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6-4

 逸子は顔を赤らめ、激しく激高している様子であった。朝比奈が時田和夫は孤児院をつぶそうとしていたと言った瞬間、逸子は大きな声を上げたのだ。良明は、初めて逸子の芯が通ったような声を聴いたと感じた。

「和夫さんは、孤児院をつぶそうとしていないということでしょうか?」と良明は、逸子に聞いた。

「あの人は、そんなことをする人じゃありません」と逸子は答える。良明は、朝比奈とお互いの顔を見合った。相沢の情報に誤情報があったということなのだろうか。

「6年前の都市開発計画で、この孤児院はつぶれる予定だったということは、知っていますか?」と朝比奈が聞いた。すると、逸子はもっと顔を赤らめ、「そんなはずはない!」と答えた。

 良明は、どうしてそんなはずはないということが言えるのだろうかと疑問に思い、「和夫さんが、都市開発計画に賛成した地主の1人であったということは知ってますか?」と聞いた。

 逸子は、両手を大きく広げて、「知ってますよ。だから、そんなはずはないと言っているんです」言った。逸子は、都市開発計画で孤児院がつぶれる予定であったことを、知らないと発言した。しかし、良明にはかなりの違和感が生まれた。それは、逸子が「そんなはずはない!」と言った時に、再び視線が合ったからだ。したがって、良明は逸子が嘘をついているのではないかと考えた。

「すみませんでした。無礼なことを」と朝比奈が逸子に頭を下げた。そして朝比奈は、「最後に、時田康夫さんがどこにいるか知っていますか?」と逸子に聞いた。

 逸子は、そっけない態度で、「もう3年間会ってないですし、知りません」とつぶやくように答えた。逸子の目から、何か光るものが流れていたのを、良明は見逃さなかった。

 孤児院を出た後、3人は時田康夫が住んでいたと思われる、ニュータウンに向けて歩き始めた。3人とも逸子との会話で感じた違和感を口々に話し合っていた。

 美夜古のことを金目当てで殺したと言っておきながら、そう話したときに嘘をついている人間の兆候が感じられたこと。そしてそれは、6年前の都市開発計画で孤児院がつぶれる話をした時にも感じられた。孤児院がつぶれることを知らなかったふりをしていたが、逸子は高確率で孤児院がつぶれることを知っていたのだ。

 いずれにしても、時田康夫に会って、孤児院があの時どうなっていたのかを聞かないと、らちが明かないことであった。

 歩いていた時、朝比奈の携帯に着信が入った。朝比奈は電話に出ると、「うん。分かった」とだけ言い、すぐに電話を切った。そして、良明の方を向いて、「江川聡を殺した犯人が捕まった」と言った。

 良明は、すぐさま「どのような犯人ですか?」と朝比奈に聞く。すると朝比奈は、「当初から疑われていた、江川の妻の不倫相手だ」と答えた。

 それを聞いた良明は、西浦殺しの時との共通点をすぐさま見抜いた。西浦の時も、すぐに殺害動機を持つ犯人が浮上した。江川聡が殺された事件もまた、同じようなものであった。誰かが、ターゲットに殺害動機を持つ人間を募集し、殺させ、後に自分で遺体を西沢美夜古が犯した事件の通りに動かす。そんな想像が、良明の頭の中で浮かび上がっていた。


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