二十二話 「アパート戦争」
「右よーし!左よーし!進めー!」
「おー!」
「......なにこれ」
アパートの住人は、全員外に出て、何やら二つに分かれて争っているようだった。
「反対!」
何かに反対をしているのは、安音を始めとする一派。
「賛成!汚い、ボロボロ」
「おい、傷つくぞ」
賛成しているのは、夕夢を始めとする一派。
「何してるの」
「んー、ハゲちゃんが改修工事するって言うから、みんなバチバチなの」
見てみると、やっとそんなふうに見えてきた。
「絶対うるさいじゃないですか。勉強や睡眠の邪魔です」
「そうだ!そもそも、綺麗にしたって意味ないだろ!」
「勉強も寝るのも夜。昼間は居ないでしょ?工事は昼よ」
「うっ、確かに......」
「土日は昼も居るぞ!」
「確かに!」
「土曜は働きなさい。日曜はきっと工事をする人も休みだわ」
「確かに?」
「土曜日も休日だ!法律読め!」
「そうだ!」
「今回の工事で、隣の物音が気にならなくなるよ」
「な......?」
「それは罠だ!壁ごとの工事、丸々建て替えじゃないか」
「チッ」
凄く下らない争いである。
「燕ちゃんも成人だよね。お酒飲める?」
「多分。でも、飲む機会なんてなかったからわからない」
「じゃ、教えたげる」
彩葉はスッと燕に腕を回した。
「あ、あ!大家さん、大家さんは改修工事する派で?」
「......」
「ん?いや、しよっかなーって思ったくらいだ」
「なんで改修工事するって夕夢さんはこだわるんです?」
「さあ......」
「人が住むなら、それなりの『人間らしさ』がいるわ。そうでないと、豚舎と同じだもの」
「わっ」
「あるわ!十分あるわ!」
「そうだそうだ!」
「あなたたちは豚よ!」
ギャーギャー、ギャミギャミ――。
「......工事以前に、お前らが近所迷惑だあ!!」




