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kawaii研究所♡ラブ実験室  作者: 櫻木サヱ
研究所スカウト編

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3/7

初めての恋愛実験

翌朝、ももかは研究所の仮眠室で目を覚ました。


「……ここ、どこだっけ」


白い天井。やたら静かな空間。横には「kawaii研究所・仮眠専用ポッド」と書かれたカプセルみたいな装置。


記憶が一気に戻る。


昨日──突然スカウトされて、変な研究所に連れてこられて、爆発して、煙の中で「面白いかもしれない」とか言われて……。


「いやいやいやいや、夢だよねこれ」


頬をつねる。


痛い。


「現実かぁ……」


ドアが勢いよく開いた。


「起床確認完了。遅刻0.3秒、問題なし」


桃瀬りくだった。昨日と同じ無表情。白衣はきっちり整っていて、まるで感情という概念がない人間みたいだ。


ももかは布団から転がり落ちる。


「え、えっと、おはようございます……?」


「今日は“初期適性テスト”を行う。恋愛実験だ」


「恋愛実験!?」


りくは淡々とタブレットを見せる。


画面にはでかでかとこう書かれていた。


『実験名:きゅん反応測定プロジェクト』


「な、なんですかこれ……」


「簡単だ。恋愛的刺激に対しての生理反応と行動変化を測る」


「つまり?」


「ドキドキしたらデータ化される」


「やめてくださいその科学の暴力」


そこへ、桜井教授がスキップで登場した。


「やあやあ新人くん! 今日から君には“恋愛萌え反応実験”に参加してもらうよ!」


「嫌な予感しかしません!」


教授はニコニコしながら説明を続ける。


「今回のテーマは、“日常的な胸キュン刺激に人間はどこまで耐えられるか”だ!」


「耐える前提なんですかそれ」


りくが淡々と補足する。


「被験者は恋愛刺激に対する“心拍数・表情・行動”を測定される」


「完全にモルモットじゃないですか!」


教授は満足そうに頷いた。


「では実験スタート!」

実験室に通されると、そこは妙に整った白い空間だった。


中央にテーブル。向かいに椅子が二つ。


「そこに座れ」


りくが指示する。


ももかが座ると、もう一つの椅子にりくが座った。


距離、30センチ。


近い。


「ち、近くないですか!?」


「通常距離だ」


「どこの世界の通常距離ですか!」


教授が叫ぶ。


「では開始! “目を見つめ合う”テスト!」


「えええええ!?」


りくは無表情のまま、じっとももかを見る。


完全に動かない。


逆に怖い。


ももかの心臓が妙に速くなる。


(な、なんでこの人こんなに真顔で見てくるの……!?)


顔が熱い。


心拍計がピピピッと鳴る。


『心拍上昇:+38%』


「反応良好!!」と教授。


「いや良好ってなに!?」


りくは小さく眉をひそめた。


「……顔が赤い」


「赤くないです!」


「いや、赤い」


「光のせいです!」


教授が嬉しそうに叫ぶ。


「いいぞいいぞ! 恋愛反応の典型パターンだ!」


「やめてくださいその分析!」

「次は物理接触だ」


「今なんて言いました?」


りくがペンを落とす。


「拾え」


「え?」


ももかがしゃがんでペンを取る。


同時にりくも手を伸ばす。


指が触れた。


一瞬だけ。


本当に一瞬。


なのに──


心臓が跳ねる。


「っ……!」


ももかが固まる。


りくも一瞬だけ止まった。


しかし次の瞬間、無表情に戻る。


「……接触時間0.4秒。反応値上昇」


「え、え、今の、何か計測されてるんですか!?」


教授がメモを取る。


「よし、データ完璧!」


ももかは顔を押さえた。


「これ恋愛実験じゃなくて拷問では?」


その時、扉が勢いよく開いた。


「ももかー!!」


田中ゆうただった。


「遅刻したー! ごめん昨日データ整理してたら寝ててさ!」


ももかは一気に安心した顔になる。


「ゆうたぁぁぁ!」


しかし──


りくの視線が少しだけ変わった。


「……新規被験者か」


「違う違う! ただの幼馴染!」


ゆうたは空気を読まずに笑う。


「いやーすごい施設だねここ! で、今なにしてるの?」


教授が即答。


「恋愛実験だ」


「へー! じゃあ俺も参加する!」


「やめて」


ももかとりくが同時に言った。


妙な間。


ゆうたは首をかしげる。


「え? なんで?」

教授がテンション高く言う。


「では三角関係刺激テスト開始!」


「誰が決めたんですかそのテスト!」


ゆうたが普通に話しかける。


「ももかってさ、昔から変なとこでドジるよね」


「うるさいです」


ももかが笑う。


その瞬間。


りくのモニターに異常値。


『未知の反応:測定不能』


「……?」


りくが初めて、ほんの少しだけ目を細める。


(なんだ、この数値)


ももかは気づかない。


ゆうたは笑っている。


教授は大興奮。


「未知の感情反応だ!! これは面白い!!」


研究所はカオスになり始めていた。

実験終了後。


廊下で、りくとももかが並んで歩く。


静か。


ももかがぽつりとつぶやく。


「私、やっぱりこういうの向いてないと思います……」


りくは少し間を置いてから言った。


「……向いてない方が、データが面白い」


「褒めてます?」


「事実だ」


少しだけ沈黙。


ももかは小さく笑った。


「なんか、変な人ですね」


「君ほどではない」


「ひどい」


でも、なぜか嫌じゃなかった。


その様子を、少し離れた場所からゆうたが見ていた。


「……あれ?」


そしてさらに遠くで、教授がノートに書く。


『恋愛実験:予測不能領域に突入』


研究所の空気が、少しずつ“恋”の方向へ歪み始めていた。

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