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そして、少ししてから、玄関の鍵が開いた。自分を、あの時守ってくれた刑事は、泥棒みたいだと、文音は感じていた。
「何驚いた顔をしているんだ?」と朝比奈が文音に向かって言ってきた。文音は、首を横に振り、何もないよということを声には出さずに朝比奈にアピールしていた。
「ハハハ…怖くなったか。本当はこんなことしてはいけないんだけどね」と朝比奈はいつも通りの優しい顔をしてつぶやいた。
「よし入ろう!」と良明が言った。良明は、自分と朝比奈に少し気を使ったみたいだと文音は考えた。
朝比奈を先頭に、良明も時田康夫の自宅に入っていった。文音も恐る恐る2人に続いた。
中は薄暗く、誰もいないみたいだった。文音にあの時の感覚がフラッシュバックしてきた。それは6年前に1件目の殺人が起きたマンションの部屋で、江川聡の遺体を目撃した時の感覚であった。
それと同時に、姉の美夜古が犯した殺人の映像も頭の中を駆け巡ってきた。文音は息が荒くなり、また目の前が真っ暗になるかと思った。
「文音ちゃん!文音ちゃん!」
文音の視界が晴れて元に戻った。
「良明くん…」
目の前にいたのは、良明だった。
「大丈夫。ついているから」と良明は、文音に優しく問いかけてきた。
「ありがとう」と文音は言い、ゆっくりと立ち上がった。朝比奈も、文音に「大丈夫か?」と聞いてきたので、文音は「大丈夫です」と返した。
文音は大丈夫という言葉を自分に言い聞かせていた。もう逃げたくないと言い聞かせていた。
そして、家の奥に進んでいく。中に行くほど暗くなったが、文音は良明の袖口をがっちりと掴んでいて、少しだけ安心だった。
リビングに入るドアを朝比奈が開けた。その部屋は、人は生活をしているとは思えないくらい片付いており、しかも無臭であった。
「人が暮らしている部屋ではないな。やっぱり消息不明なのかな?」と良明が言った。
「自殺でもする人のような部屋だな」と朝比奈がつぶやく。
文音が何より気になるのは、無臭ということであった。無臭ということは、もう何年もの間、ここに人は住んでいないということになるのではないかと、文音は考えた。
朝比奈は、リビングに置いてあった棚の引き出しをひっきりなしに開けだした。中には何も入ってなかったようで、すぐに閉めていたが、最後の段になりついに一冊にまとめられた冊子が出てきた。
「なんだこりゃ」と朝比奈がつぶやく。
文音は良明とともに朝比奈の元へと駆け足で行った。文音が朝比奈の持つ冊子を覗くと、『美夜古の冤罪の証拠』と書かれてあった。
朝比奈が冊子を開くと、その1ページ目を読み始めた。
そこには、“この資料は、西沢美夜古を冤罪の証拠がある。犯人は、5件目の被害者となっている時田和夫である。時田和夫は、都市開発計画で自分が作った孤児院がつぶされることをよく思っていない。当初、孤児院を守ると騙していた4人を殺害し、自ら命を絶った。自ら、命を絶った理由は、自分が殺人犯とばれたら、孤児院はつぶされるからだろう。証拠として、時田和夫が、北九州市の若松にある店でロープ、凶器になるハンマーやバタフライナイフを購入したことが明らかになっている。俺はこれから、とある人と同伴し、その証拠を突き付けに北九州へ向かう”
文音の記憶では、確かに西沢美夜古が起こした事件の1件目はロープを使っての絞殺、2件目は鈍器での撲殺、3件目はナイフでの刺殺だ。
「本当に北九州にあるのか?その映像」と良明がつぶやく。
良明と朝比奈は顔を見合わせてこう言いあっていた。
「行くか!北九州市若松区へ!」




