはこれで・・・。」
【コニーさん、ありがとうございます。所で、その女性と会いたいのですがよろしいですか?】
「他ならぬ紅玉殿の頼みです、すぐに御案内致しましょう。」
【では、お願いします。】
「こちらです、ついて来られよ。」
【今回の死亡者は、どう言った件で狙われていらっしゃったのですか?】
「それが、現場に戦った痕跡があると言う事で調べていたのですが、有力な手掛かりが見つからなかったのですよ。」
【かなり優秀そうな暗殺者でしたからね・・・と言う事は、現場の判断ですか?】
「重要参考人として一時的に来てもらったのですが、名前以外喋ってくれず、犯人の可能性ありとの報告が上がって来まして、捕縛されたのです。」
【証拠がありませんが、捕縛なされたのですか?】
「現状の重要参考人です。何かを知っていると言う事での捕縛、軟禁でした。」
【でしたら、俺も協力できますよ。犯人を見たのは俺と殺された屋敷のオーナー、その相手の娼婦だけですからね。】
「助かります、紅玉殿。現場の人間も手がかりが無くて焦っていたようですので、っと、こちらです。」
見張りの兵隊二人が敬礼をするとコニーさんが話をしてくれる。
「紅玉殿、女性の保護者などはいらっしゃいますか?」
【殺害された人物が雇っていた娼婦の方が保護者です。場合によっては俺が引き取ります。】
「かしこまりました、デネブ。女性を連れて来てくれるか?」
「了解です、コニー様。」
コニーさんがそう言うと、デネブと呼ばれたもう片方の団員が走り出す。
さてと、やっと御話する事が出来ますね。
部屋の前に見張りの兵士がいた。
コニーさんが何か喋ると二人は肯き扉の鍵を開ける。
扉を開けてもらうと俺とコニーさんは室内に入る。
部屋は簡素な造りだった。
応接間かな?
テーブルが置いてありその両側に二人掛けのソファーが置いてあるだけだった。
そのソファーにポツンと腰を掛けている女の子が一人。
部屋に人が入って来ると立ち上がりこちらを見ている。
俺はその女性を見付ける。
・・・本当にティア達と同じ顔をしている。
【失礼しますね、こんばんは、ルリアさん。先日はどうも。】
【あ、昨日の赤い人!】
【失礼、名乗っておりませんでしたね。俺の名はヘファイストス、以後よろしくお願い致します。】
【ル、ルリアと言います。あの、えっと・・・ど、どうぞ、お掛けください。】
何か緊張しているのかな?
いや、させているのかな?
【それでは、失礼させて頂きますね。】
彼女の対面の席に着くと、コニーさんが俺の隣へ座る。
ルリアさんも同じように対面の席へ座ったので早速話始める。
【貴女の保護者の女性は今連れて来てもらっております、怪我などはされておりませんので御安心を。】
【ジーナに何があったのですか?】
話は聞かされてないのかな?
【ジーナさんは事件に巻き込まれました。その為に現在は取り調べ中です。】
【ジーナは無事なんですね?】
【ええ、元気ですよ。それで、貴女にかけられた嫌疑も俺が証言をしましたので解かれる事でしょう。】
【ありがとうございます。あのー・・・私の顔が何か?先程から見られているようですが・・・。】
いやぁ、ティアやアセディアと瓜二つだわ。
この子が七大悪魔の一人で間違いないだろう。
ただ・・・俺が感じている力が弱い?
