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姿なき狩人  作者: 二条路恭平
プロローグ

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ルースレス

カワサキがパジェロミニを停めた場所へ向かう途中、倒した全ての死体を回って武器として使えそうな物を回収していった。

その結果、9×18ミリメートルマカロフ弾が15発と手榴弾2個を確保できた。これから相手となる3人がどの程度の戦闘スキルを持っているのかは未知数だが、AKS74小銃にマカロフ拳銃と手榴弾が補給できたのであれば、カワサキも何とか対応できそうである。

ただし、小銃とマカロフ拳銃の着弾傾向が掴めていない。小銃については実際に射撃しながら修正するつもりであるが、マカロフ拳銃については15発の予備弾薬があるので、パジェロミニを停めた地点に近付く前に試射をしてみた。概ね10メートル離れた樹木の幹を狙って2発を発砲してみたが、2発とも幹に命中せずに、樹木の左斜め後ろに自生している草丈の高い雑草の葉を揺らしている。高さ的には大丈夫のようだが、左右のずれが10センチメートル程ある。手にしているマカロフ拳銃の照準は、簡単にアジャストができる作りにはなっていない。一瞬、カワサキは照門を叩いて調整しようと考えたが、身近にある道具は石ころしかないので、無理に照門を叩いて調整するよりも実際に発砲する際に修正して狙った方が、今の状況では正しいと判断して照門を弄ることを辞めた。

プレシジョンライフル銃にAKS74、更にM&P5.7拳銃とマカロフ拳銃に手榴弾2個を携行して舗装されていない山道の移動は、流石にカワサキにも体力的に辛かった。目の前の尾根を越えればパジェロミニを停めた地点へは下り坂となるので、一旦担いでいた荷物を降ろすとショルダーバッグから昼食用に購入したビスケットタイプの栄養補助食品とペットポトル入りのスポーツドリンクで空腹を満たして、暫しの休憩をして胃に入れた食べた物が落ち着くようにした。

ショルダーバッグとソフトケースを担ぎ、左手にAKS74を持ち、マカロフ拳銃はベルトに差してカワサキは、ゆっくりと歩き出す。ただし、真っ直ぐにパジェロミニの方へ向かうのではなく、なるべく木立の陰を使い周囲に注意を払いながら慎重に進む。

丁度、尾根を越えた辺りで地面から数センチメートル程の高さにワイヤー電極線が張られているのを見付けた。やはり、周囲にはトラップ爆弾が仕掛けられているのだろう。最初、トラップ爆弾を解体しようと考えたカワサキであったが、近くには3人が潜んでいる状況では解体中に襲撃されたのでは対処のしようがないので、そのままにして相手を探すことにした。

徐々にパジェロミニに近付いているが、今のところ相手と遭遇していないし、それらしい気配を感じることもなかった。そうなるとパジェロミニを停めた場所とは反対側に3人が潜んでカワサキの姿を認めたら一気に片をつけるつもりなのだろう。

カワサキは、パジェロミニの近くに繁っている雑草に身を隠して担いでいたソフトケースを降ろすとソフトケースからライフル銃を取り出し、更にソフトケースのサイドポケットから箱型弾倉も取り出すと、ライフル銃にセットした。

ライフルスコープの倍率を若干上げて、周囲に溶け込んでいるものの僅かな違和感を見付けた上で発砲しないことには話にならない。手榴弾に余裕があるならば、怪しげな箇所に投げ込むという物量作戦が効果的なのだが、カワサキが回収したのは2個のみなので、安易に投げ込んで効果がなければ自らの首を締めるようなものであるから、そんな作戦は取れない。

カワサキは、ライフルスコープの倍率を4倍にしてパジェロミニを停めた場所の反対側を覗き始めた。暫く雑草が生い茂っている辺りをスコープ越しに覗いているとカラシニコフ小銃の銃身部分を発見した。しかし、暫く見ているが銃身部分は微動だにしない。如何に、安定した姿勢で小銃を構えたにしても、少しも動かないのは余りにも不自然過ぎる。そこで、カワサキはライフル銃を脇に置くとベルトに差していたマカロフ拳銃を左手に握るとカラシニコフ小銃の銃身が見えた辺りに3発連続で発砲した。マカロフ拳銃を発砲したカワサキは、そのままの位置に留まることなく茂みを楯にして3メートル程を横に移動した。

案の定、カワサキが3発のマカロフ弾を放った辺りには反応がなかったが、まるっきり別の3方向からマカロフ拳銃がカワサキが3発を放った辺りに向かって発砲してきた。

それを避難した場所から見ていたカワサキは、急いで2個の手榴弾から安全ピンを引き抜くと3方向の両端へ投げ込んだ。手榴弾が地面に落ちると相次いで爆発する。

手榴弾の爆発が落ち着くと叢からは男性のうなり声が聞こえ雑草が不自然に揺れている。少なくとも1人は手榴弾の爆発で負傷したのであろう。

カワサキは、負傷した人間を後回しにして、残りの2人から攻撃力を奪うべく、最初にAKS74を構えるとカラシニコフ小銃の銃身が見える辺りに5発程速射した。

5発を放ったうち、少なくとも1発は相手に命中したようで叢の中からうめき声が聞こえてきた。それと同時に、別の方向からマカロフ拳銃の発砲音が聞こえるとカワサキの左耳朶辺りが一瞬熱くなり、次いで左耳が一時的に難聴状態になった。相手が放ったマカロフ弾がカワサキの左耳朶を掠めたに違いない。だが、そんな状況を気にすることもなくカワサキはマカロフ拳銃の発砲音がした辺りにAKS74から10発程を掃射した。

