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寝起きドッキリだった



 気持ちよく寝ていた俺は、突然腹に衝撃を受けて目を覚ました。

 何事かと思い、体の上を見てみるとそこにはイリス様が乗っていた。


「おはようなの!」


 腹への衝撃は、イリス様が飛び乗った時のもののようだ。


「……何でいるんですか? 鍵は閉めてあったとおもうんですが……」


 昨日、タクたちが出ていった後、ちゃんと鍵は閉めたはずだ。


「それは私が開けさせてもらいました」


 声のする方を見ると昨日、イリス様と一緒にいたメイドさんが扉の前に立っていた。


「開けたって……ノックして貰うか、部屋の外から声をかけてもらえれば起きますよ?」


 それがイリス様なら無下にはできないし、すぐにでも扉のを開けただろう。


「それでは面白……イリス様が早くお会いしたがっていましたので」


 今、面白いって言いかけたよね?

 そっちが本音だよね?

 勝手に入ってこれるってことは、これから俺にはプライバシーは無いわけ?

 マジっすか……


「きえるをおこしにきたの! めいわくだった?」


 イリス様が俺の上で、涙目で上目遣いに聞いてきた。


「そんなことないですよ! 嬉しいです」


 そんな顔されると、受け入れるしかないじゃないですか!

 さすがにイリス様を泣かすことは言えないし、言ったら剣持に後で何されるかわからんし。


「ならよかったの! いっしょにあさごはんたべるの」


 昨日は部屋のお菓子類で済ませたが、今日は朝食が準備されているようだった。

 時間を確認すると午前六時前、昨日タクたちが起こしに来たのも八時くらいだったのに……早すぎる。

 学校がある日だってもう一時間は寝ていたと思う。

 二度寝したい誘惑が襲ってくるが、イリス様を放っておくこともできないし、メイドさんがさっきから魔法を手でこねて、パチパチさせていた。

 メイドさん……なんで雷魔法を準備してるんですか?

 はい。 潔く起きますとも!

 イリス様をベットから降ろし、自分も布団から出る。


「おはようございます」


 部屋にイリス様がいることに驚いて、挨拶に返事ができてなかったので、改めてイリス様に挨拶する。


「おはようなの!」


 もう一度、元気よく挨拶を返してくれる。


「危ないので寝てる人の上に、飛び乗るのは止めてください」

「そうなの? ひるだはそうした方がよろこぶっていってたの」


 イリス様はメイドさんを指差しながら言った。


「ヒルダさん? 王女様になに教えてるんですか!?」

「ヒルダで構いませんよ。 イリス様が楽しい起こし方を、聞いていらしたのでお教えしたまでです」


 ヒルダはまるで悪びれることなく、もしろクスクス笑いながら返事をした。

 このメイドさん俺とイリス様で遊んでるよな。

 イリス様に変なこと教えて、不敬罪とかにならないのかね?

 やった本人が楽しそうだから、俺からは強く言わないけど。


「ベットから落ちたら怪我をするかもしれないので、なるべくやらないようにしましょう」


 俺が注意すると、イリス様はコクンと頷いてくれた。


 話が纏まったならタクとヒカルも道連れだと、イリス様を連れて隣の部屋へ起こしに行く。

 ヒカルはの部屋は鍵が開いており、もう起きて紅茶ぽいのを啜っていた。

 部屋に入ってきたのが俺だとわかると安心したが、後ろからイリス様とヒルダが入ってくると表情を固くして俯いた。

 一緒に朝食を取ろうと言うと頷く。

 次はタクを起こしに行く。

 タクはまだ寝ていたので、ドアを叩いて無理やり起こした。

 二人に準備ができたら大部屋に来るように伝える。


 二人の部屋に突撃して思いついたことがある。

 俺の部屋に忍び込んだように、剣持の部屋にもイリス様寝起きドッキリをしたら面白いんじゃないか?

