花のイヤリング
ユキが俺の家に来てから五日目。
「ね、ここ行きたい」
「え?」
唐突な言葉に、目を向けた。指差す先にはテレビの画面。
ちょうど、近くに大きなショッピングモールが出来たらしい。
まぁ、近くと言っても、最寄りの駅から五つほど駅が離れているのだが。
「ああ、いいかもなー。じゃあ、明日にでも・・・」「明日じゃだめ!」
さえぎる強い口調に驚き、彼女の顔を見た。
自分の発言に驚いたような顔をしていた彼女がうつむく。
「・・・ごめん。いきなり、だったよね・・・」
「ううん、いいよ。そうだね、そこまで遠くないし。あまり長くはいられないだろうけど・・・いいよね?」
「ほ、ほんとにいいの?」
「うん、いいよ」
「やったぁ!」
無邪気な笑顔に心が浮かれた。
「わわ!」
人の波に押され、その圧迫感で思わず声を出した。慌てたようにユキが声を出す。
「ゆ、ユーキ!」
「え?・・・ああっ!ユキ!?ちょ、ちょっと待って!」
人ごみのせいで、どんどん離れていってしまう。急いで人をかき分け行こうとするが、なかなか近づけない。
「む、無理・・・!」
苦しそうな声が聞こえる。
(・・・まぁ、こんな人ごみの中だもんなぁ。苦しいのも当たり前・・・って、そんな冷静に考えてる場合じゃない!早く助けなきゃ!!)
「すいません!通してください!」
さっきより強引に人の波を割り、ユキの手を掴んだ。
「ユキ、だいじょ、うわぁ!」
さらに大きい波がきて、俺たちを押し流した。だが、手は離さず、なんとかその群集から逃れ、息を吐く。
「はぁ~・・・大丈夫だった?ユキ」
「う、うん。すごいんだね、ショッピングって・・・」
「いや、多分今日が安売りだからだよ。毎回こんなのじゃないよ・・・多分」
自信の無い口調。
(いや、だって、もしかしたら俺が知らないだけかもだし・・・)
「あ、あっち行ってみよ!」
「ああ、うん。そうしよう。まだ空いてるみたいだし」
そこはアクセサリーや小物を取り扱っているところだった。
こちらにも人はいるものの、セールなどをしていないせいか人は少なかった。
「可愛い!ね、ね可愛いよね!」
「うん、可愛いね」
猫のピン止めにはしゃいだ声を上げる。
ふと、アクセサリーに目を向けた。
(・・・あ、これ、ユキに似合いそう)
見つけたのは小さな花が二つあしらわれた耳飾り。
ピアスではなくイヤリングなので彼女もつけられるだろう。
(この値段なら買えるな・・・喜んで、くれるかな・・・)
驚かせようと思いこっそりと店員に渡した。
店員のほほえましい物を見るような目は少し恥ずかしかったが、ユキの喜ぶ顔が見れるなら些細なことだった。
「・・・彼女さんにでしょ?可愛く包装しとくわね」
「あ。は、はい。よろしくお願いします」
ばれないようにすぐにポケットに入れ、ユキの処へと戻った。
変わらない様子を見ると、どうやらばれてないらしい。
俺は安堵し、こみ上げてくる笑いを抑えた。
あー、明日テストなんですよねぇ・・・
憂鬱ですわぁ・・・




