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良明は朝比奈と別れた後、福岡市東区にある不動産事務所に向かった。この事務所は、西沢美夜古が2件目の殺人を犯した場所である。殺されたのは、不動産会社の次期社長候補として期待されていた、下山剛である。事務所の番地は2-23であり、1件目の現場には2という数字が書かれた紙が置いてあった。
6年前に最初に殺人が行われたマンションでは、また人が死んでいた。そして、そこには3という数字が書かれた紙が置いてあった。しかし、被害者の自宅に届いた紙には、18という数字が書かれてあったらしい。
6年前には、1件目の現場に2という数字が書かれた紙が届けられた。そして、番地が2-23であった、今、良明が前に立っている不動産事務所で2件目の殺人が起きている。
したがって、西沢美夜古を模倣した事件と考えられるが、今回は1件目の現場に1枚、被害者の自宅に1枚、違う数字が書かれた紙が届けられており、すべてが共通というわけではない。しかも、2件目の殺人が起きるかどうかさえも分からないのだ。良明は、できれば起きてほしくないと考えていた。
もし起きるなら、止めなくてはならない。良明は、そのヒントが6年前にある気がした。だから良明は、文音から受けた、姉の真実を調べてほしいという依頼を、遂行することにしたのだ。
6年前の下山のことが何か聞けるかもしれない。そう考えた良明は、不動産事務所に入っていった。
「はい、住居先をお探しですか?」
良明が入るなり、40代いくかいかないかくらいの男性がこう言ってきた。若い良明が、住居先を探していると思っているらしい。良明は、仕事上それは仕方のないことだと思った。
「いえ、聞きたいことがありまして」
「はい、なんでしょうか?」
「6年前に殺された、下山さんのことですが…」
良明がそう言うと、男性は、「下山さん?ああ、あの殴り殺された人です。いい人やったけど」と言った。
良明はその後、どう言っていいかわからずに黙り込んでいたが、男性の方から、「あんたいったい、誰ですか?」と聞いてきた。
良明はここでどう答えようか一瞬悩んだ。服田だったら、ここは張ったりをかまして、警察ですなどと答えるであろう。しかし、良明は自分自身のことをそこまで器用な人間ではないことを、日ごろから理解していた。
「僕は、探偵やってます」
「探偵?探偵さんが6年前の事件ほじくり返して何しよっとね?」
やはり、警察だと名乗った方がよかったか。客観的に見ても、探偵ですと答えるより、警察だと言った方が信頼されるに決まっていると良明は感じた。
「西沢美夜古のことを調べています」と良明は包み隠さず言うことにした。
男性は、上を見上げると、「ああ、懐かしい名前やね。あの子は、下山さんにお願いして、孤児院をもっとよくしてくれとか、いろいろ言うとったね」と述べた。
「孤児院って、6件目の殺人が起きた?」
「ああ、あそこたい。あの子、確かあそこでボランティアとかしよったと思うけんどね…」
いろいろと新たな情報を、良明は聞いてしまった。いろいろ聞きすぎて、良明は頭の中を整理するのが大変になっていた。
「分かりました。ありがとうございました」
良明はそう言って、事務所を出ようとした。しかし、男性から「ちょっと待たんね」と呼び止められる。
「俺も、美夜古さんが殺したなんて信じられんとよ。恋愛関係のもつれとか言われとるけんど、そうやなかと思う」
良明は、その言葉を聞いて、どうやら西沢美夜古を知っている人間は、みんなそんなことを言うらしいと感じた。
「本当に殺しているかを、調べているんです」と良明は男性に言って、事務所を出て言った。
良明が歩き始めると、事務所にいた男性が良明のもとに走ってきた。そして、「お兄ちゃん。今、社長出張でおらんけんど、2日で家に帰ってくると思う」と言った。
「社長?」
「美夜古ちゃんは、今の社長とも仲良かったけん、なんか知っとるかも、住所だけ」と良明は男性に、社長の自宅の住所が書かれたメモ用紙を受け取った。
「ありがとうございます」
良明はあと2日で家に戻ると聞いたので、2日後にこの住所に向かうことにした。




