誤算ー2
裕太はアシルに一連の事情を説明する、その後ミリスはフェミルを呼びに迎えに行った。
「お前の様な何も特徴が無さそうな男がガレイオンを倒したとは俄かに信じ難いが」
(一言余計だよ……)
裕太はそう心の中でひっそりと思う。
「しかし残念だが、ガレイオンは死んだ訳ではない」
「どう言うことだ? 確かに倒した筈なんだが……」
「俺も一度彼奴を討ち滅ぼしたんだがな……特性だか、魔法だか何だか知らんが復活したんだんだよ、これが」
アシルは少し前、激戦の末、討伐隊の半数を犠牲にガレイオンを討ち取ったのだがどう言う訳か再び復活したのだ、恐らく龍神より与えられた龍王への加護というものなのだろう。
「それって死なないって事なのか?」
「それはない、恐らく復活できる回数には限りがある、とは言えまだ残機はあるのだろうが……ともかくお前達にはついて来てもらう、上への報告もあるしな、問題はないか?」
「嗚呼、それは問題はないけど……何処へ連れて行くんだ?」
「氷府だ、人間の国で言う首都見たいなもんだな」
「一応安全は保証してくれるんだよな?」
「勿論、氷聖の名にかけて誓おう」
アシルは自分の胸に腕を当てそう言う。
氷人族の戦士の最上位の誓いの印なのだが裕太は知る由もない。
裕太はアシルのステータスを確認する。
アシル・ガフル l V60
筋力150 体力110
魔力30 知力35
俊敏力120 精神力200
HP380 MP40
攻撃系スキル90 防御系スキル90 強化系スキル50 霊魂使い60
アシルの強さはガレイオンよりも若干弱い程度だろう、しかしガレイオンがドラゴンの群れを自在に操れる事を考慮したら大分不利なのかもしれない。
「それで……この村で生き残りはいるのか?」
「一人だけいる、俺の旅仲間だ」
「そうか、ならばその人には謝らなければな……私の対処が早ければこうはならなかっただろうに」
「ミリスがもう直ぐ連れてくると思うんだけどな」
裕太はミリスの向かって行った方向を一瞥する、そろそろ戻ってきてもいい頃だろう。
「あの悪魔種の女か……忌み嫌っている人間と居るのは珍しいと思っていたのだが」
「えっ……? なんでミリスが悪魔ってわかったんだ……?」
裕太は目の前の男がミリスを悪魔との混血と見掛けで分かった事に対して驚きを隠せなかった。
ミリスが悪魔の血を引いてるとは言え見掛けは人間と差異は無い、強いて言うなら鋭い八重歯が生えてるくらいで外見的に見分けるのは不可能な筈である。
「気配で分かる……まぁ他の並大抵の奴らは無理だけどな」
アシル曰く、目に見えないオーラの様なものが魂を通して気配として伝わってくるらしい、この能力は自身の特殊能力らしく他にこの能力を使える者は彼の認知の限りでは知らないそうだ。
そうこうしているとミリスがフェミルを連れて戻ってくる、アシルはそれに気付くとフェミルへと駆け寄る。
「貴方は氷聖様……⁈」
「そんな様などはつけないで欲しい、そんな大した人でも無いさ、しかし本当に済まなかった、俺の到着が早ければこんな事にはならなかっただろうに……」
「いえ、氷聖様は悪くありません、助けに来ていただけるだけでも……」
「氷人の民を守るのが私の使命、それをこなせなかったのは俺の失態、望むのなら今ここで腹を斬ろう」
「いえ……その必要は……」
「そうか、しかしなんらかの形で償わせてくれ」
「……分かりました」
フェミルは力無く答える。
「では、裕太には取り敢えず三人には氷府に来て貰う、問題ないな?」
アシルは裕太達に視線を向ける、特に問題があるわけではないようである。
「氷府? なんでそこに行かなければ行けないの?」
「まぁ事情確認だ、上にも報告があるからな」
「そう言うことね、ならなら良いわ、氷府がどんな所か知らないけれど危ないところでも無さそうだしね」
「嗚呼、それは保証しよう」
そして裕太達は氷府へと向かう事になったのだった。




