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kawaii研究所♡ラブ実験室  作者: 櫻木サヱ
感情は観測できない領域へ

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15/18

漏れ出す感情

研究所の空気は、昨日から微妙に変わったままだった。


白石ももかはそれをうまく説明できない。ただ「見られている」という感覚が、少し前よりも強くなっている気がする。


廊下を歩きながら、小さく呟く。


「なんかさ、最近ずっと疲れるんだけど」


返事はない。


桃瀬りくはすでにモニター前に立っている。


「起床確認。正常」


「正常って言葉、信用できなくなってきたんですけど」


りくは視線を動かさないまま言う。


「今日は感情漏出テストだ」


「もう言葉が怖い」


そこへ桜井教授が現れる。


「さあ!今日は重要な段階だよ!」


「毎回重要じゃないですか」


「今回は本当に重要だ!」


ゆうたが後ろから入ってくる。


「おはよー、今日はなんか静かだね」


「静かって言わないでください」


研究室に入ると、中央の装置はさらに変化していた。


以前よりも細かいセンサーが増え、空間全体を覆うように配置されている。


「これ、もう部屋じゃないですよね」


ももかがぼそっと言う。


りくは淡々と答える。


「観測空間だ」


「住む場所の概念捨ててますよねそれ」


ももかは椅子に座らされる。


いつもの位置。


ただ今回は違うのは、周囲の空気が少し重いことだった。


ピヨ助が静かに起動する。


「感情漏出測定開始」


ももかは嫌な予感がする。


「漏出って何ですか」


誰も答えない。


ゆうたが軽く口を開く。


「ももかってさ」


「その流れやめてください」


即答するももか。


ゆうたは笑う。


「いや、ほんと普通の話」


「普通がもう存在しません」


ゆうたは少しだけ間を置く。


「最近さ、笑う回数増えたよね」


ももかは一瞬止まる。


「……そんなことないです」


短く返すが、少しだけ動揺する。


その瞬間、装置が反応する。


数値が動く。


りくの視線がわずかに揺れる。


「反応確認」


ももかは気づかない。


「何もしてないです!」


りくは静かに言う。


「していないことが反応だ」


「意味わかりません!」


そのとき、りくが少しだけ近づく。


ももかは身構える。


りくは何も言わず、装置の調整をする。


指先がほんの少しももかの手元に触れる。


一瞬。


それだけ。


ももかの心臓が跳ねる。


「今の、必要ありました?」


りくはすぐ離れる。


「補正だ」


「補正って何の補正ですか」


ピヨ助が反応する。


「感情漏出値上昇」


「もうやだこの機械!」


ゆうたは少し笑う。


「なんかもう全部バレてる感じするね」


「何もバレてません!」


ももかは即答する。


しかし、装置は止まらない。


教授はモニターを見ながら小さく呟く。


「もう“内側”じゃないな」


ももかはその意味に気づかない。


ただ、自分の中の感情が少しだけ外に出ているような違和感だけが残る。


りくはモニターを見たまま言う。


「データは安定している」


「どこがですか」


ももかの声は少し疲れていた。


それでも研究所は、何事もないように次の測定へ進んでいく。

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