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6-1

 6年前の事件の真相を解き明かすため、良明の母である章子が運営する探偵事務所が動き始めた。章子は3件目の事件で殺された、私立高校校長の山本晋平について調べるため、校長が勤務していた高校へと向かった。この高校は、先日自殺した山西徹也が通っていた高校でもあり、徹也の自殺を解き明かすためでもあった。この高校には、徹也が生前付き合っていた樋口早苗もいるので、章子は早苗にも協力してもらおうと考えているようだった。

 服田は4件目の事件で殺害された、富田幸助が社長をしていた建設会社へと向かった。ここで、富田と西沢美夜古とのつながりや新たに容疑者として浮かび上がった5件目の被害者である時田和夫との関係を調べることにしたらしい。

 そして良明は、朝比奈と文音とともに行動していた。良明は文音に対して、「事件の捜査をしても大丈夫なのか?」と聞いたところ、文音は「松島先生からもお許しを得ることができたし、大丈夫」と言っていたので、そのまま付き添わせることにした。良明たちが調べようとしていたのは、時田和夫が院長をしており、文音もそこでボランティアをしていたと言われている孤児院と容疑者の1人である、時田和夫の兄、時田康夫についてであった。

 良明は時田康夫について、先日、服田から弟の和夫に孤児院を奪われた男であるということを耳にしていた。そして、康夫は自分が作った孤児院を、都市開発で無くそうとした和夫を憎んでいたとも聞いていたのだ。服田によると、それらの証言はすべて相沢の調査によるものであった。康夫が6年前の事件に絡んでいるのかどうかは分からないが、調べてみる必要はありそうだと良明は考えていた。

「相沢は、よくこんな事調べとったね」と朝比奈が口にした。良明は、目を丸くしていた朝比奈を見て、「相沢さんって、被害者の家族とかあまり当たらないんですか?」と尋ねた。

「いや、そんなことはない。ただ、この康夫って男は、捜査中に名前は上がったが、そんなに注目はされなかった」

「もともと、和夫は大企業の社長だったって」

「それは知っている」と良明の言葉に、朝比奈が反応した。

「時田和夫という人は、孤児院の院長をする前、大企業の社長だった。しかし、最初からあの孤児院の院長は和夫だったぞ」

 朝比奈は、頭を抱えながら悩んでいた。良明も、何故全員の言っていることにこんなにズレが生じているのだろうかと考えていた。

 良明、文音、朝比奈の3人は大学周辺の旧3号線沿いを歩いていた。考えれば考えるだけ沈黙は続き、何台もの車が3人の横を足早に通り抜けていった。

「あの…。康夫さんは孤児院を作ることを計画した人じゃないでしょうか?」

と突然、文音が沈黙を切り裂いてそう言った。

「どういうこと?」と良明は文音に尋ねた。

「だから、孤児院を作る計画は康夫さんがしてたけど、財力がなくて結局財力がある和夫さんが経営をしたっていうこと」と淡々と文音は答えていた。

 良明は確かに文音が言っていることは正しいかもしれないと感じた。康夫には、大企業の社長に勝てる財力がなかった。文音が言ったことは的を得ていた。


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