二十七話 「奇襲策士」
「出たよー」
彩葉が風呂から上がると、燕はゴロゴロしながらスマートフォンをいじっていた。
「燕ー」
「ん〜?んー」
「お布団入ってー?そんなところで寝ないでー」
「寝てないもん」
「......!」
彩葉に稲妻が走った。そのお陰で酔いが少し覚めた。
「......かわいい」
「んー?なんて?」
「お布団」
(このまま押し込んじゃえ)
燕はされるがままに布団に乗せられた。
「......つばめ......」
彩葉は、燕の肌と服の間に手を入れる。
「!?」
その熱くも背筋が凍るような手つきに、燕の酔いは急激に冴えた。
「え、なに!」
「わっ!?」
燕の突然の大声に、彩葉の酔いも覚める。
「え......何してるの!?」
「ご、ごめん......つい可愛くて」
彩葉は、燕から少し距離を取った。
同時に、燕も後退りする。
「お、おう......」
「......ごめん、ムラムラする」
「は、え、は?」
「襲わせて」
彩葉は、獲物を狩る虎の如く前傾姿勢だ。
「は、駄目に決まってるでしょ!?あと私女!」
「関係ないよ、可愛いから」
「......もしかして、そっち系......?」
「そっちって?あぁ、そういう意味ね。わからないけど、多分昔から......女の子が好きかも」
彩葉は、燕の目よりも少し下を見て言った。
「......う、ちょっと待って。そういうの関係なしに、勝手に人を襲うのは駄目でしょ」
「......わかってるけど、無理だった、抑えられない」
「じゃあ、縛る」
「え」
燕は、台所に置かれていたラップフィルムを、彩葉の体にぐるぐる巻いた。
「ねえ!」
「黙って。これで抑えて」
そう言われるが、彩葉に我慢する気などない。彩葉は全力で千切ろうとする。
「うあああああああ」
「黙って」
何重にも巻かれたせいで、少しも変わらなかった。
「好き!付き合って!」
まるで、縛られてる事に興奮している変態のようだ。彩葉は止まらない。
「えぇ......」
「お願い」
「......付き合ったら、何するの」
「!?毎日えっ――」
「駄目、無理。無理無理」
「じゃあ襲う」
「はぁ?んー......」
脅しの二択に、燕は困った。
「付き合ってくれたら襲わないから」
「えー?じゃあ付き合うけどさ――」
「やたー」
(――ん?)
まだ少しは酔っていたので、自分の日本語を理解していないのであった。
「え、あ......」
「ありがと」
「違う!違うよ!?」
「えー。残念」




