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カンディデイト・チルドレン~人柱の少女を救う術~  作者: 松平 ちこ


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第4話 その情報は、嘘か本当か

 VR舞台が、平成時代になるのは初めではなかった。当時はすでにネットが普及しており、歴史的文化も数多く残っていたからだ。

 情報が多いということは、それだけ再現性が高く汎用性があるということを意味する。


「時代に沿うなら、救助隊が来るまで生存をしていることが攻略条件、になるか?」


 不慮の事故で行方不明とは、構成上考えにくいだろう。乗っていたのは、自家用機ではなく旅客機の設定だった。

 管制塔と繋がっていたと見るべきで、同規模の事件が当時起これば、それはニュースにもなったはずだ。

 空高く立ち上る煙をソロウは見て、周囲にあるだろう陸から気づく可能性も考えた。


「なになに? いかだ作って、脱出劇したりしないの?」


「それ、いつの発想だ?」


 サイキの提案に、ソロウは若干引いた。あまりにも古すぎる考えに思えてならなかった。


「ひどい。ちゃんと本に載ってたもん!」


「ああ。かなり古いな、それ。

 俺たちの時代には本来、本はないんだよ。

 サイキ、無人島とアナウンスがあったが、それだけだ。周辺の島や陸の情報はなかった。

 その中で、船でもない、ただのいかだに乗るなんて、二次遭難になるだけならまだマシだ。ここでは最悪、ゲームオーバーだぞ?」


 ソロウの諭すような説明に、サイキは不満そうに頬を膨らませている。

 昔からいるこのバグ幽霊は、いったいいつの時代から存在するのか。不思議で仕方ない。


「ソロウの意地悪」


「いや、事実を述べたんじゃないか――って、なに持ってる?」


 ソロウが、サイキの手にあるものに気づく。彼女が持っているのは、ソロウと同じナップザックだった。


 ――サイキは今まで、存在だけしか許されてなかった。VRと互いに干渉しあっているなんて知らないぞ。


 お助けキャラというわけでもない彼女は、記憶にある限り、VRにその参加券が与えられていなかった。

 各課題がVRで出された時も、人数のカウントに入ったことがないのだ。


「サイキ、ナップザックの中身を見せてくれるか?」


「いいよ。んー? お菓子? と水、打掛?」


 ――お菓子は機能性表示食品として。ウインドブレーカーを打掛って、せめて上着と言え。お前、ホントに何歳だよ。


 ソロウは呆れながらも、全く同じ荷物を持つ驚きの事実に動揺を隠せなかった。

 サイキは参加者としてナップザックを与えられて、確かに目の前に存在している。


「あとは、これ……なんだろう? キラキラしてきれいだね!」


「だぁ!? 危ない、触るな。ライターだよ、それは!」


 サイキの呑気な声に、ソロウは慌ててライターを奪い取った。プラスチック性のちゃちな作りの携帯型着火装置だ。

 幽霊ぽいサイキが、燃えるかどうかの事実はさておき、危ないの一言に尽きる。


「……サイキ、俺がこれ持ってていいか?」


「私、使い方なんて分からないし、いいよー」


 ――軽い、軽いぞ、ノリが。


 へらりとして明るい雰囲気をまとうサイキは、暗い空気を払拭するには良いのだが、緊張感が無さすぎる。

 常に危ない橋を渡ってばかりのハッカーであるソロウに、影響はないのだが。


《――あ、あ、あー! 皆さん聞こえますか、大丈夫ですか!?》


 ザザッとノイズ混じりに、聞き覚えのある音声が響き渡った。電波が悪いのか、かなり聞き取りづらいものだ。


「あ、いつもの声だね~!」


 けれどサイキの言う通り、それはいつもの女性教員の声だった。

 異常事態に必死に対応したと思えば、不思議ではないタイミングではあった。


 ――仕様による演技か、本当に事件か、どっちだ?


《皆さん、落ち着いて聞いてください。何者かに、このVRがハックされ、乗っ取られました。

 現在、他の教員が対応に当たっています。

 先ずは、生存を第一にVRを生き延びてください。皆さんは現在、ログアウトが出来ません! 安全装置が外れてますので注意してください!》


 焦りの混じる声からも分かる通り、かなりひっ迫した状況のようだ。やはり、何かしらの問題が発生したのだと思うのが妥当だろうか。


 ――そういう設定、ではないよな?


 VR内では情報が酷く制限されており、なんでも鵜呑みにするのは危険だ。ソロウはついそう疑り深くなってしまう。

 現実で禁止された行為全てが、過去では可能となればそれもしかたないだろう。


 だが、ノイズ混じりにわずかに教員の声とは別に周囲のざわめく音が、ソロウには聞こえていた。これが演技とは、思えなかった。


 ――VRに全身接続してると言っても、制限があるからな。


 現実世界なら、ソロウは相手にハッキングし返すことも、閉じ込められた者たちをログアウトさせることも出来たかもしれない。それだけの実力を自負していた。

 手元に相棒とも呼ぶべき端末がない今は、ただの無力な子どもだったけれど。


《従来の設定通りに従えば、墜落現場にある飛行機を目指して、救助隊が向かう手筈になっています。

 救助隊に救出されれば、このゲームはクリアのはずです。現在、アクセス権を取り戻すべく教員が尽力しています。

 安全を確保しつつ、皆さんは墜落現場を目指してください。

 墜落現場は、大きな飛行機の残骸が目印です。破片などではありません。間違えないように、気をつけてください!》


 ソロウは、目の前の残骸を見る。潰れた先頭部に、胴体部分が半分ほど残っている。

 片翼と船尾は見当たらないが、どう見ても一番大きな残骸だろう。


「ちょうどライターもあるしな。目印がてら、近くで火を起こすか」


 ふむと考えて、ソロウは目先の行動を決めた。すでに受動的になるしかない状況だった。

 不愉快極まり無かったが、これといった情報もなく、今は言いなりになるしかない。


 ――サイキのようなバグやイレギュラーな手がかりを集めれば、あるいは……?

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