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天使の微傷~殺人鬼の真実~  作者: 高見 リョウ
悪魔のシナリオ 再び
30/62

3-10

 良明は、見るにも無惨な惨劇を目の当たりにしてしまった。すぐに朝比奈が、自分が所属している捜査一課に連絡を入れ、直後に警察官と鑑識が現場に集った。リビングの中央に首を吊った男性の遺体がある。これはまさに、6年前のあの事件の光景にバッチリと当てはまるものであった。

 良明は、ショックでふさぎ込んでしまった文音を、すぐに部屋の外に連れて行った。良明は、「大丈夫。大丈夫」と文音に声をかけながら、その背中をさすっていた。

「大丈夫…。良明くんありがとう」

文音はこの場に限っても強がる発言をしていた。いや、むしろ強いのであろう。しかし、文音はあの光景を見た瞬間、すごいフラッシュバックが襲ってきたのには違いない。実際に文音は、あまり記憶がないと言っているのだ。

「視界が真っ黒になって、西口さんの遺体が見えた。ちゃんと見たいの」

「駄目だよ。見ることないし、文音ちゃんにとってそれだけショックが強かったんだ」

 少したってクリニックから松島先生が駆け付けた。良明が連絡を入れていたのだ。松島先生は、この場を離れることを拒もうとする文音を説得し、無理やり文音をクリニックへと連れて行った。

 良明は、やはり文音を連れてくることだけはやめておけばよかったと思った。文音に対して、再びつらい思いをさせてしまったと自分を責めていた。

 その後良明は、第1発見者として警察から事情聴取を受けることになった。その事情聴取を取ったのは、こないだ山西徹也が自殺したマンションで一緒だった相沢桜であった。良明はそのことでかなり安心することができた。

「ふ~ん。探偵くんは西沢美夜古の調査も請け負ったんだ。でも、お金もなし、無契約でやるのはちょっと良くないかな」

「はい。反省しています」

「でも、あなたもこの事件調べるのはいろいろありそうだし、黙っといてやろう。朝比奈さんは協力者ね?」

「はい」

 相沢が言った通り、良明は文音と正式な契約を交わしてはいなかった。ただ、友人に頼まれたから調査しているという形であったのだ。

 良明が事情聴取を受けていると、朝比奈が来て、相沢に向かってこう言った。

「桜さん。お手柔らかに頼むよ。いいやつなんだから」

「知ってます。かわいいチェリーボーイだから」

相沢はそう言って、良明にウィンクをしてきた。良明は慌てて相沢から視線を逸らした。

「そういえば良明くん。リビングの壁には、争った時に着いたと思われる傷が無数にあったぞ」

 良明は朝比奈のその一言で、何が目的でこの部屋にやってきたのかを思いだした。西口一平の殺害を、西沢美夜古1人の手で行えるのかを確かめに来たのだ。西口は今日見つかった遺体と同様に、吊るされた自殺か他殺か分からない状態で発見されている。他殺と結論付けたのは、体に争ったときにできる傷が多数あったからだ。

 首つり自殺は、最も簡単な自殺方法として知られている。首を吊ると、すぐに意識が混とんとしてしまうため、もがくこともできないのだ。そのため、体に傷などはできない。

 これを踏まえると、犯人は争い、後ろからロープで首を絞めて殺し、さらに吊るしたことが考えられる。こんなこと、女性1人の力でできるわけがない。

「美夜古じゃないのかもしれませんね」と良明は言った。

「そんなことなら、ずっと私も、それから服田先輩も疑問に思ってた。でも、西沢美夜古の証言があり、解決を急いだ管理官がそれで決断を下したから」と相沢が言う。どうやら、西沢美夜古の犯行を疑っていたのは、朝比奈だけではないらしい。

「もしかしたら、まだその犯人は生きていて、自分が目立つはずだった事件に目立てなかったから、またこのような事件を起こしているのかもしれん」

と朝比奈が言うと、相沢が「愉快犯ですか」と呟いた。

 愉快犯。事件を起こし、それを楽しむためというのが動機であるいわゆるサイコパスである。残念ながら、世界にはこのような異常性格を持つ犯罪者が存在する。心理学では、教育の失敗や生まれつきという説もあり、いまだ解明されていない。

「大変です!」

 遺体が見つかった部屋の方向でその大声が響いた。良明は朝比奈と相沢とともにその場へ駆け足で向かう。

「何があった?」と朝比奈が、大声を上げたと思われる刑事に向かって言った。

「朝比奈さん。この紙が…」

「見せてみろ!」朝比奈はその紙を奪い、自分の前に広げた。

朝比奈は、息をのみその紙を良明に渡してくる。良明がそれを見ると“3”という数字が記されていた。そして、その番号の下に“西沢美夜古を再び”という文字が記載されてあったのだ。

 良明は、悪夢のシナリオが再び動き出したという恐怖の感覚に襲われていた。


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