萌えパワー爆発
朝のkawaii研究所。
いつも通り、いや、いつもより少しだけ騒がしい。
「警告:研究所内エネルギー値、異常上昇中」
「またですか……」
桃瀬りくは淡々とモニターを見ている。
ももかはその横で、すでに遠い目。
「私、もう原因って言われるの慣れてきました」
「慣れるな」
即答だった。
そこへ、桜井教授が嬉しそうに飛び込んでくる。
「今日は特別実験だ!!」
「それ毎日言ってません?」
「今日は“萌え安定供給テスト”だ!」
「嫌な予感しかしません」
教授が説明する。
「被験者の“自然な行動”によって研究所のシステムを安定させる!」
「つまり?」
ももかが聞く。
「普通にしてくれればいい!」
「一番難しいやつじゃないですかそれ」
りくがため息。
「逆に難易度が高いな」
実験開始。
ももかはカフェスペースでコーヒーを注ぐだけの役割。
「これなら大丈夫ですよね……?」
「問題ないはずだ」
りくが監視している。
しかし──
ももかがカップを取ろうとした瞬間。
袖が引っかかる。
コーヒーがスローモーションで宙に舞う。
「あっ」
沈黙。
次の瞬間。
バシャァァァ!!
システム端末に直撃。
「うわああああああ!!」
警報が鳴り響く。
『萌えエネルギー暴走』
「どうしてそうなるんですか!!」
ももかは泣きそう。
りくは冷静に見ている。
「予測通りだ」
「予測してたなら止めてください!!」
教授が興奮して叫ぶ。
「面白い! 次の刺激を試すぞ!」
ももかに指示。
「笑ってみてくれ!」
「え?」
「自然な笑顔だ!」
ももかは戸惑いながら笑う。
「えっと……こうですか?」
にこっ。
その瞬間。
ピピピピピ!!
研究所全体のモニターが一斉に反応。
『萌え指数:限界突破』
「えっ!?!?」
照明が一瞬落ちる。
端末がフリーズ。
ロボットたちが停止。
「システムが……落ちた!?」
りくが初めて動揺する。
「あり得ない……笑顔で全体停止?」
「私のせいですか!?」
「君以外に誰がいる」
「即答やめてください!!」
復旧中。
ピヨ助が突然起動する。
「警告。感情過多。制御不能」
「また壊れた!」
ピヨ助が回転し始める。
「萌え指数最大値検出」
「だからその指数やめて!!」
突然、研究所内のすべての機器が同期する。
画面が一斉に点滅。
『白石ももか:観測不能領域』
「え、なにこれ……」
ももかが後ずさる。
りくが低い声で言う。
「……システムが、君に同期している」
「は?」
「君の感情に反応している」
「やめてくださいそんなホラーみたいな説明!!」
そこへゆうたが普通に登場。
「おはよー」
「ゆうたぁぁぁ!!今来ないで!!」
しかしゆうたは空気を読まず笑う。
「なんか今日も騒がしいね」
ももかは安心して少し笑う。
「もう疲れましたよ……」
その瞬間。
研究所全体の数値が跳ね上がる。
『感情連動反応:最大』
「え」
教授が叫ぶ。
「これは……“共鳴型萌え現象”だ!!」
「なにそれ!!」
りくの目がわずかに細くなる。
(ももか単体ではない……周囲も影響されている?)
警報。
端末停止。
ロボット暴走。
照明点滅。
完全にカオス。
ももかは涙目。
「私もう帰っていいですか……?」
りくは少しだけ間を置いて言う。
「無理だ。原因だからな」
「やっぱりそれ!!」
混乱の中、教授だけが笑っていた。
「素晴らしい……これは想定外の進化だ……」
ももかのモニターにはこう表示されていた。
『特異個体:感情干渉型被験体』
りくが静かに呟く。
「……もはや“測定対象”じゃない」
ももかは不安そうに聞く。
「じゃあ、私は何なんですか?」
一瞬の沈黙。
ピヨ助が答える。
「定義不能」
「それ一番怖いやつ!!」
その夜。
研究所の電源は一部停止したまま。
ももかは廊下で座り込む。
「私、ただ普通にしてるだけなのに……」
少し離れた場所で、りくが見ている。
「普通、か……」
ゆうたは遠くで笑っている。
「まぁでも、面白いよね」
研究所は壊れかけているのに。
なぜか、誰も完全には止めようとしていなかった。




