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文音たち3人は、朝比奈の警察車両に乗り込み、3号線を上り方向に直進して北九州市へと向かった。朝比奈がこの車で都市高速を使うのはマズいという趣旨の話をしたので、北九州市までの1時間少々の道のりを、下道で行くことのなったのだ。
文音は、良明とともに車の後部座席に乗り込んだ。車内は、警察車両ということもあり無線機やかなりハイテクそうなナビが完備されてあった。文音は、それに見入っていたが、良明は乗りなれた様子で平然としていた。
「文音ちゃんは警察の車は初めてだっけ?」と朝比奈が文音に聞いてきた。文音は、「たぶんそうだと思います」と答えた。
次に朝比奈がこう話し始めた。「そうだな、文音ちゃんを保護していた時は、警察の車じゃマスコミにばれそうだから、俺の車で移動してたっけ」
文音の記憶の中では、確かに6年前、マスコミから逃げている時はこのような無線が完備された車ではなかった。
「良明は慣れてるよな」と朝比奈が言った。
「まあ…」と良明が気まずそうに返事をした。
「訳は、こないだ文音ちゃんに話した通りだ」と朝比奈がバックミラー越しに文音を見て言う。文音は思わず、うっすらと笑みを浮かべた。
すると、良明が後部座席から前に身を乗り出して、「ちょっと、あのこと、話したんですか?」と大きな声を出した。それから良明は、文音に向かって「なんか、この刑事さんから聞いた?」と聞いてきた。文音は、首を縦に動かした。
良明は、「うそー」と言いながら、後部座席の背もたれにもたれかかった。良明はとても気まずそうだったが、その良明を見て文音は思わず声を出して笑った。
「なんだ良明。ただ、高校時代にちょっと喧嘩が強くて、喧嘩が大好きだったって言っただけじゃないか」と朝比奈が言う。
「あの時は、母親に迷惑をかけようとしてぐれたヤンキーですよ」と良明が言った。
少し落ち込んでいる良明に向かって、文音は何かかける言葉はないかと思ったが、ここは自分が思いついた言葉を気づけば発していた。
「でも、なんか、友達を守るために喧嘩してったって聞いたから、かっこいいなって思った」
「ほんとに?」と急に良明の顔が明るくなる。
文音は良明のその表情が可笑しくて、また少し声に出して笑った。朝比奈は、「お前は、こぎたない子どもが多くなる中で、珍しく公然と悪いことをする、気持ちのいいヤンキーだったよ」と良明に向かって言っていた。
「そんな不良は、私はOKだな」と文音は素直な言葉で言った。
その時、文音は自分が普通に笑い、普通に話せていることに気が付いた。良明の前では、普段より話せる感覚はあったが、ここまで自由に話せる感覚は、6年前の事件以来初めてであった。
この北九州までの時間が、ずっと長く続けばいいのにと、文音は心の奥底で考えていた。




