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服田は、「これは、ビンゴか?」と言いながら、相沢が持っている資料を取り上げるとそれをじっくりと見始めた。そして、再び塀のところに向かい山西徹也の指紋があったところの確認を行う。良明はそれをじっくりと眺めていた。
「こんなに下についていたのか」
良明は相沢から取り上げた資料を良明に手渡した。
「指紋が付いている位置を見てみろ」
良明は服田から渡された資料に目を通した。警察の資料を見るのは初めてで、それを手に取った瞬間、良明は急に緊張し始めた。
良明は資料で山西徹也の指紋が付いていた箇所を確認した。そして驚いた。その指紋は塀の最上部から1Mのところに付いていたのだ。
「良明が言ったことも一理あるが、自殺するのに普通、こんな下に指紋が付くか?」
服田が相沢を見ると、相沢も大きく頭を上下に動かした。
「それが、奇妙なの、でも、」
「でも?」怪訝そうな顔をする相沢を服田が睨みつけた。
「遺書を覆す説明はできない。100%徹也くんが書いたものなの」
良明は確信していた。この指紋はどう考えても山西徹也が、誤って転落、もしくは何者かに突き落とされようとした時に、それを防ごうとして触ったものであると。しかし、遺書の説明ができない限り、山西徹也の自殺は覆されないのだ。
その後、3人は山西家の部屋に戻った。服田が今日の調査は、一応終了することを伝えると、山西徹也の母親であるかおるは、「少し待ってください、話があります」と良明たちを呼び止めてきた。
3人はかおるに促されるままに、リビングの若干大き目なテーブルに並べられてあった椅子に腰を掛けた。
「私は何としてでも、どうしてあの子が死んだのか納得したいんです」
かおるが目を赤くさせて訴えてきた。良明は思わず身を乗り出してしまったが、服田から服を引っ張られ背もたれに背中を戻した。
「何か理由があるんですね」と良明はいつになく優しく語り掛けた。
「はい、私、実は虐待であの子を手放したことがあるんです。それから、あの子は児童養護施設に預けられました」
「逮捕歴があるんですね」
「はい」相沢の問いかけに、かおるが頷いた。
「私はうつ病も診断されて、治療を受けることになり、その後4年間は徹也と暮らすことはできませんでした。そして、4年前からようやく少しずつ、親子になろうとしてきたのです。なのに、あの子が死ぬなんて」
かおるはその場で顔をテーブルに伏せて泣き出してしまった。それから、良明はかおるに慰めの言葉をかけ、絶対に死んだ原因を突き止めてやると約束をした。
かおるは徹也が自殺ではないと信じている。自分で死ぬ理由なんてないと信じている。少しずつ家族になろうとしていた。それを、あんなに短い遺書で終わらせていいものだろうかと良明は考えた。




