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5-7

 それから少し経って、良明は取調室から出ることができた。外はもう薄暗くなっており、県警の出入り口に行くと、相沢が笑顔で良明を出迎えた。

「相沢さん。もう仕事終わりなんですか?」と良明は聞いた。すると相沢は、「まさか、終わりな訳がない」と答えた。

「ただ、私もね彼氏が誕生日だからプレゼント買いたいなと思って、チェリーボーイを持ってたの」

「彼氏いたんすか?」と良明は相沢に言った。その言葉に相沢は、「もう、失礼な言い方」と反応し、良明に背を向けて歩き始めた。

「ついてこい。チェリーボーイ」

 良明は、相沢に同行する羽目になった。相沢は、古東ら上司に聞き込みに行ってくると言い残して出てきたらしい。何と、行儀の悪い警察官だろうかと、良明は感じた。

 相沢が向かった店は、なんとチョコレート店であった。良明は「この季節にチョコレートですか?」と驚いて見せた。

「彼氏がチョコレート好きなの!」と相沢は頬を膨らませた。

 相沢はガラスケースの中に入ったチョコレートを熱心に見ながら、頭に手を当てて考え込むそぶりを見せていた。良明はただその相沢の姿を見ているだけであった。

「あの。僕、ここについてくる必要ありましたか?」と良明は相沢に聞いた。

「ありありよ!」と相沢は反応する。

「今、男の子が好むチョコレートのデザインとか、あなたに選んでもらおうと思って」

「僕、よく分かりませんが…」

「直感でいいのよ!直感で」と相沢はあっけらかんと答えた。

 しぶしぶ良明は、相沢の彼氏の誕生日プレゼントであるチョコレートを一緒に選ぶことになった。何故、誕生日プレゼントを形に残るものにしないのかという良明の疑問は消えていなかったが、相沢に協力することにした。

 良明は自分が好きなチョコレート味のものと、少し丸みを帯びた食べやすい感じのものを選んだ。相沢は「なるほど!」と言いながらそれをチョイスし、会計を済ませた。

 チョコレート店を出てすぐに、相沢が「もうすぐ合同捜査本部が、古東さんの元立ち上がるはずだったんだけど、西浦を殺した犯人が浮上したのよ」と唐突に言い始めた。

「マジっすか?」と良明は驚いて声を上げた。

「ずっと、西浦に脅迫状を送り付けてた犯人が居てね、そいつ西浦を殺す数分前にも脅迫状送ってたの」

 良明はえらくわかりやすい犯人だと思った。おそらく、この犯人は自分が捕まろうが、捕まりまいが、どうでもよくなって殺人を犯していると考えられる。だから、自分が殺すということを被害者に伝えるために脅迫状を送っているのだろうと、良明は考えていた。

「その人は、どんな恨みを?」

「西浦って、だれかれ恨みを買うような人間性だったみたいで、その人も、西浦からはひどいことをされてたみたいね」

「どんなことを?」

「西浦とその犯人と疑われている人は、高校時代の同級生でね…」

 相沢に話はこうだった。西浦と脅迫状を送り付けていた奴は高校時代の同級生で、西浦は大人になってからその容疑者が付き合っていた彼女に、絶対に知ってほしくはない高校時代の負のイメージを漏らし、それが分かれの原因につながった。

「それだけで、殺しますかね?」

「殺すよ。全然持てなかった人なら尚更…」

 相沢の話にやると、もう他の刑事が身柄確保に動いているということであった。

 その話を聞いて、内心良明の心は踊っていた。死体を6年前の事件の通りに動かすことは、西沢美夜古が犯した事件の現場写真を見たことがある、またはその場に行ったことがある人間にしかできないことだ。つまり、その男には、西沢美夜古の裁判を傍聴していたという立証がない限り、死体を西浦の遺体の通りに動かすことはできないのだ。

「絶対に複数犯だ」

良明は、自信に満ちた口調で、そうつぶやいていた。


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