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良明はすぐに朝比奈に連絡を入れ、事情を説明した。朝比奈に電話をかけてから、10分も経たないうちにパトカーのサイレン音が聞こえていた。
「良明くん。無事か?」
玄関の方で、朝比奈らしき人物の声が聞こえた。
「二階です!」と良明は、下の階に向かって叫ぶ。朝比奈とその他の警察官は、すぐに二階の寝室へと上がってきた。
朝比奈は、西浦栄良らしき男の遺体を見ると、すぐに両手を合わせ遺体のそばにしゃがみ込んだ。
「前頭部を一撃、いや、3発か?」と朝比奈はつぶやく。
良明は朝比奈の元に近づき、朝比奈に西浦が握っていた紙を差し出した。朝比奈は、その紙に目を通すと、「西沢美夜古からの警告だと」とそこに書かれてある言葉を復唱した。
「右手に握ってました」と良明は朝比奈に伝える。
すると、朝比奈についてきた刑事が、「君、遺体に触ってはいけないじゃないか」と良明を叱責してきた。
そして、その刑事は朝比奈と耳打ちをしながら話し始め、2人でうなずき合うと、朝比奈が良明の方を向いてこう言った。
「良明くん。すまんが、第一発見者として、あっちで事情聴取を受けてくれ」
「分かりました」と良明は朝比奈が言うことを承諾した。
事情聴取は、朝比奈の近くにいた刑事が行うことになった。この刑事は、こないだ江川聡が殺害されて事件でも、朝比奈の近くに居座り、郵便受けで紙が見つかったことなどを報告していた人物だ。
良明は遺体が見つけたまでの経緯を事細かに説明した。まずは、6年前の事件について調べていて3日前に不動産会社に行ったこと。そして、その会社で現在社長をしている西浦が西沢美夜古と親交があり、6年前の真相を突き止めるために社長に自宅に来たということ。
「お前が来た時に死んでました!なんて、えらい都合がいいな」
とその刑事はなぜか強気であった。
良明はそう思うのも仕方がないことだと考えていた。江川聡の遺体も、西沢美夜古が最初に殺人を犯した1件目の現場に、良明が行った時に見つかった。そして今回も、良明が不動産会社社長である西浦の自宅に出向いたときに、遺体が見つかっているのだ。怪しく思われてもおかしくはない。
良明はこのままでは自分が疑われてしまうと考え、何か他の話題を振ってみようと思った。そして良明は、こう話を切り出した。
「あの、遺体を見ていてすごく気になることがあったんですけど…」
「なんだ、探偵気取りで何を言う?」
「この事件の犯人は、殺した後に、遺体を動かしています。もしくは、犯人が2人居ます」
良明がそう言うと、その刑事は大きな声で笑い始めた。そして、「どうしてそんなことが分かる?感覚でものを言われても困るんだよ」と述べた。
「感覚ではありません」と良明は、首を小さく何度も横に動かした。
「遺体はうつむけに倒れていましたよね。そして、血で染まっていた床に右手がどっぷりとついていたんですが、その右手の手のひらにも、袖口にも血がついてないんです」
良明がそう言うと、その刑事は、「少し見てくるから、待ってろ」と言い、2階に向かって歩き始めようとした。しかし、1人の刑事の登場によって、その刑事は足を止めた。
「行かなくていい!」
良明はそのえらく威勢のいい声に、思わず振り返った。そこには、りりしい顔立ちの身長が高い男が、立っていた。
「管理官!」と良明を事情聴取していた刑事は敬礼を始めた。
良明は、記憶を掘り起こし始めた。管理官ということは、6年前西沢美夜古が逮捕された時に取り調べを行ったと言われている刑事である。美夜古の刑が決まった後も、何度も拘置所に会いに行っていたと言われていた男だ。
その男は、良明に顔を近づけるとこう言った。
「2度も第1発見者か…。たまたまとは簡単には思えない。ご同行を願いたい!」
良明はそう言われると、何も言い返すことができずに警察車両に乗せられた。朝比奈も慌てて2階から降りてきたが、管理官が目に入ったのか、良明をかばうことはできなかった。
良明を乗せた車が西浦宅を出る時、良明は心配そうにこちらを見ていた相沢と目が合った。良明を乗せた車は、そのまま福岡県警へと走っていった。




