第六話:想定外の攻略法は物理演算エラー!? 女神の絶対領域を『ゴリ押し』で突破される件
【ヤクート天空神殿・第一観測領域】
「ふ、ふふん……見たかしらクララ、エルサ! これがサピエンスには絶対突破できない我が神殿の誇る絶対防衛陣形『ヤレンデズ・グラビティ』よ!」
神聖なる天空神殿の中央。
透き通るような白銀の髪を揺らし、最上位女神ヘレナは胸を張ってドヤ顔を決めていた。
その着衣はもちろん、女神御用達の最高級神威ブランド『VALKANOR』の特注ドレス。神々しい光彩を放ちながら、彼女は下界の全天モニターを指さす。
「物理法則を歪め、一歩進むごとに100倍の重力がかかる神の領域……! いくら下界のサピエンスが束になって挑もうと、ひれ伏して神の威光に涙するしかないわ!」
「さすがヘレナ様です! お美しく、そして完璧な神罰の設計……! ああ、神々しすぎて目が潰れそうです!」
側近の上位女神クララが、両手を合わせて目を輝かせる。
一方、その隣で無表情に端末を操作している上位女神エルサは、冷静に淡々と事実を告げた。
「……ヘレナ様、録画データ追記完了しました。ですが、下界の反応に異常値を検知。『反抗期パーティ』が領域内に侵入しました」
「ふん、来たら来たで返り討ちよ! さあ見なさい、重圧に潰される哀れな――」
――ズドドドドドドドッ!!!!!
モニターから響き渡ったのは、神罰の静寂を切り裂く凄まじい地鳴りと爆音だった。
【地上界・ヤレンデズ・グラビティ内部】
画面に映し出されたのは、重力100倍の超重圧空間。
そこを、サピエンスの剣士アユミが――ただの腕振り(ゴリ押し)の風圧で重力場を物理破砕しながら爆走してくる姿だった。
「何これぇええええええっ!? 重力を力任せに殴って打ち消してるの!? 物理演算はどうなったのよ!?」
ヘレナは一瞬でドヤ顔を崩し、涙目になって大声で叫んだ。
「報告します」とエルサが無感情に言葉を重ねる。
「剣士アユミ、重力波の波長を完全目視で認識。真逆のベクトルを持つ超音速の振り下ろしを行うことで、空間ごと重力を『相殺』しながら前進中。なお、後ろの勇者レイと治癒天使ユナは、アユミの背後に発生する無重力真空ゾーンをちゃっかり便乗走行しています」
「ハックじゃないですか! 完全なシステムハック&物理破壊です!」
クララが頭を抱えて叫ぶ。
「ええい、ユナという治癒天使は何をしているの!? あんなの治癒魔法の域を超えているわ!」
画面の中では、治癒天使ユナがニンマリと笑いながら、アユミに向かって光のバフを連打していた。
『超・瞬間細胞復元(肉体が壊れる速度より速く治せば実質無敵)』
『神威デバフ返し(神の試練をそのまま神殿側に跳ね返す概念ハック)』
「神の意図……? ああ、『ここで苦しんで諦めろ』って意味ですね? 裏を返せば、力任せに突き抜ければ最速で女神様の顔が見られるってことですよね!」
画面越しに聞こえるアユミの威圧感あふれる笑顔とガチ勢特有の思考ロジック。
もはやどちらがラスボスなのか分からない。
【ヤクート天空神殿・パニック状態】
「ひ、ひえぇ……! こっち見ながら爆走してくる! なんで神の意図を全部『裏読み』して力技で突破してくるのよぉーっ!」
ヘレナはついに半泣きになり、クララの裾をギュッと掴んだ。
「ヘ、ヘレナ様、お鎮まりください! まだ手はあります! 最高級神聖食『ソルティ・カザフ』でも召し上がって心を落とし……」
「食べてる場合じゃないでしょーっ! 誰かあの筋肉ゴリ押し剣士を止めてぇぇぇええっ!」
「ヘレナ様、朗報です」
エルサがカメラの角度を密かに調整し、涙目でおびえるヘレナの愛くるしい表情を最高画質(神威仕様)で裏録画しながら告げる。
「アユミたちの破天荒な突破劇により、天空神殿の観測PVおよび下界からの注目度が前日比800%増加しました。『可憐な女神様がゴリ押しサピエンスに泣かされる日常』として、神々からの投げ銭(信仰心)が爆増中です」
「誰がそんな売り出し方しろと言ったのよぉおおおっ!!」
ヘレナの悲痛な叫びが、今日も天空神殿に可愛らしく響き渡るのであった。
(第七話に続く)