カワサキの手応えとしては、少なくとも2~3発が命中したような感じがするが、雑草がブライドとなって相手の状態を目視することができない。仮に、相手に何事もなければ何らかのアクションをとってくるはずである。

そこで、改めてカラシニコフ小銃の銃身が見える辺りに5発の連射を放ってみると、僅かなうめき声が聞こえきた。更に、手榴弾の破片により負傷したと思われる男は、何とか移動しようとしているのか、周囲の雑草が揺れ動いている。

そこへカワサキは、カラシニコフ小銃の弾倉に残っている10発を全て連射した。今回も数発が命中した手応えがある。その証拠に弾丸が着弾した後は、まるっきり雑草に不自然な揺れがない。

暫く様子を伺っていたカワサキだが、いつまでも小康状態のままではいられないので、カワサキは思いきって3人が潜んでいた辺りに行ってみようと考えて腰を浮かし掛けたとき、カワサキの視界にカラシニコフ小銃の銃身が見えていた辺りが過ったが、カラシニコフ小銃の銃身が見えなくなっていることに気付いた。

可能性として、カワサキが放った弾丸がカラシニコフ小銃を固定していた紐かワイヤーを切断したために地面に落ちたと考えられるが、現時点ではカラシニコフ小銃の近くにいた相手が、撃たれた演技をしてカワサキが他の相手に集中している間にカラシニコフ小銃を手に取って、カワサキを銃撃しようと狙っていると考えた方が正しいと思えるので、近くの太目の幹を楯にして、ソフトケースからライフル銃を取り出すと、ライフル銃に取り付けている消音器の先端で1メートル程離れた雑草の根元を揺らしてみた。

やはり、カワサキが警戒したようにカラシニコフ小銃の銃身が見えていた辺りから離れた場所から特有の発砲音が聞こえるとカワサキがライフル銃で雑草を揺らした辺りに全て着弾すると弾丸によって千切られた葉が周囲に散らばる。

カワサキは、ライフル銃をニーリングのポジションで構えるとスコープで発砲音が聞こえた辺りを丹念に覗き込む。僅かに雑草が揺れたように見えたが、カワサキは一瞬風の影響かと思ったが、揺れた周囲の雑草に動きがなくカワサキが潜んでいる辺りにも風を感じない。間違いなく相手が動いていることで雑草が揺れいると確信して、どの方向へ雑草の揺れが移動するのかスコープ越しに凝視する。

カワサキから見て右側に雑草の揺れが移動しているのが分かったカワサキは、雑草が揺れいる辺りと雑草の揺れが移動するであろう地点にライフル銃を速射した。そのスピードは、1発目を撃ち終わるとカワサキが左利きということもあり左手でライフル銃を構えたままの状態で、右手で遊底捍を握ると遊底を操作して1発目の空薬莢を排出するが、その空薬莢が地面に到達する前に2発目が放たれているくらいである。

カワサキが、遊底を操作して2発目の空薬莢を排出して薬室に3発目を装填し発砲準備が整った時には、カラシニコフ小銃が地面に落ちたような金属音が僅かだがカワサキの耳に届いた。

意を決したカワサキは、ライフル銃のスコープのキャップを閉じて箱型弾倉を装填したまま、ソフトケースに仕舞いホルスターに入れているM&P5.7拳銃を左手で掴むとパジェロミニを停めた反対側の傾斜に近付いてみる。身を隠す場所が何処にもない未舗装路に出た時が最も緊張したが、カワサキに発砲してくる者は誰も居なかった。

反対側の傾斜に自生している雑草に分け入ってライフル銃で仕留めた辺りに行ってみると、撃たれた相手は首から上が消失していた。その死体の脇にはカラシニコフ小銃が落ちている。カワサキは、そのカラシニコフ小銃を手に取ると弾倉を外して森の奥へ投げ捨てた。その後、周囲を探し回ると2人目は心臓付近を撃ち抜かれ絶命していたようだが、3人目は腹部に着弾した跡があり、未だ絶命とはなっていないようで小さなうめき声をあげている。カワサキは、相手との距離を詰めることなく無言でM&P5.7拳銃を相手の頭部に向けて発砲して止めを射した。

3人の死を確認したカワサキは、身体全体に疲労を感じながらパジェロミニに向かう、

外から運転席ドアの窓から内部を覗くと案の定、運転席と助手席の内側取手に手榴弾が固定され、両方の安全ピンが1本のワイヤー電極線で繋がれており、どちらかのドアを開ければ安全ピンが抜けて爆発するようになっている。ただし、後部のラゲッジドアには何ら細工がされていないようなので、カワサキは後部のラゲッジドアを開けて車内に入ると、パジェロミニに積載している道具箱からニッパーを取り出して、車内に仕掛けられたトラップ爆弾の解体を始めた。

