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kawaii研究所♡ラブ実験室  作者: 櫻木サヱ
研究所スカウト編

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8/18

恋の三角関係実験(崩壊編)

朝の研究所は、珍しく落ち着いていた。


警告音もない。ピヨ助も暴れていない。端末も正常。


「……逆に不気味ですね」


白石ももかはコーヒーを持ちながら呟く。


桃瀬りくはモニターを見ている。


「昨日の“感情干渉”の数値は一時的に安定している」


「安定って言われると安心するやつですよね、それ」


「だが、根本は変わっていない」


「安心しきれないやつですねそれ」


そこへ、田中ゆうたが軽く手を振りながら入ってくる。


「おはよー! 今日は平和そうだね」


「そのフラグやめてください」


ももかが即答する。


桜井教授が楽しそうに説明する。


「今日は“複数人間関係における感情安定性”の測定だ!」


「それただの会話じゃないですか?」


「違う! 科学だ!」


ももかは遠い目になる。


りくはため息。


「要するに三人で普通に話せということだな」


「普通って何ですかここでは」



テーブルに三人。


ももか・りく・ゆうた。


「最近さ、ここ慣れてきたよね」


ゆうたが笑う。


「慣れたくないです」


ももかが即答。


りくは淡々とコーヒーを飲む。


「適応速度は異常に早い」


「褒めてないですよねそれ」


そのとき。


ゆうたが何気なく言う。


「でもさ、ももかって昔から変わんないよね」


「それは……まあ」


ももかが少し笑う。


その瞬間。


りくの手がほんのわずか止まる。


モニターに表示される数値。


『感情反応:局所的上昇』


「……」


りくは無言で画面を見る。


ゆうたは気づかないまま続ける。


「昔からさ、転んでも笑ってるし」


「うるさいです」


ももかは軽く頬を膨らませる。


その表情を見た瞬間。


ピヨ助(再起動中)が小さく反応する。


「萌え反応上昇」


「またそれぇ!!」


りくはデータではなく、ももかを見ていた。


ほんの一瞬。


すぐに逸らす。


「……非効率だ」


「何がですか?」


ももかが聞く。


「この会話は」


「ひどくないですか!?」


ゆうたが笑う。


「相変わらずだね、りく先輩」


「先輩やめろ」


「え、そこ?」


空気が少しずつ変わる。


会話は普通なのに、どこか噛み合わない。


ももかはふと気づく。


(なんか……変な空気)


ゆうたはいつも通り。


りくはいつもより無言が多い。


教授は遠くでメモを取っている。


『三者関係:安定崩壊予備状態』


「予備って何ですか予備って」


ゆうたがふと笑って言う。


「でもさ、もしももかがいなくなったらこの研究所どうなるんだろうね」


「え?」


一瞬、空気が止まる。


ももかは笑おうとする。


「やだなぁ、急に何言ってるんですか」


しかし。


りくの視線がわずかに鋭くなる。


「……仮定として不適切だ」


「え?」


ゆうたは軽く肩をすくめる。


「いや冗談だよ」


でも、その“冗談”が一番揺れた。



りくは静かに立ち上がる。


「データ更新する」


それだけ言って歩き出す。


ももかはその背中を見る。


「……なんか今日、機嫌悪い?」


ゆうたは笑う。


「いつもあんな感じじゃない?」


でも少しだけ違う。


データ室。


桜井教授が楽しそうに画面を見る。


『感情干渉:局所暴走傾向』


「ふふ……いいねぇ」


ピヨ助が横で警告する。


「関係性構造に歪み検出」


「そう、それが欲しいんだよ」


教授は笑う。


「“恋愛”は安定しないから面白い」


夜。


廊下。


ももかが一人で歩いていると、りくが後ろから声をかける。


「白石」


「はい?」


振り向く。


少しだけ間。


「……今日の会話だが」


「はい」


「特に問題はない」


「それ毎回言いますね」


少し沈黙。


りくは視線を外したまま続ける。


「だが、今後も観察は続ける」


「観察って言い方やめてください」


「事実だ」


でもその声は、以前より少しだけ柔らかい。


ももかは小さく笑う。


「ほんと、変な人」


その言葉に、りくは何も返さない。


ただ一瞬だけ、足を止める。


その先で、ゆうたが遠くから見ている。


そして研究所のどこかで、教授が静かに呟く。


「そろそろ“実験”は終わりが近いかもしれないね」



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