二十五話 「戦犯」
夜、大家の部屋。
「早く出てけよ」
「......」
「......」
大家なんか無視して、安音と夕夢が睨み合う。
「......まじ何?」
「......何だろ」
「そろそろ勉強してもいいですか」
「だめ」
「は」
住人全員がその場にいた。
なぜなら、大家が同意書なんて面倒臭いものを作ってしまったからだ。
「早く同意して」
「全員が同意しないと改修出来ないんだ、かわいそ〜。でもね、同意書ってのは、拒否も尊重されるんだよ?」
「早く。無駄なのがわからないの?」
「無駄なのはこの紙じゃんか」
燕と彩葉は同意済みだ。琢磨は少し書いている。折れかけているのだ。
「やめなさい。赤子の首を絞めたくはないもの」
「何言ってるかわからないけど、豚舎だと思いながら勝手に暮せば?」
「......何よ」
「変に気にしちゃってさ。ぶひぶひ言っとけ」
「......」
「......何?」
「安ちゃん......」
「ちょっと言い過ぎですね」
「安音......そりゃ、ないだろ」
彩葉も琢磨も大家も、安音を怪訝そうな目で見た。
「......!なんで......私だけが悪いんだよ!」
安音は部屋を飛び出した。
「おい!閉めてけ......行っちまったか」
「え、てか――」
燕が口を開く。
「大家さんが悪くない?」
「え、何かしたか?」
「改修工事だって、勝手にやってれば争いなんて起きなかったことないっすか」
「まあそうだが......住んでるのはお前らもだし、勝手にするのもな......」
「はい他責ですか。意見を聞くなら、争いにならないように仕切らな」
「まぁ......」
「まあじゃないでしょ。......ハゲ」
「ハゲ言うな」
「戦犯でしょ、どうにかしたらどうです?」
「......確かに」
「そーだよー」
「泥だらけの墓地で眠るといいわ」
「っ、わかったよ、行くから」
大家は安音の後を追った。
「解散しましょう。今は精神のサンクチュアリが必要だわ」
「お疲れ様でした」
夕夢と琢磨も部屋を後にした。
「.....」
「......後で部屋来てよ。てかこの後」
「へ?」
彩葉が燕を誘う。
「な、なんで?」
「料理の続き、しよ?」
「......」
今宵、安音と大家はすれ違い、安音だけが大家の部屋に戻った。しかし誰も居なかったので、安音は丸型の机をひっくり返して鬱憤を晴らしたのであった。




