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5-9

 翌日、自宅の探偵事務所で良明は、服田、章子、それから朝比奈とともに今後の方針を立てることにした。良明はその場に文音も交えることにした。文音は良明に会うと、「大丈夫?捕まったって聞いたから」と心配そうに尋ねてきた。

 良明は、「大丈夫だよ。捕まったわけじゃないから」と文音をとりあえず安心させることにした。

 まず初めに、良明は6年前の事件を捜査することになった経緯を簡単に説明した。野崎文音は、旧姓西沢文音であり、6年前の犯人である西沢美夜古の実の妹であること。文音はすごく優しかった姉が、5人もの人間を殺害したことが信じられないということ。美夜古が起こした事件には、美夜古1人では犯行不可能と思われる疑問点が多くあること。

「やっぱり、6年前の犯人は彼女じゃないかもしれないな」と服田がつぶやいた。

「やっぱり?」と良明は身を乗り出して言った。

「当時、西沢美夜古の犯行を断定した時から違和感があったんだ。でも、本人の自白と5件目の事件現場に残されていたDNAがあったから…」

 当時県警の捜査一課にいた服田も、西沢美夜古の犯行を疑問に思っていたみたいであった。当時、加害者家族となった文音をマスコミの目からそらすために、大物作家の不倫をリークした章子も、「そうよね。おかしいわ」と見解を述べた。

「美夜古さんは、5件目の現場となった孤児院にボランティアで行っていたそうです」と良明は調べていたことを口にした。すると朝比奈が、「そうだな。美夜古が不倫していた本命は、最後の被害者の時田和夫と言われているし、実際に美夜古は時田の通帳に他に殺された4人のお金を振り込んでいた」

 美夜古の動機は、5人のお金を持った男から大金をせしめることであった。それも、美夜古の取り調べでの証言である。

「ちょっと待ってください」と良明は言った。6年前の事件の経緯を振り返ってみていると、もう一つ気になることが出てきたのだ。

「美夜古さんの犯行を確定させる証拠って、DNAしかないですよ。それは、最後の孤児院の1件だけですよね?」

「確かに」と服田は良明の言葉にうなずいた。

 自白というものは、それだけで殺害の証拠にはなるが、犯罪を確定させる証拠にはならないはずだと良明は考えていた。

「時田和夫の通帳にお金が振り込まれていたってことは、4件の殺人は時田和夫の犯行じゃないでしょうか?」

良明がそう言うと、服田は「こら、それは憶測すぎる」と良明の注意を促した。

 しかし、朝比奈が「いや、良明くんの憶測を舐めない方がいい」と服田の注意に反論した。

「今朝、西浦を殺した容疑者の事情聴取が行われた。近くのコンビニに西浦の自宅に向かうそいつが映されていて我々は断定したんだが、そいつの殺害方法が、良明くんが言っていた通りだった」

 それは良明が現場でいつも朝比奈について回っている1人の刑事に言ったことであった。犯人は、西浦を押し倒してマウントポジションから頭を鈍器で何度も殴りつけたと。

「へ~。やるじゃん」と服田は少しだけ謙遜した。

「で、それから遺体を動かした人は?」と良明は朝比奈に聞く。

「それが、自分で2時間くらい経ってから動かしたと言っておる」

 朝比奈の言葉に、良明は頭を抱えた。そして、「じゃあ、その犯人は西沢美夜古が犯した6年前の事件の現場写真か何かを見たことがあると?」

「知らない」と朝比奈はポツリとつぶやいた。

 少しの間沈黙が続くと、章子が「今は6年前のことを考えましょう」と言った。文音は「よろしくお願いします」とつぶやいた。

 服田が煙草に火をつけてふかし始めた。それからしばらくして、「なら、時田和夫が4人を殺す動機でも調べるか」と言い始めた。

 章子と朝比奈も、服田のその言葉に同意した。なぜならば、5件目の被害者である時田和夫は、今現在、西沢美夜古以外で最も疑わしい人物であるからだ。


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