 面白いことならやりゃなきゃな。

 イリス様が遊びに来た時に呼びに来いと、昨日の夜に聞かされた部屋の前に移動する。


「この中に昨日一緒に、遊んだお姉さんが寝てるから。 私を起こした時と同じように、起こしてあげてほしいんですがいいですか?」

「危ないからやっちゃいけないんじゃないのなの?」


 さっき危ないって言ったが、あの後ヒルダが魔法で落ちないように、補助していたと言っていたので危険はない。


「今回だけ特別です。 思いっきり飛び込んできてください」

「わかったの!」


 イリス様にお願いして剣持を起こしにいってもらう。

 鼻息荒く意気込んでるから、俺以上の勢いで腹に飛び乗ってくれるだろう。

 ヒルダにやりたいことを話したら普通に乗ってきたので、持ってるマスターキーで鍵は開けてもらった。

 このメイドさんイタズラが好きなようで、俺の話を聞いて楽しそうに了承してきた。

 これから注意していないと、どんなイタズラされるかわからんな……


 イリス様が部屋に入ってすぐ、ドスンという音と『ぐえっ』て声が聞こえてきた。

 その声は女の子が出しちゃダメなやつだろ……

 その後、『おはようなの!』とイリス様の声がし、自分の上にイリス様がいることに気がついたのか、『キャー』と剣持の叫び声が聞こえてきた。

 この叫び声は明らかに嬉しさを帯びた『キャー』だった。

 剣持の叫び声がしてから数秒、やりきった顔のイリス様が部屋から出てきた。


「うまくできた?」


 そしてこちらを向いてそんなことを聞いてきた。


「大成功ですよ!」


 イリス様の脇に手を入れ持ち上げると、そのままクルクル回りイリス様を誉めちぎる。

 ちょっと誉めすぎたのか、照れてしまいヘナヘナになってしまったが。


「では朝食にしましょうか? 私はトイレに行ってから行くので、先に行っててください」


 イリス様に先に行ってもらうように言うと、ヒルダと一緒に大部屋の方へ歩いていった。

 そこに剣持が部屋から出てこちらに気づく。


「今日の目覚めはどうだった?」


 今に呆けている剣持に声をかける。


「そうか、おまえが……ありがとう! 最高の朝のだった!」


 小さい子が大好きな剣持なら、喜ぶと思ってやったドッキリだからな。


「これからイリス様と朝食だから、一緒に食べたきゃ着替えて早めに来いよ」


 剣持はパジャマのまま、部屋の外まで出てきていたので服装を教え、朝食のことも伝える。

 すると一瞬で目の前から剣持が消えた。


「五分で準備していく!」


 俺の言葉にしっかり眠気から覚醒したようで、部屋のなかでバタバタやっていた。

 たぶん着替えているのだろう。

 その物音を後ろに聞きながら、イリス様が待つ大部屋へと向かった。

 大部屋に入るともう朝食は準備してあった。



 他のみんなより早い朝食を終え、イリス様と五人でのんびり話しをしていると、起き出して大部屋へとやってくる人かチラチラと現れ始めた。

 自分で起きてきた双槻がこちらに気づき近づいてくきた。


「おはよー。 もうみんなそろってるの?」


 どうも双槻は俺たちも今、来て朝食がくるのを待っていると思ったようだ。


「イリス様に朝早くに起こしてもらってな。 一緒に朝食を食べ終わったところだ」


 剣持が簡潔に今の状況を説明する。


「もう食べ終わったんだ。 起こしてもらったって……なにそれ?」


 双槻は空いている椅子に座りながら首をかしげる。

 簡潔過ぎて飯を食べたことしか理解できなかったみたいだ。

 あの寝起きドッキリのことを教えてやると……


「なんでそんな楽しそうなことに私を参加させてくれないの!?」


 双槻も一緒に驚かせたかったみたいで、悔しそうに足を踏み鳴らしていた。


「またやることがあったら呼んでやるよ」

「絶対だよ!」


 なんか双槻にヒルダと同じ匂いを感じるけど、次回なにかやるときは声をかけるようにしよう。


 その後、寝坊したやつ以外のみなが朝食を摂り終え、訓練場へと移動することになった。

 遊ぶ約束もしてるし、夕方くらいにまた来るだろうが、イリス様とは一度お別れだ。

 手を振りながら別れると、ヒルダと二人で別に方向へと消えていった。



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