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4-7

 良明は、朝比奈とともにクリニックを追い出された後、行くあてもなく文音が住んでいる町の町内を歩き回っていた。その時良明は、文音のことをずっと考えていた。今日も文音は悲しい顔を見せたり、良明の言葉に少し笑って見せたりしていた。

 江川聡の殺人が、西沢美夜古が犯した事件の模倣であるという話をするときに限って文音は悲しい顔をしていた。

西沢美夜古の模倣犯が出た。良明は、自分が文音の立場だったらどうだろうかと考える。良明の答えはとっくに出ていた。自分の姉は、死刑になってまでも殺人の共犯者になっていると思う。文音はおそらくそんなことを考えているだろうと、良明は考えていた。

「しかし、あの松島先生もきっちりしとる先生バイ」と良明の前を歩く朝比奈が言った。

「ああ、そうですね。でも、あの人はしっかりとした先生です」

「まあな、カウンセラーとしての仕事は、完璧っちゅうことじゃ」

 朝比奈はそう言いながら、持っていたライターに火をつけたり、消したりを繰り返していた。良明には、朝比奈がイライラして煙草を吸いたくてたまらないという気分になっているかのように感じた。

「ところで良明くん。お前、文音ちゃんのことすいとるとね?」

「いや、そんなことなかです」と良明は慌てて否定した。

良明が朝比奈を見ると、朝比奈は大きな声で笑いだしていた。そして朝比奈は、「お前も分かりやすいな」と言った。

 良明は朝比奈との会話に、徐々に博多弁が混じりだしたことに気付いていた。どうやら、だんだん数年ぶりに再会した朝比奈との会話に慣れだしたみたいだ。福岡県民は通常標準語と変わらない言葉で話しているが、気分が乗ってきたりすると方言丸出しで話してしまう。どうやら、今隣にいる朝比奈もそのタイプらしいと良明は感じた。

 しばらく2人して歩いていると、都市開発を町民に伝えているポスターが所々で張り出されていることに、良明は気づいた。

「都市開発ですか?僕たちの大学周辺を、研究都市にするとか」

と良明が話すと、朝比奈は急に足を止めた。それにつられて良明も足を止める。

「また、計画が復活しているらしいな。6年前もそうだった」

「6年前…。そうらしいですね」

「そう、西沢美夜古の事件が起きた時、ちょうど5件目の殺人が起きた直後、綿密に計画されていた都市開発は頓挫した。意味が分からんかったけど、そうなった」

朝比奈が言ったことは、服田や相沢から聞いた話と一緒であった。

「それは、超バリアフリーな計画だったんですよね?」

「そうだな。そんな話だった」

 やはり良明は、西沢美夜古の事件が起きた、6年前の計画ということで気になっていた。そしてまた、都市開発計画が進もうとしている時に、西沢美夜古の事件を模倣した事件が始まった。

 良明は、都市開発と西沢美夜古は何かつながりがあるのではないかと感じた。

「朝比奈さんは、これからどうしますか?」と良明は朝比奈に聞いた。すると朝比奈は、「江川聡を殺した犯人を追う」言い放った。

 良明は、今から自分は何をすべきかについて考えた。良明が今ある状況は、文音から探偵として西沢美夜古の秘密を解き明かしてほしいというものである。良明はこの状況を鑑み、今、自分にできることは、6年前の現場を回ることだと考えた。

「朝比奈さん。俺、西沢美夜古を追います」

「追いますって、もう死んでるぞ」

「でも、僕は追いたいんです。西沢美夜古が本当に犯した罪を知りたいです」

 良明がそう言うと、朝比奈がもう何かを言うことはなかった。


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