表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンディデイト・チルドレン~人柱の少女を救う術~  作者: 松平 ちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/27

第17話 三日目の朝、それぞれの向かう先

「あれ? この食料はどこから?」


 おはようと、目覚めたクレヴァーが焚き火に近寄り、広げた毛布の上にある食料や飲み物に目を向けた。


「飛行機の残骸から、ちょいとな」


「灯台もと暗しか。ソロウは、抜け目無いね」


 いたずらっぽくソロウが返すと、クレヴァーが笑う。目元が赤く腫れているが、思いっきり泣いた分、吹っ切れたようだった。


「んー。寝たらスッキリしたっ!」


 大きな明るい声が、テントの方からも聞こえた。少ししてスライが走ってくる。

 彼女は目の前に並ぶ食料を見て、目を輝かせていた。


「わぁ! なにこれ、美味しそう!」


「待て待て、皆が集まってからにしろ。好きなの食べていいから」


「ええー、お預け!? 言ったなぁ。後からダメって、無しだからね!」


 よだれを垂らしそうな勢いのスライを、ソロウが宥めて近くに座らせた。


「おはよう。毛布があるなら、もっと早く出してほしかったな」


 あくびを噛み締めがら、ウェアリーがエアと一緒に歩いてくる。


「そう言うなよ、ウェアリー。今朝見つけたんだよ。人数分あるから、後で配る」


 客席の方からも、燃えてない毛布を集めておいて正解だったらしい。今日からは寝心地の改善が見込めそうだった。


「ソロウ、ティミッドが熱を出したと思う」


「怪我か? 病気か?」


 エアが後ろを指して報告してくるのに対し、ソロウもさらに訊ねた。どちらかによって、対応の仕方も変わるからだ。

 ティミッドは、雑魚寝のまま起きてくる様子は無い。


「見た感じ怪我は無いね。たぶん昨日のストレスだと思う」


「あー。感染のリスクがないなら、まぁ」


 そう言いながら、ソロウはナップザックを取り出す。救急キットを回収していたと、思い出したからだ。


「……冷却シート。これで、辛さが少しはマシになるだろ。あと、誰か側についてた方がいいな」


 冷却シートと、栄養のための缶ジュースを持ち、ソロウが考え込む。今後の方針を決めるのに、ソロウは中心にいたかったからだ。そこへ手を上げたのが、ウェアリーだった。


「アタシがついてる。貼るだけでいい?」


「ああ、首筋か額に貼ってやれ。あと朝食分に好きなの持っていってくれ」


 看護セットを手渡してソロウが言うと、ウェアリーは菓子パンを二つ選んで、テントへ向かった。


「シュルードは要らないって」


「……エア、よく声をかけれたな?」


 ウェアリーと入れ替わりに、シュルードの方へ行っていたエアが戻ってくる。

 それに、ソロウは素直に感心した。同じことをしろと言われても、正直やりたくないからだ。


「パンやジュースがあるよって、言っただけだよ。普通でしょ?」


 ケロリとして、エアが軽く答えた。全員の体調を確認し終えたからだろう。空いたスペースに腰を下ろしていた。


「僕も、あのシュルードに声をかけるのは、勇気要るなぁ」


 クレヴァーが遠目に見て、苦笑いを浮かべていた。


 ――いつも以上に、ずっとブツブツ言ってて不穏すぎるよな。


 口には出さず、ソロウも思う。まだ、そっとしておいた方が無難かと考えていたからだ。けれど、エアは違ったようだ。


「ああ言うのを一人にしとくのも、ね。構いすぎるのも、確かに危ないけど。とりあえず、また後で食事は届けてみるよ」


「じゃあ。まぁ……それはエアに任せるとして、ほら、スライ。好きなの選んでいいぞ」


「やったー! ありがとう。ソロウ」


 空元気が当てはまるだろう。いつも以上に明るいスライへ、朝食選びの一番を譲る。嬉々として、パンとジュースを選んでいた。

 その後に、クレヴァー、エア、ソロウが順に選んでいく。


「で、これからどうするんだい?」


 パンを口に運びながら、クレヴァーが話を切り出した。


「拠点を移すかどうかの話は、昨日エアとしていたが……」


「ティミッドを動かすのは得策じゃないね。先に拠点を作ってから、折を見て移動の方がいいかもしれない」


 ソロウがエアに話を振れば、現実的な妥協案としてエアが進言した。


「え、移動するの?」


 それに、スライが驚きの声を上げる。


「ゲームを生き残るためにな。海の方へ出てみる案があるんだよ。その時はまだ、この食料も無かったしな」


 ソロウが説明を続けて、クレヴァーとスライを見た。

 昨日の今日だからこそ、十分な朝食を振る舞った。昼や夜は各自の様子を見て、また適切な配分にすることも、ソロウは視野に入れていた。


「海かぁ。魚だっけ、あれっているのかな?」


「いたとして君、泳ぐのかい? それとも釣るのかな?」


「皆、捌けるの? すごいねぇ、魚だって血が出るのに」


 スライの一言に、クレヴァーが茶々を入れた。サイキがそれに混ざって、楽しそうに笑っている。


 ――サイキ。不穏なの止めろって、やっと持ち直したんだから。


 ソロウは冷や冷やしながら、成り行きを見守る。ふと、シュルードの方へ視線を向けると、ゾクリと背筋が冷えた。


 離れたところから、シュルードがずっと見ていた。

 ナップザックと膝を抱えて座り込んでいる。その暗く淀んだ目を皆へ向けて、不快そうに睨んでいた。


「なんで笑ってられるんだよ、状況を見ろよ。バカなんじゃないのか。昨日あんなのを見ておいて、それで平気なのか。

 食べられるなんて、おかしいだろ。あり得ないだろ、閉じ込められてるのに。

 出られるか、分からないのに……」


 ブツブツと呟く声は、朝の冷たい風にさらわれて誰の耳にも届かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