三十話 「完璧人間」
「......」
「......」
あれから暫くして、優子たちはプライベートジェットの中だった。優子と大家姉は向かい合い、しかし互いの顔は見ずに、下を向いて黙り込んでいた。
「仕方ない」
その時、大家姉が口を開いた。
「は?何が?」
「お前は、完璧を考えすぎだ」
「どれもこれも、完璧にしてきたつもりはないですけど」
「それが完璧主義だってんだ」
「だから?あいつがああなったのは、元を言えば私がこの事業を始めたからですけど」
「違うぞ。元々私たちがしていた。あいつはお前に横取りされただけで、お前がいなくてもあいつはあそこにいた」
「何言ってるんすか、おかしい事言って。そもそも非番でしょ?」
「私が非番でも行かせる」
「論点おかしいよ......」
優子と大家姉は頭をかいた。
「もう、わからんが、全部が全部お前のせいじゃない。ひとまず、ちゃんと家に帰ってやれ」
「若者一人の未来を奪って、のうのうと生きてけってか」
「......それ、稚陽の前でも同じ事を言うのか?」
優子は嫌そうな目をした。
「それは......そうですよ」
若干目を逸らしながら言った。
「は!?お前さ!それは無責任なんだよ!」
優子の言葉を聞き、大家姉は怒涛のように立ち上がる。
「何が!家の事とやっちゃった事は別でしょ!?」
「あいつだって、お前のことを愛して心配で、それに娘もいる!それなのに、ヘナヘナヨロヨロしやがって。いつそんなへこたれたんだ、叩き直してやる!」
「......あの」
「「何!?」」
「まるで私が死んだみたいに言うの、そろそろやめてもらっていいですか?」
少し離れた先に、左肩を負傷している優子の同僚がいた。
「......だから何だよ。そんな肩になって」
「いいですよ。まだ利き手ではなかったので」
「何がいいんだよ?」
「そうだ!元と言えば、お前の怪我のせいだろ!こいつにどうにか言え!」
「えっ、えー」
一瞬、同僚は考えた。
「自分の失敗や罪で奥さんを捨てる人だとは、思ってませんでした。最低」
「......」
大分刺さった。
「泣く」
「黙ってください」
「反省しろ」




