十話 「独身未婚の通話」
「ねえ、選挙のやつ見た?」
『......いや?』
安音はいつもよりわくわくしながら通話していた。
「選挙、票今年は多いんだよ!」
『へぇ』
「冷たいな!あ、それより優子、瑠璃ちゃん見せて」
『えー?今どこだと思ってるのさ』
「家じゃないの?」
『は?海外で仕事なんだわ、お前と違って』
「海外?あ、そっか......」
『養う家族がいるんだわ、お前と違って』
「それ以上は言わないでくれる?」
『結婚もしてて子どももいるんだわ、お前と違って』
「うええええええぇえん!」
今はもうじき夜八時。近所迷惑である。
『黙れ。大した移動もないんだし、簡単だろ』
「......そんな簡単じゃないよ」
『はぁ......野美子、結婚するんだってね。今更だけど』
「え!?」
『招待状来てたよ?大家さんも行くらしいけど、安音来る?』
「私それ貰ってない......」
『大家と同席のはずだよ?聞いてないならいいや。大家と結婚しとけ』
「は?」
プツ――。
電話の相手、優子は、それだけ言い捨てて電話を切った。
「......なんてやつだ......」
安音は、野美子の結婚式について、大家に尋ねようと思った。
なので、大家の部屋に向かう。
ピンポンピンポンピピピピピンポーン。
「おい、大家!」
ドンドンドンドン!
ガチャン、と勢いよく扉が開けられる。
「何だよ!?」
「野美子の結婚式何も聞いてないけど!?」
「は......もしかして、今日......!?」
「知らんわボケ。招待状ってどれだよ」
「あ、あぁ。三日前に来てたぞ。安音も居るなら誘ってって」
「三日前?家賃は期限に払わせようとするくせに、自分はちんたらやってんですね」
「すまなかったって。えーと、今取ってくる」
大家は駆け足で部屋の奥に戻る。
プルルル。
安音のスマートフォンが鳴る。
電話は優子からではなく、その妻の稚陽からだった。
「はい?」
『パパとね、ママが、安音おばさんに電話してあげてって言うから......』
「あ、瑠璃ちゃん!?カメラできる?カメラ」
『カメ......わからないママ』
電話の遠くから、二人の会話が少し聞こえる。
『はい』
「あ〜〜!大きくなってる〜!」
『早く寝てね?おやすみなさい』
「うん!お――」
プツ――。
(悪い意味で、親子似てる......?)
安音の頬に、一粒の冷や汗が垂れる。
「おい、持ってきたぞ......安音?」




