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第五話:『サピエンスを憐れんで聖なる試練を与えたはずなのに、反抗期パーティの凄まじい決意に女神様たちが翻弄される件』

ヤクート天空神殿――。


「ふふっ……見なさいクララ、エルサ。今日の試練は、あのサピエンスたちの『絆』を確かめるための至高の試練よ」


真白な神聖衣を纏い、美しく輝く金髪を揺らしながら微笑むのは、この世界の最上位女神――ヘレナである。


彼女の手元にある観測網『ヤクート・アイ』には、地上界の険しい霊峰を登る反抗期サピエンス3人組――勇者レイ、剣士アユミ、治癒天使ユナの姿が映し出されていた。


「ヘレナ様、本日の神聖なる試練とは……?」

上位女神のクララが、敬愛の眼差しを向けながら神威の稲妻を静かに手元に集める。


「ええ。サピエンスの強い意志を試すために、この霊峰全体に『静寂の神聖領域』を展開したわ。武器の力を抑え、神への真摯な祈りと歩みだけを求める神秘の領域……。これなら、殺伐とした戦いではなく、彼らの人間らしい尊い絆が見られるはずよ」


「なるほど……どこまでも慈悲深く、美しいお考えです、ヘレナ様」

クララはうっとりと胸を打たれ、誇らしげに頷いた。


「観測データを準備しました」

上位女神のエルサが、透き通る指先で静かに境界陣を操作する。

「神聖領域のデプロイを完了。サピエンスたちがどのように神の威光を感じ取り、応えるかをリアルタイムで記録します」


「さあ、見せてちょうだい。サピエンスの真の強さを……♪」

ヘレナは優雅に神酒のグラスを傾け、楽しみに画面を見つめた。



一方、地上界――。


「――レイ! ユナ! 警戒して!」


サピエンスの剣士アユミが、霊峰を包み込む神聖な光の気配を察知し、即座に足を止めた。

その眼光は鋭く、刃のように研ぎ澄まされている。


「この光……神が俺たちの進路を阻むために張った、新たな特殊結界だな! 武器の力を封じる気か!」


「アユミ、大丈夫よ!」

治癒天使ユナが聖杖を強く握りしめる。

「神の結界がどれほど力や祈りを要求してこようと、私の聖光で強引に魔法回路をバイパス(迂回)させるわ! レイ、アユミ、私の全力のバフを受けて!」


「よし……! 神の都合の良い試練になんて乗ってまるか!」

勇者レイが大剣を構え、全身から溢れ出る意志のオーラを爆発させる。


アユミは手にした鉄くず長剣を静かに引き抜き、神聖領域の概念そのものをまっすぐ見据えた。


「神よ……俺たちの絆を試すつもりなら、その傲慢な企みごと……この一瞬で断ち切る!!」


「『超・限界突破・神威穿孔バフ』!!」


「ハァァァァァッ!!!!」


神聖な静寂を求められたはずの領域で、アユミの解き放った圧倒的な一撃と、3人の決して折れない不屈の意志が衝突。

神が与えたはずの優美な結界は、彼らの規格外の熱量と物理突破によって、一瞬で光の粒子となって霧散したのだった。



ヤクート天空神殿――。


「「「……え?」」」


水鏡の前で、女神様たちの時が止まった。


静寂と神秘に包まれるはずだった霊峰は、歩み進めるどころか、アユミの一撃で山頂の雲ごと結界が綺麗に吹き飛んでいた。


「な……なんですか、あのサピエンスたちは……!」

クララが頬を朱に染め、目を丸くして言葉を失う。

「神の美しい試練を、祈るどころか『神の傲慢』と決めつけて力任せに打ち破るなんて……っ! なんという失礼で、恐ろしいサピエンスなのですか……!」


「あ、あり得ません……」

エルサも珍しく目を小刻みに見開いている。

「神聖領域の概念耐久値を、単なる『意志の強さとバフのゴリ押し』で上回られました。計算が成り立ちません……」


そして、玉座のヘレナは――。


「ふ、ふえ……? あたしの作った綺麗なお試しの領域が……一瞬で……?」


整った美しい顔を呆然とさせ、手にしていた神酒のグラスを危うく落としそうになっていた。

ほんのりと頬を桃色に染め、涙目になりながら画面の歩実たちを見つめる。


「な、何なのよあいつらぁ……! ちょっとかっこよく絆を見せてほしかっただけなのに……なんでそんな鬼みたいな気迫で速攻破ってくるのよぉ……!」


「ヘレナ様……! お心を痛めないでください!」

クララが慌ててヘレナの肩を抱き寄せ、優しく寄り添う。


「だってクララぁ……! あたしたち、別に意悪でやってるわけじゃないのに……あんな顔で睨まれたら、あたしたちの方が悪者みたいじゃない……っ!」


ヘレナはクララの胸にちょこんと顔を埋め、困惑と悔しさで小さく唇を噛みしめた。


「ヘレナ様、ご安心を。あの無礼なサピエンスたちの記録はすべて保存しました。次は決してこのような不敬を許しません」

エルサが静かに、しかしどこかヘレナを愛おしそうに見つめながら端末を操作する。


「うぅ……いいわ! レイ、アユミ、ユナ!」

ヘレナはクララの腕の中から顔を上げ、涙目のまま、気高くも愛くるしいドヤ顔を何とか作ってみせた。


「どこまでも私の想定を越えてくるサピエンスたち……! 認めてあげるわ、あなたたちのその不屈の意志を! だけど次は……もっともっと素敵な試練で、絶対に私にひれ伏させて見せるんだからねっ!」


気高く美しい女神様たちの可憐な誓いが、ヤクート天空神殿に優しく響き渡るのだった――!

(第六話に続く)

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