ティアやアセディアは力を隠すような事は無かった。
しかし、この子は・・・。
【ルリアさん、少々お話をさせていただいても?】
【こちらも是非に!!!】
なんかすごい勢いで食いついて来た。
【ルリアさんは記憶喪失だと聞いておりますが、間違いはございませんか?】
【はい、間違い御座いません。ジーナと会う前の記憶がありません。】
宿の女将が、ルリアさんは記憶喪失だとも言っていた。
話は繋がって来たね。
【それでは、可能性の御話をしましょう。ルリア、いえ、「ルクスリア」さん。】
【・・・え?ジーナにしか話して無い名前の事を、何で知っているんですか?】
【突然で申し訳ありませんが、貴女は七大悪魔と呼ばれるうちの一人、「色欲のアズモデス」、本人の可能性があります。】
【え?】
【驚かれるのも無理はありません、こうやって話している俺でさえ貴女を見るまでは半信半疑でした。】
【・・・な、なんでそんな事をおっしゃるのですか?】
【最後まで言わせて頂けますか?】
【ど、どうぞ。】
【貴女は俺の知り合い達とそっくりなのですよ。】
【そっくりですか?】
【そう、そっくりです。アバリティア、アセディア、レヴィアタン・・・貴方の魂が、その名を覚えてはいませんか?】
【魂ですか?いえ・・・分かりません。】
【そう言えば記憶喪失でいらっしゃいましたね、失礼。】
覚えていたらなと名前を上げてみたのだが・・・。
【そうです、その失われた記憶に今言った三人の名前が関わっているのでしょうか?】
【・・・ここからは貴女の選択にさせていただきましょう。】
【私の・・・選択ですか?】
【先に申し上げます・・・知る事によっては・・・このままの方が幸せかもしれませんよ?】
そう言うと、ルリアさんは意を決した表情を浮かべ
【構いません、それで私が何者なのかが分かるのでしたら・・・。】
彼女はそう言って真剣な目を俺に見せた。
【では、貴女の大切な人が、ここに到着しましたらお話をしましょう。】
【はい、ジーナにも聞いて頂きたいので、それでお願いします。】
【では、到着を待ちましょうか。】
【はい。】
「落ち着けるように飲み物でもお持ちいたしましょう。デネブ、紅茶で良い四人分を頼む。」
「はい、コニー様。」
しばらくすると紅茶が届き、皆で飲むとルリアさんの緊張がほどけて来たようだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ルリア、無事かい!?」
【ジーナ、ここよ!】
「ルリア!」
二人は互いを確かめ合う様に抱き合う。
【もう、心配かけて・・・。】
「不可抗力だって・・・で、どうするんだい?」
【ヘファイストス様、貴方様がジーナを助けてくださったんですか?】
「そうだよ、ルリア。か……恰好良かったんだぜ。」
【ふふっ、ジーナが男の人をかっこいいって言うのは珍しい事なんですよ?】
「そうだ、それよりルリア、アンタも気を付けな。」
【いきなりどうしたの?】
【ジーナさんは……名前は分かりませんが暗殺者に狙われています。】
【何かあったの、ジーナ?】
「それが……この屋敷の主人のキースの野郎がそいつに殺された。アタシは現場を見たって殺されそうになったんだ。」
【無事でよかった、ジーナ。で、どうするの?】
「そいつはまだアタシの事を狙っているはずだ。で、こちらのアーサーさん、いや、ヘファイストスさんがジン殿と知り合いらしいので紹介してもらう。」
【それは危険だけど……そのジンと言う方はどういう人なの?】
「この街の一番上の人だ。運が良ければ、事件の終了までそこで匿ってもらえる。」
【ね、ねえ、ジーナ?】
『囁いて来て……何かあるのかい?』
【ヘ、ヘファイストス様もついてきてくれるのよね?】
『護衛でついて来てくれるってさ。ふふ、好機だぞ、ルリア。』
【もう!さっさと移動しましょう?】
「ヘファイストスさん、頼めるかい?」
【もちろんですよ、麗しきお嬢様方。そこまでの護衛は致しましょう。】
「あ、ルリア、商売道具を部屋に忘れて来た。取って来る。」
【一人で大丈夫なの?】
『少し時間を作るから、ヘファイストス様と話しておきな。』
【もう、ジーナったら!】
『あの人が気になるんだろう?ならしっかりと話をしておきな・・・頑張れよ、ルリア。』
【うん、頑張ってみる。】
『顔が真っ赤だぞ?ルリア。後悔しないように、ちゃんと話しておきな。』
【ジーナ!】
『ははは、じゃあ行くよ。』
そう言うとジーナは出て行ってしまった。
「デネブ、済まないがついて行ってくれ。」
「かしこまりました、コニー様。」
【少しお待ちください、探知。】
探知には赤い光がついていないので屋敷内は大丈夫だろう。
ジーナさんは商売の道具とやらを取りにさっきの部屋へ戻ったようだ。
コニーさんに言われてデネブさんがついて行った。
部屋に残っているのはコニーさんとルリアさんと俺だけ。
するとルリアさんが話しかけてきた。
【ヘファイストス様、ジーナの、こ、事……ありがとうございました。】
【美しい女性を助けるのは当然です。それに・・・さっきの事はジン殿の屋敷に行ってから話しましょうか。】
【は、はい。】
この人が七大悪魔だと言うのは本当の事かもしれないが、まだ確定ではない。
【あ、あの、アーサー様?】
【何かありましたか?】
【い、いえ、少しお話をしたいなと思いまして……。】
【構いませんよ?】
【どうして、ここにいらっしゃったんですか?】
【さっき言った通りですよ、貴方の事が気になったんです。】
【気にしてくださったんですか?】
【はい。気になる事が出来たので、貴女を探していました。】
【探して・・・くれてたんですか?】
【ええ、どうしても気になってしまって・・・女性にかける言葉ではありませんね失礼致しました。】
【そ、そんな事はありません・・・探してくれてたんだ・・・。】
嬉しくてそんな事を考えてしまう。
素直に嬉しいと言えたらどうだろうか?
