言えないんなら、言ってやる
俺は舌打ちしたい気分になった。
「・・・それはホントなの?渚さん」
俺は手を上げずに立ち上がった。
「待った。なんでそうなるの?理由があるんだろ?渚を犯人って決め付けるってことは」
「決め付けるって・・・!私、そんなつもりじゃ・・・!」
「じゃあ、どういうつもりなんだよ。この場で名前を出すってことはそういうことだろうが。ほら、そう思った理由を言ってみろよ。言えるもんならさ」
「・・・・・・・・・」
俺の怒りのこもった声に、発言した彼女は下を向き黙ってしまった。
クラスを見回すと、顔を合わせないように皆が顔をふせる。
「・・・渚」
小声で呼ぶ。目で許可を求めると、少し迷ってから決意した表情で頷く。そして、立ち向かうように背を伸ばした。
「・・・言えないのなら俺が代わりに言ってやろうか」
「!?」
数人が驚いたように顔を上げた。だが、すぐに下を向く。
「渚がいじめられてたからだろ。嫌がらせを受けていたからだろ。そんで、あいつらがその首謀者だったからだろ。渚の仕返しじゃないかって、そう思ってんだろ?」
「・・・え?そんな話、聞いてない・・・」
思わずといったふうに呟いた先生を睨みつけた。
「へぇ、気付かなかったんだ。言われなきゃ先生はわかんねーんだ」
「な、なんでそれを・・・!」
「言ってくれなかったのか?」
台詞をとると、先生は口をとじた。俺は睨みながら答えた。
「渚がそれを望まなかったからだよ。そんなこともわかんねぇの?」
「ほ、ほんとなの!?渚さん!」
「・・・はい、本当です」
「なんで言ってくれなかったの!」
「言って何になるんですか?どうせなくならないんです。それなら言わないほうがいいじゃないですか。余計な波はたてたくなかったんです」
(・・・単なる意地だろ)
俺は心の中でそう呟いた。
「・・・で?誰か、なんか言うやついる?渚を犯人扱いするやつはいるのかよ?」
教室は静まり返った。
「ってことで、先生、渚は犯人じゃないそうです。あ、渚に対するいじめの話はここだけの話にしてください・・・いいですよね?」
俺は先生の返事も見ずに席についた。
何人かの女子が泣いてるのを見て、舌打ちしたい気分にかられる。
(まるで自分達が被害者みたいな顔してんじゃねーよ。渚を苦しめたんだ、本当ならお前らの下駄箱にも入れたかったんだぜ)
俺は一人心の中で毒づき、外の青い空を見上げた。
結局、どちらの話もうやむやに終わり、次の日から無視はなくなった。しばらくはぎこちなかったが、そのうち元に戻った。




