16 終了
「はぁ……」
「あ、あの…オリビオ様」
「うむ…示しがつかないのは解っている」
溜め息が止まらず、頭を抱えながら指揮を執る。
しかし既にオリビオの頭の中では『敗北』の2文字が重たくよぎる。
(初動の戦力差が響いたな…戦力を小出しにしていたせいで物量に押し負ける)
大橋の戦い、ヘリオスとカロンを筆頭に善戦はしてくれたが、どうしても数の差に負けて押し留められなかった。
ヘリオスには先へと行かせたが、流石に妨害工作もあり旗を一つとったが、他2つがまだ取れない。
カロン隊も孤立しながら戦っているが半数以上は既に退場。現在残った面子も足止めに特化した魔法使いによって身動きが取れない状況。
浮かべた水球に目を向ける。【千里眼】の魔法水…水球に映った物を他の水球に映すことで遠見を行う魔法にて、敵の進軍に合わせてこちらも対応するように水を操るが、相手も魔法使いである、対応が早くまた数の多さに後手にまわる。
「オリビオ様!塹壕を抜けられました!直に来ます!」
そう報告してくれた彼の背後に得意の魔法を矢のように変えて付き従える集団が現れた。
数は30程である。こちらの守りは私がいるからと少なめの20名…。
「これ以上は無駄だね」
(さて…どう彼らに謝ろうか)
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「しゅーーーーりょーーーーー!!!!!!!!」
「ぬぅ!」
「む…!」
互いに拳を相手の頬に打ち込んだ姿勢で止まる。
「終わった…」
「ああ…そのようだな」
ヘリオスとガンドルフはその言葉の後にまた腕を持ち上げファイティングポーズをとる。
「なら決着は次の拳か」
「互いにそれで倒れると思うか?」
「フフフ〜言うではないか!」
「「いざ!」」
「いざ…じゃないわ!もう終わったんだよ」
乱入者の言葉に今度こそ二人は止まった。
「カロンか、遅かったな」
「オウョ…悪かった、手間取って助けに行けへんかった」
「あれだけの物量差があったのだ…退場しなかっただけでも誇ってもよいぞ」
「ハン、偉そうに…まぁ勝者にそんなン言われたらな…」
「元より不平等な組分けだ…貴族側の多い我々が有利になるのは当然だ………まぁ、勝ったことだけを見るような者は後が続かぬだろうがな」
「?」
「それよりもだ」
赤髪の大男はヘリオスの肩に手を置きグイッと身体を寄せる。
「気に入った!!我と殴り合える者など今までおらなんだ!汝とならより強く、我を磨くことができるであろう!!」
「???」
「いやー以前の打ち合いでも強いとは感じたが、やはり強かった!」
疑問符を浮かべ、バシバシと肩を叩かれ瞠目するしかないかった。
「そして汝ら!名は!」
ぐるんと首が曲がりカロンと後の2名へと興味が移る。
「…カロン」「ピエールです」「リンと申します」
「うむ…フフフ〜やはりここに来て良かった…楽しみが増える〜フフフ〜」
ヘリオスは思った。
(何だコイツ)
カロン達3人は思った。
(((うわー面倒くさい)))
「では!第二戦を始めようではないか!我は多対一でもよいぞ〜」
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後に他の同期たちと合流した後に全体で号令を受けた。
「皆、よく頑張りました!今回の演習での反省点は各々で考えているでしょうが、それは一旦置いておいてもらいますぞ!」
グスタフさんは満足げに頷きながら言葉を続ける。
「今日はこのままここで野宿となります、必要なものは用意していますので各自でテントの設営を行ってもらいます…一応言っておきますが、男性陣と女性陣は川を挟んで別れてもらいますが、食事は男性陣側で用意させてもらいますぞ〜では、解散」
その後、テントの設営を行い始める。
ヘリオスは父達と行動を共にしていた時から慣れたもので杭を打ち込み、紐を結びと段取りよく設営が終わった。
早くに終わり、手持ち無沙汰になった。
自分の他にもカロンやピエール等、地方上がりの者達は設営が既に終わった者達が多く、貴族出の者達は四苦八苦していた。
少し考えヘリオスは、近くにいた設営に難儀している者の手伝いをしていくことにした。
ヘリオスの行動の後に、カロンや他の者達も同じように行動をし始め、暫くの後に全員のテント設営が終わる。
先輩騎士達は既に大きなテント設営を行い、そこで巨大な鍋に食材を入れ調理をしていた。
そして、日が陰り始めたあたりで女性陣が合流をし皆で食事を開始した。
器の中に浮かぶ巨大な肉のブロックと野菜が溶け込むまで煮込まれたスープは胃袋を温めとても満たされるものだった。
「君、名を何と言うのだ」
「あ゛ん?…オレはカロンだが…あんたは?」
「そうか、私は君に胸の玉を砕かれた者だ…君と君と一緒に居た2人に話がある」
「…なんだ?」
食事をしていたら近くにいた者の声が聞こえてきた…カロンから警戒するような声音が聞こえた。
「君たちの戦い方を教えてくれないか」
「─は?」
呆気に取られた声が漏れたカロンは、返答しようと口が動く前に横から別の者が乱入する。
「僕も貴方に玉壊されちゃったんですが!貴方途中で魔法を切って打ち返したりしてましたよね!どうやったんですか?」
「あっ!私も聞きたいことが!」「俺も!」
「君達!最初に声をかけたのは私だぞ!」
「お…おぅ…?」
「頭、しっかり頭…」「カロン…慣れてないから固まっちゃった」
「貴女!」
「はっはい!」
「貴女、ベッタ・メルクリン様でしょ?」
「はい…そ、そうです」
別の声が聞こえる。
「あたし、メルクリン子爵から推薦をしてもらい、ここに来ることができたんです」
「そ、そうだったんですか」
「はい!まさかお嬢様がいらっしゃるなんて知らなかったです!…あっ、急に話しかけて不味かったですか?」
快活な女性がベッタと会話していたが、ベッタの様子を見て少し顔が青くなる。
「い、いえ、わたし…あんまし人と話すのは得意ではないのですが、その…話しかけてくれて、ありがとうございます」
「……かわいい」
「へ?」
「…いえ」
ふむ…どうやら何も問題はないようだ。
「聞いているのかぁ…ヘリオスぅ」
「聞いている、先ほどから同じ言葉の繰り返しだが」
「そうか…まさかさ、一気に来るとは思はないじゃないか」
「そうだな、処でオリビオどこで酒を調達したんだ」
「酒ぇ? 私は酒など呑んでぇ……なぃ…」
ガクンと首が曲がり倒れそうになったオリビオを支える。
「オリビオー!オリビオー!」
「……ぐぅ」
「おう!ここにいたかヘリオス!」
「ガンドルフ………オリビオに酒を飲ませたのは貴様か」
「おう!…まさかネレイスの貴公子が酒が駄目だったとは知らなんだ」
グイッと葡萄のラベルが貼られた酒瓶を仰ぐガンドルフ。
「どこで手に入れたんだ」
「グスタフ殿がコソコソ荷物を漁ってたから声をかけたら貰ったのだ」
「………グスタフさん…」
以前一緒に食事をした時もあの人結構飲んでいたが、酒好きだったのか…親父と気が合う理由だ。
「飲むか?」
「酒は苦手だ」
「そうか、旨いんだがなぁ」