それでも・・・私は・・・。
【何かおっしゃいましたか?】
【いえ・・・お気になさらずに。】
【話を続けますね。実は、貴女に危険が迫っているかもしれません。】
【な、何故ですか?】
【先程の館の主を殺した暗殺者ですが、かなりの手練れです。そいつが・・・もしかしたら貴女と関係があるのかもしれません。】
【私とですか?】
【はい、それで匿って頂けるようにジン殿に話を致します。】
【そこまでして下さるのですか?】
【もちろんです。貴女達が安心してくださるのなら安い物です。】
【あ、あのう・・・。】
【何かございましたか?】
【えっと・・・ですね・・・。】
【何でしょうか?】
【その恰好、とても素敵ですね。】
【これ、ですか?】
【ええ、とてもお似合いです。】
ルイス達からは何とかならなかったのと言われたものだがね。
【ありがとうございます。素直に喜んでおきましょう。】
【・・・あの。】
【何でしょうか?】
【いえ・・・その・・・。】
「紅玉殿、私は少し離れさせて頂きますね。」
【はい、ありがとうございました、コニーさん。】
「いえ、何かあればお呼びください。」
【了解です。】
そう言うとコニーさんは部屋を出て行った。
【【・・・。】】
【【あの、】】
【失礼しました、どうぞ、ルリアさん。】
【済みません、重なっちゃいましたね。】
【こちらこそ失礼を致しました。】
【あの、ヘファイストス様。】
【何でしょうか、ルリアさん。】
【こ、子供は何人ぐらいほしいですか?】
この子、突然何を言っているんだろうか?
そう思われても仕方ありませんよね。
自分でも分かるぐらいに気が動転している。
【私は男の子二人と女の子一人が欲しくてですね・・・聞いていらっしゃいますの、ヘファイストス様!】
【えっと・・・ルリアさん。急すぎませんか?】
(そうよ、ルリア。しっかりしなさい!今だからこそ言える。そんな質問をしなさい!)
【何かおっしゃいましたか?】
【おほん、でも、貴方様は用が済めば国に戻ってしまわれるんですよね?】
【そうですね、滞在時間は2~3日なので明日にはいないかもしれませんね。】
【ジーナが言ってたんです!会うタイミングを逃すと二度と会えないって!】
【そ、それで何で子供の話を?】
【はい、それで続きなんです。どうですか?】
【いいですね、それこそ田舎に引っ込んでから考える事ですがね。】
【ヘファイストス様は、行かれてしまわれるんですか?】
【目標が整えば、ですがね・・・さっさと田舎に行って良い人達と鍛冶をしながら・・・ルリアさんには夢があるのですか?】
【そうなんです・・・私は夢を見ていたような気がするんです。】
【夢ですか?】
そう言ったルリアさんが俯く。
【私も・・・貴方様の、その中に・・・入れてはいただけませんか?】
【・・・条件次第ですね。】
【条件ですか?】
【そうです、その条件とは・・・。】
バダン!
いい勢いでドアが開き、何人か入って来た。
「紅玉殿!」
「無事でございますか!?
突然の乱入者、だがそれはほっとさせる面々だった。
「いらっしゃったか、御無事か?」
「いてえったら、何なんだよ、アンタらは!?」
【ジーナ・・・。】
【シェラハザードさん、アダムスさん。どうされましたか?】
「紅玉殿は分かっておられるのか?その娘、「七大悪魔」でありますぞ!」
【・・・。】
「何を黙っておられるか!」
【やはり・・・。】
【ヘファイストス様は・・・七大悪魔である私が怖いでしょうか?】
【いえ、ルリアさん。怖くもないですし、貴女は何も悪くはない。】
「紅玉殿?」
【シェラハザードさん、アダムスさん・・・済みません。】
「紅玉殿!?」
ルリアさんをお姫様抱っこするとその場から逃げる。
七大悪魔と言う事だけで、この子の命を奪わせる訳にはいかない!
「紅玉殿!!!」
「ええい、追え、アダムス!コニーは蘭様へ連絡!」
「はい、隊長!」
「任されました!」
俺はルリアさんを連れて屋敷の中を出口に向かって疾走する。
【ヘファイストス様、私なんかの為にこのような・・・。】
【黙っていて下さい、舌を噛みますよ?】
【・・・。】
だけど、それは逃げ切れる目処の立たない逃走であった。




