スキルの使い方だった
訓練場に着くとそこにはもう、エリザ様とリカルドが待っていた。
集合時間までは指示がなかったが、いつからいたのだろう?
まだ九時過ぎだから遅くはないと思うけど。
「おはようございます。 お待ちしておりました」
エリザ様の挨拶に俺たちも返事をした。
「なるべく早めに来たつもりでしたが、遅かったでしょうか?」
委員長がエリザ様を、長時間待たせたんじゃないかと心配していた。
「いえ、私どもも五分ほど前に来たばかりです」
エリザ様の答えに委員長は安堵の息を吐く。
時間を事前に決めていないので、遅れたということはないだろう。
「それては時間も惜しいので始めましょう」
エリザ様の一言で実技訓練が始まった。
リカルドが俺たちの前に立ち、説明から入るようだった。
「まずレベルについてだが、己の経験を元に上がるようになっている。 一番分かりやすいのは魔物との戦闘だな」
この世界ではゲームのように、魔物を倒すと経験値が入りレベルが上昇する仕組みのようだ。
「レベルと共にステータスなどが上昇し、身体能力は強化される。 しかし、剣を振る練度や戦いの駆け引き、体捌きなどは訓練しないと会得できないので気をつけてくれ。 また訓練であってもしっかりやれば、多少ではあるがレベルが上がる」
レベルアップで上がるのは、ステータス画面に見えることだけだということだな。
訓練でも経験値は入ってくるからレベルが上がるとわけだ。
「次にスキルについてだが、これはレベルが上がるのと連動はしているが、ただレベルが上がるだけではスキルレベルは上がらない。 スキルは何度も使い、練度が次のレベルに達していると、レベルが上がるのと同時に上昇する仕組みになっている」
スキルを強くするには、とにかく回数こなさないとダメみたいだ。
スキル自体に個別で経験値が必要で、レベルに応じて必要な経験値が違うとのだろう。
魔法に関しても同じ理屈で上昇するんだと思う。
俺の風と雷魔法がLv.0なのは、練度は足りててもレベルが一のままだからかな。
「そしてスキルの使用方法だが、基本的に使いたいスキルを頭に思い浮かべ声に出すだけだ。 特殊な条件下でないと、発動しないスキルもあるから各自ステータスで確認してくれ」
たぶん俺の持ってるスキルだと、暗視スキルは明るいところでは、発動しないってことだと思う。
「私が簡単なスキルを使って見せるから、参考にしてもらいたい」
リカルドが剣を抜き構え、目を瞑り集中する。
そして『炎剣』と呟くと、構えている剣が炎に覆われた。
その光景に俺たちから『おお!』と感嘆の声が上がる。
「今のは分かりやすくするために、集中する仕草をしたが、本来であれば数秒で発動できる。 イメージする鍛練をすれば発動までの時間は短縮なるからな。 戦闘中にスキルを発動するのに、時間がかかっていては意味がないのでな」
おかしいとは俺も思った。
リカルドが使ったスキルのような、発動したら解除するまで継続するスキルだったら、戦闘前から発動させていればいいが、攻撃スキルとかだと敵と戦ってる最中だ。 あの発動時間では隙ができる。
「それでは各々広がって、スキルを試してみてくれ。 但し、危ないのでなるべく攻撃スキルは使わないようにしてもらいたい。 攻撃スキルしかない者は、危険がないよう見ているので私に言ってきてくれ」
俺はタクとヒカルと共に訓練場の端に移動する。
移動しながらステータスを確認し、どのスキルで試そうか選ぶ。
魔法スキルは攻撃スキルだし、魔力の扱いに不安があるので除外する。
魔法使わないとなると、すぐ使えそうなのは気配遮断しかないな……
気配遮断ってどう確認すればいいのかわからんが、とりあえず使ってみることにした。
スキルを使う為に、目を閉じる集中して自分の気配が消えるように念じる。
ある程度イメージを作れたら、俺と同じようにスキルを使おうと集中している、タクとヒカルの背後に回る。
「……気配遮断」
小声でスキルを発動させる。
ついでに忍び足め発動。
そのまま二人に近づいてみるが
「「なにしてるんだな(の)?」」
残り一メートルくらいの位置でバレた。
「気配遮断のスキルを試してたんだ」
気配遮断のスキルレベルは最大なはずだから、もう少し近づけると思ったんだが、俺の塾練度不足かな?
それに元々知った仲だし、それも影響しているのかもしれない。
「たぶん俺たちにやっても意味ないんだな」
「キエルのことはよく知ってるからね」
二人とも俺と同じことを考えていたようだ。
「あとで別の人で試してみるよ」
剣持か双槻辺りに実験台になってもらおうかね。
忍び足の方は足を鳴らそうとしても、音が鳴らなかったので成功しているようだった。
「おまえらはスキル使えそうか?」
「これを作ったんだな!」
そう言うとタクは手に持っていた、リボルバータイプの銃をこちらへ見せてきた。
銃器創造のスキルで作った物だろう。
「これ持ってみてくれだな」
差し出された銃を受けとると光の粒になって消えてしまった。
「消えたぞ?」
俺は驚いてタクに目を向ける。
「そうなんだな。 このスキルで作った銃は僕自身しか使えないぽいんだな。 僕の手から離れるとすぐ消えちゃうんだな」
タクは渡す前から消えることはわかっていたようだった。
そういう仕様なのね……先に言っとけよ!