最初に、助手席側の取手に固定された手榴弾の安全ピンに固結びで結わえかれたワイヤー電極線をニッパーで切断する。これで意識的に安全ピンに手を掛けて抜かなければ手榴弾が爆弾する危険性がなくなったので、助手席を開けてからカワサキも外に出て作業スペースを広くしてから、内側の取手に固定された手榴弾を外し始めた。取手と手榴弾を何重にも巻き付けているワイヤー電極線をニッパーで切断してから丁寧にワイヤー電極線を取り除くと、手榴弾は内側の取手から外れた。外した手榴弾は助手席の上に置き、最初に切断したワイヤー電極線を運転席側に固定された手榴弾の安全ピン近くで切断し、切断したワイヤー電極線を車外に捨てる。特に、運転席にはハンドルがあるので作業スペースが狭いために、運転席ドアを開ける時も車内からではなく、カワサキが外に回ってドアを開けた。そこから先は、助手席の手榴弾を外したのと同様に行い取り外した手榴弾は、1個目と同様に助手席の上に置いた。

そこまでの作業が終わると、後部のラゲッジドアを開けてショルダーバックとソフトケースを荷台に積み込む、右肩には未だ痛みを感じるが、出血自体は止まっているようなので本格的な手当てはアジトに帰ってから行うことにして、パジェロミニのエンジンを掛けようとしたが、一瞬嫌な予感が過りエンジンフードのロックを外してエンジン回りを確認するとエンジンスターターに手榴弾が固定されていた。気付かずにエンジンをスタートしたら、安全ピンが外れて運転中に爆発していたのだ。パジェロミニのラゲッジルームに仕舞った道具箱を取り出してセットされたトラップの解体作業を始める。暫く格闘すると手榴弾を取り外すことができたので、他の手榴弾と同様に助手席の上に置いた。

パジェロミニのエンジンをスタートさせて車体を帰る方向に向けてから少し前進させた所で一旦パジェロミニを停めて、助手席に置いた3個の手榴弾を右手に持つと歩いて3つの死体が転がっている辺りに戻り、手榴弾の安全ピンを外しては死体がある辺り目掛けて投げ込んだ。手榴弾が爆弾する前に走ってパジェロミニに戻ると急いでスタートさせた直後に3つの手榴弾は次々と爆発した鈍い音が聞こえてくる。これで、バラバラになった死体は暫くすれば周囲に生息しているキツネ等の肉食獣が食べて始末してくれるだろう。

仮に、この後の襲撃に備えて手榴弾を温存しても何かの拍子に車内で爆発するような事態になれば目も当てられない。その為、カワサキは山道に近くで射殺した死体の処理をするために手榴弾を使用したのだ。

山道から主要道路に出ると、敢えて遠回りなルートでアジトに向かったが、途中で襲われることなくアジトに辿り着いた。しかし、カワサキは直ぐに室内に入ったり、ガレージのシャッターを開けることはなかった。

カワサキは、アジトの窓の1つの前に来ると窓枠の周囲を丹念に調べ、何ら細工がされていないことを確認すると窓を壊さないように抉じ開けて室内に忍び込むと、玄関ドアやガレージのシャッターを丹念に調べて細工がないことを確認してから、ガレージのシャッターを開けてパジェロミニをガレージに停めた。次いで、玄関の鍵を開けて室内に入るとカワサキはドッと身体の疲労を覚えた。本音としては何もせずにベッドで横になりたいところだが、右肩の手当てを丹念に施して着ていた服を着替えると、冷蔵庫に保存している食材で簡単な食事を取り、夕食を食べた終えると念のために錠剤の抗生剤を服用した。

その後、疲れた身体で玄関ドアの前にテーブルを移動させてバリケードにすると全ての窓の雨戸を閉めた。更に、M&P5.7拳銃から弾倉を取り出して発砲した分の弾薬を補弾してから、着替えた服のままで枕の下にM&P5.7拳銃を忍ばせて眠りについた。今日の襲撃はカワサキの心身共に疲労を覚える事であったためか、瞬く間に深い眠りに落ちたようだ。

暗がりの寝室に聞こえてくる野鳥の鳴き声で目を覚ましたカワサキは、枕の下に忍ばせたM&P5.7拳銃を左手で握ると、寝室の雨戸を静かに開けて外の様子を見ようとしたが、雨戸を少し開けた瞬間に目が眩むような陽射しが寝室中に広がり部屋が明るくなった。カワサキが目を細めて明るさに目を慣らして外の様子を伺うと襲撃されるような気配を感じることはなかったが、念のために携帯電話でCIAへ確認を求めると、アジトの半径50メートル内には人間の熱反応はないとのことであった。

CIAの偵察衛星で、熱反応を使って確認してもらった事で安心したカワサキは、朝食の準備を始めた。朝食を食べながらメールでCIAへアジトの変更が必要となるのか問い合わせると、CIAからの回答は暫く様子をみてみようというものであった。

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