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カンディデイト・チルドレン~人柱の少女を救う術~  作者: 松平 ちこ


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第6話 状況確認、それぞれのランダム配布は?

「ああ、なら心配いらないな。エアとクレヴァーの二人は、スタート地点が遠いのか?

 まぁ狼煙を上げておけば、アイツらなら迷うことなく来れるはず……」


 ソロウはナップザックから、機能性表示食品の包み紙をちぎり取ると、集めた木の枝の真ん中に置く。


 その中央へ、ライターを近づけ火をつけた。

 ライターの火が、じわじわと指に熱を与え痛みを覚えるが、ソロウは構わず枝に火が着くようにと辛抱強く粘った。


 ――あっち。ああ、もう。つけ、つけ、つけ!


 ソロウは熱さに耐え、険しい顔で祈るように待ち続けた。やがてパキパキと軽くはぜる音が聞こえ始め、枝が赤く色づき火が着いた。

 ホッとひと息つきソロウは、熱さを払うように手を何度も振る。

 黙って後ろに居たティミッドから、ソロウは枝を受とり、焚き火になるように配置していく。


「これから、どうするの?」


 ウェアリーが、声をかけてきた。ソロウは火の番をしながら、少し考えて口を開く。


「……先ずはランダム配布がなんだったか、全員で把握した方がいい。持ち物によって、今後の行動が変わるはずだからな」


 いつものメンバーなら、あと二人足りない。だが現状でも、ここにはサイキを含め六人がいる。すり合わせは、しておくべきだろう。


「分かった。じゃあ、皆に声をかけてくるから」


 ――何がランダムだ。たく、厄介な。


 ここは無人島だ。十種はそれぞれが役に立つように思えた。だが、ダメだと思えるものも中に混ざっている。


 ソロウのナイフにしてもそうだ。先ほどの目印に、調理やなんだと便利に使える。さらには野生動物が襲ってきた場合、自衛に使える可能性もある。

 便利な反面、慣れない環境下での使用などは自滅のリスクでしかない。危険の方が大きかった。

 今後、極限の心理状態に陥った場合、火種となって輪を乱す可能性も大いにあり得た。


「捨てられたら、楽なんだがな」


 ソロウにとっては自業自得で済むなら、各自勝手にしろという話なのだが、それに他人を巻き込む場合は看過できなかった。

 そして、ナイフは利便が上回るために捨てられない。他にも、使い方によって危害のあり得るものはある。それらの悪用など、考えてもきりがない。


 ――仮にも数年を過ごした仲だ。俺にだって情くらいある。


 女子はエアが、男子はソロウが、VRにおいてリーダー的な位置づけとなることが多い。

 ソロウは元々、ハッカーをするほど知的欲求が強いこともあって率先して動く方だ。

 結果として周りに頼られても、それは悪い気がしなかった。


「はぁ……、一人で仕切るとか嫌なんだが」


 パチパチと燃える火を見つめていると、ウェアリーが皆を連れて来た。

 焚き火を囲うように、それぞれが腰を下ろしてその場に座る。


「ちっ。なんでボクが、お前らの言うことを聞かないといけないんだ。ふざけるなよ」


「シュルード、ボヤいても始まらないって。いつものことだ、頼むから協力してくれ」


 ソロウは焚き火が安定したのを見届けて、全員へ声をかけた。シュルードに舌打ちされたが、聞き流す。


「よし、全員、現状の把握をしよう。ナップザックの中には、食料が一日分、水がボトル一本、ウインドブレーカーが一着入っていると思う」


 そこで一旦言葉を区切り、ソロウは皆の服装を確認する。


「暑いとは思うが、半袖の奴はウインドブレーカーを羽織ってくれ。

 日焼け、虫刺され、森での探索における引っ掛けた時のケガ防止になる」


「そこまで必要?」


 訊ねてきたのはウェアリーだ。彼女の服装は、半袖シャツにスラリとした長ズボン、スニーカーだった。


「ああ。普段のVRならリアリティを求めても、デバフがかかるくらいで済む。けど、ここは命がかかってるとアナウンスがあった。

 詳細が分からない以上、実際に状態異常からの悪化による行動不能も考えられる。

 想定しておいても、損はないだろうと俺は考える。従うかは任せるけどな」


「そう、了解」


 ソロウの説明に一旦は納得したようだ。ウェアリーは、ナップザックからウインドブレーカーを取り出して着用した。


「次に、ランダム配布だ。これは全員で把握した方がいい。それから、拳銃が当たった奴は隠さず申告してくれ。俺たちが扱うには、危険すぎるから遠くに破棄したい。

 教員が言った救助まで、協力し合う上でランダムの開示は必須項目だろう。ちなみに、俺はナイフだった」


 初手として、ソロウはナップザックからナイフを取り出して皆に見せた。それを見てサイキが後に続く。


「私のはソロウが持ってるよ。なんだっけ、キラキラの」


「サイキのは携帯型着火装置、ライターだよ」


 焚き火の着火のために、ポケット入れていたライターをソロウは取り出すと、これも皆に見せた。


「おー、それそれ。ソロウは物知り」


「はいはーい。私はおっきな青いツルツルしたやつ!」


 ぱちぱちと拍手をするサイキの次は、快活な声でスライが、ナップザックから畳んだ状態の青い物体を掲げた。


「スライのはそれ、ビニールシートな」


 ソロウたちの時代では、必要がなくなって廃れたものの一つだ。


「アタシはタオルが四枚よ」


「えっと、僕は……なにこれ? 四角くて、分厚いの?」


 ウェアリーが、ナップザックから出すこと無く報告をする。共通認識出来るものは、確かに申告だけでも十分だ。

 ティミッドの方は、ナップザックを確認して首をかしげた。初めて中身を確認したのだろう。

 そっと中から取り出したのは、植物図鑑だ。


「それは本だな。中には植物に関する情報が詰まってるはずだ。アナウンスでは、食べられるとか言ってたな」


「なにそれ、面白そう!」


 スライが、興味津々でティミッドの手元を覗き込んだ。ティミッドの方はその距離に驚いて、顔を真っ赤にして慌てた様子だ。


「シュルードは?」


「……ボクは、タオルが一枚だ」


 ソロウが目を見てシュルードに話を振れば、彼はつまらなさそうにタオルを一枚取り出して見せた。


「えー、ウェアリーは四枚持ってるのに? 少なくない?」


「知るか。……って、くっつくな、鬱陶しい!」


 サイキがシュルードに絡みに行き、彼は不快感を露にしていた。

 荷物をギュッと抱え、シュルードはサイキを睨む。ピリッとした、険悪な空気が流れた。


 ――くそ、協力が不可欠だって、言ってんだろ。


「あれ? なんだか、変なタイミングで合流した感じかな?」


 ソロウが仲裁に入るかと立ち上がりかけ――木々の合間から、目を丸くしたクレヴァーが姿を見せた。


「いや、ちょうどいい。皆で所持品のチェックをしたところだ」


「なんだ、そういうこと。俺はロープだよ」


 微笑んだクレヴァーが、背負ったナップザックを指してそう告げた。

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