なんかやっちまったのかと、ビビって損したわ。
「ヒカルの方はどうだ?」
タクは何事もなく使えたようなので、ヒカルへ視線を移す。
「僕のスキル、魔法ばっかりだから光剣か障壁なんだけど」
「光剣ってたぶんリカルドさんが使ったやつの光バージョンだよな?」
炎剣の別バージョンだと考えると、剣がいるから止めといた方がいいかな。
「剣を借りるの面倒だから、障壁でいいんだな」
タクも同じことを思ったようで障壁を推してきた。
「剣を使うのは危ないから、僕もそのつもりだったよ」
ヒカルは両手を前に出し、少し集中すし『障壁』と呟く。
するとかざしていた手の前に、二メートル四方の透明な板が出現した。
「よかった。 成功したみたい」
俺は強度を見るために、落ちていた石を拾い投げてみた。
コツンと音だけで障壁に変わりはない。
それに続けるように、タクが結構全力で石を投げる。
ゴンっとさっきより重い音がしたが、障壁はヒビが入ることもなく無傷だった。
「ビックリするから、石を投げるなら前もって言ってよ! それにタク全力で投げるのは止めてよ!」
「僕が全力で投げた程度なら大丈夫だと思ったんだな」
タクはゴメンゴメンと謝りながら言い訳している。
「俺もスキルの確認してくるわ」
俺はそう言うと、二人に背を向け剣持たちを探す。
剣持たちは俺がいる場所から、五十メートルくらい先にいた。
ちょうどいい距離だったので、その場でスキルを発動させ近寄っていく。
途中何人かの前を通りすぎたが気づかれなかった。
目標まであと十メートルほどで、忍び足も発動させる。
そのまま歩いて行き、残り三メートル……二メートル……一メートル。
タクとヒカルにはここで気づかれたが、剣持たちにはどうだ?
……残り五十センチ。
これはもう気づかれないの確定。
手を伸ばし剣持の肩を叩く。
「ひゃっ……な、なんだ?」
思ったより驚かさせてしまったようで、剣持は飛び上がっていた。
「ごめんごめん。 俺だよ。 渡来だ。」
「……なんだ渡来か。 ビックリするから驚かすのはやめてくれ」
こちらを確認して俺だとわかると、ため息を吐いていた。
一緒にいた双槻も剣持の驚いた声で俺を見つけたみたいだ。
「全然気がつかなかったよ! それってスキル? それとも天然?」
「スキルだよ! さすがにこれだけ近づいたら普段は気づかれるって」
そうだよねーとケラケラ笑いっている。
「それで何か用か? 私を驚かせるだけの為に来たのか?」
驚かせたことで、機嫌を損ねてしまったようだ。
子ども好きの変態だと思っていたんだが以外と女の子だった。
「スキルはついでだ……本題は夜、イリス様となにして遊ぶか相談しようと思ってさ」
咄嗟にそんな言葉が口から出た。
嘘だがそういうことにしておいた方がいいと、直感が告げている。
剣持が持ってる剣が炎を纏っているからな!
しかしイリス様の名前は絶大な効果を表した。
顔はニコニコ顔になるし、剣を纏っていた炎は霧散したしな。
剣持はあれもいいし、これもしたいしと一人で模索していた。
「今すぐじゃなくていいから、二、三個にまとめて昼の時にでも教えてくれ」
これじゃあ、剣持はもうスキルどころではないな……
すまんことをした。
そのままその場をあとにする。
「うまくごまかしたねー」
双槻には全てバレていたようで、帰り際にそんなことを言われた。
こんなその場しのぎで、騙される方がどうかしてると思うけど。
タクとヒカルの元へ戻るが先程のリベンジをしたい。
気配遮断だけだと気づかれたが、影の道を重ねて掛けしたらどうだろうか?
能力が十倍になるのなら、あの二人にも見つからないかもしれない。
戻る前にこの二つと忍び足のスキルを使う。
そして来た道を戻る。
先程の気づかれた、一メートル手前で一度止まる。
背後からゆっくり近寄ってくいく。
一メートルはクリア、五十センチまで近づく。
だが全然気づかれなかった。
そのまま真横へ回るが、それでも気がつかない。
スキル能力十倍すごいな。
職業、暗殺者とこのスキルのコンボはほぼ無敵なんじゃないか?
二人の真横でスキルを解除すると、突然現れたように見えたみたいで驚いて後ずさっていた。
「ビックリしたんだな」
「心臓止まるかと思ったよ」
二人にスキルの重ね掛けを試したことを説明する。
「本当に暗殺読解なんだな」
この二人でも見つからないとなると、初対面の人なら自分から姿を現さない限り大丈夫だろう。
イリス様のような常時発動型のスキルを持っていたら難しいが、ほぼいないだろう。
二人と共にスキルの発動と魔法の訓練を、時間いっぱいになるまでやっていた。




