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第三話:『絶対不可侵の神聖結界に閉じ込めて即パージ(神罰)しようとしたら、なぜか脳筋剣士が空間ごと叩き割ってきた件』

ヤクート天空神殿――。


「ふふふ……クララ、エルサ! 今回の試練は完璧よ! ぐうの音も出ないほど完璧な『絶対詰み(チェックメイト)シナリオ』を完成させたわ!」


黄金の玉座で胸を張り、ドヤ顔で言い放つ――最上位女神ヘレナである!


ヘレナの前には、観測網『ヤクート・アイ』の巨大な水鏡。

画面に映し出されているのは、荒涼とした谷間に追いつめられた反抗期サピエンス3人組――勇者レイ、剣士アユミ、治癒天使ユナの姿だ。


「報告します、ヘレナ様」

上位女神エルサが、美しく透き通る指先で空中をスワイプする。

「神聖住宅『YARENDEZ』の結界技術を応用した超高次元閉鎖空間『ヤクート・ケージ』の展開、無事に完了しました。内部の物理法則・魔導波形・および概念的脱出ルートはすべて封鎖済みです」


「見事です、エルサ」

上位女神クララが、両手にパチパチと神威の稲妻を走らせながら冷酷に微笑んだ。

「あのような檻の中に閉じ込められれば、神の許可なく出ることなど不可能です。まさに『箱の中のネズミ』。ヘレナ様、今度こそヤクートの閃光で、空間ごと微粒子にパージして差し上げましょう」


「甘いわねクララ! ただパージするだけじゃエンタメ(劇)として最高潮に達しないでしょうが!」

ヘレナは人差し指をチッチッと振って見せた。


「いい? 愚かなサピエンスが『くそっ! どんな攻撃も通らない! 俺たちはここで終わるのか……!?』って絶望して膝をついた瞬間に、上空から『神に刃向かった報いだ☆』って煽り散らしてパージする! これが最高峰の『ざまぁ(神罰)』の美学なのよ!」


「なるほど……! さすが最上位女神ヘレナ様、深いお考えです!」

感動するクララを背景に、私は画面を注視した。


さあ来なさい! 絶望しなさいサピエンス! 私の書いた完璧な筋書きにひれ伏しなさい!



一方、地上界の『ヤクート・ケージ』内部――。


「……ん? なんか透明な壁が張られたな」

勇者レイが、大剣の柄を肩に担ぎながら、眼前に広がる紫色の光壁をペチペチと叩いた。


「レイ、気をつけて! それ、神様たちが『YARENDEZ』の住宅用結界を軍事転用した超高次元閉鎖空間よ!」

治癒天使ユナが、手にした聖杖を構えながら解析結果を叫ぶ。

「神のデータベースによると『いかなる物理攻撃も魔法も無効化し、内部の者を完膚なきまでにパージするための絶対空間』……つまり、神の決めた『強制詰みイベント』ね!」


「へえ、神の詰みイベントか」

サピエンスの剣士アユミが、面倒くさそうに首をポキリと鳴らした。

彼女の手にあるのは、神のブランド『VALKANOR』でも何でもない、鍛冶屋で安売りされていた普通の鉄くず長剣だ。


「アユミ、無理は禁物よ! 神の結界は概念レベルで『切れない』仕様になって――」


「レイ、腰の『自家製干し肉』取って」

「おう」


アユミはレイから受け取った噛みごたえ抜群の塩辛い干し肉をモグモグと噛み砕くと、じろりと紫色の光壁を睨みつけた。


「ユナ、私に『筋力および空間切断概念の50倍増幅バフ』をちょうだい」


「えっ!? 50倍!? そんな無茶なバフかけたら、アユミの腕の肉が弾け飛んじゃうよ!?」


「大丈夫。弾け飛んだ瞬間にユナが超速度で全回復してくれれば、実質ノーリスクでしょ」


「狂気の論理ロジックすぎる……! 分かったわ! 『超・限界突破聖光オーバースペック・ブレッシング』!!」


ドカン!! とユナの杖から常軌を逸した聖光が爆ぜ、アユミの全身の血管が爆発しそうなくらいに脈打ち始める。


「ふぅ……いくわよ」


アユミはごく普通に長剣を構えると、体重を一切かけず、ただの素振りの要領で『切れないはずの神聖結界』に向かって刀身を振り下ろした。


「――物理切断」


バリリリリリリリリリリリッ!!!!


次の瞬間、時空そのものが悲鳴を上げた。

切れないはずの超高次元結界が、ガラス細工のようにヒビだらけになり――豪快に砕け散った。



ヤクート天空神殿――。


「「「………………」」」


神殿内に、静まり返った沈黙が落ちる。


エルサの持ち手から、データ端末がスルスルと滑り落ちて床に音を立てた。

クララの手に走っていた稲妻が、チリ……と切なく鎮火した。


「……ねえ、エルサ」

ヘレナが引きつった笑顔で尋ねる。


「はい、ヘレナ様……」


「今、アユミって子……『切れない仕様の概念結界』を、ただの鉄の棒で叩き割らなかった?」


「はい……『自家製干し肉の塩分』と『腕が弾け飛ぶ速度より速い超速再生バフ』を掛け合わせることで、瞬間的に神の概念耐久値を物理演算のゴリ押しで突破された模様です」


「頭おかしいんじゃないのあいつらぁぁぁぁぁっ!?」


ヘレナは玉座から飛び起き、思わず頭を抱えて叫んだ!


「物理演算のゴリ押しって何よ!? こっちは高次元の神聖コード組んでんのよ!? なんで根性と干し肉で空間が割れるのよ! テンプレ崩壊も大概にしなさい!!」


「おのれ……おのれサピエンスめぇぇっ!!」

クララが顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ヘレナ様! もう我慢の限界です! 直接降臨して、あの狂人どもをこの手で叩き潰します!!」


「ダメよクララ!!」

ヘレナは速攻でクララの服の裾を引っ張って止めた。


「な、なぜですかヘレナ様!?」


「だって……だって……!」

ヘレナは息を荒げ、真っ赤になった顔で、不敵かつ最高にドヤ感のある笑みを浮かべて見せた。


「――最高に『面白い』じゃない!!」


「……は?」


「見なさいよエルサ! 私が作った絶対の詰みイベントを、脳筋とイカレ回復のバフコンボで物理破壊してドヤ顔してるあの3人を!」


画面の向こうでは、破られた結界の破片をバックに、レイとアユミとユナが「見たか神様!」と言わんばかりにこちらに向かってポーズを決めている。


「生意気! 超生意気! だけど……あははっ、最高にスカッとするじゃない! 世界中の誰もが私のシナリオ通りにしか動かない中で、あいつらだけが私の想定を全部ぶち破ってくるのよ!?」


ヘレナは神酒の入ったグラスを高く掲げ、最上位女神としての歓喜の声を響かせた。


「いいわサピエンス! 次は『ヤクート・サンダー100万連打』と『確定即死呪いイベント』の同時デプロイよ! どこまでそのイカれたゴリ押しが通用するか、たっぷり見物させてもらうわね!!」


ヤクート天空神殿に高らかな女神の笑い声がこだまし、神と反抗期人間の不条理バトルはさらにカオスな領域へと突き進むのであった――!


(第四話に続く)

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