第8話 新しい家族
グレイブ家に新しい家族ができた。
名前は、フィオナ・グレイブ。俺の妹だ。
母親であるエレノアのような綺麗な白髪で、俺や母さんと同じ琥珀色の目をしている。まるで、小さいエレノアのような容姿をしている。
「可愛いなぁ、俺の妹かぁ。」
母に抱っこされているフィオナを父ギルバードと一緒に見ている。二人とも、フィオナに触れていいものかとあたふたしている。
「アッシュ、抱っこしてみる?」
「良いの!?」
「もちろんよ、お兄ちゃんでしょ。」
母からフィオナを受け取る。緊張で手が震えるが落とさないように慎重に抱く。
「おお〜。かわいいなぁ。」
しばらく抱っこしているとフィオナが目を覚まし泣き始める。
「どうしよう、泣き始めちゃった。」
俺がどうしていいかわからず困惑していると、エレノアが「かして」と言いフィオナをあやすと、さっきまで泣いていたのが嘘かのように泣き止んだ。
「すげぇー。...でも、もうフィオナに嫌われちゃったのかな?...立ち直れないよ。」
がっくりと項垂れる。
そんな悲しんでいる俺にギルバードが肩に手を置き慰めてくる。
「どんまい、元気出せ。俺なんか『ギルバードが抱っこするの怖いからもっと大きくなってから。』って言って抱っこすらさせてもらえないんだぞ。」
「父さん...」
父と見つめ合い、お互い抱き合って慰め合う。
その様子を見ていたエレノアが笑う。
「馬鹿なことしてないで、ほら、ギルバード。ちゃんと優しく抱っこしてね。」
ギルバードは慎重に抱っこする。
「父さんは、2回目ですよね?僕が赤ちゃんの時で慣れたんじゃないですか。」
「息子と娘じゃ、緊張感が違うんだよ。」
やれやれと思いながら新しい家族の誕生を心の底から喜び、絶対にフィオナを守ろうと決意する。
ーー
それから、家の中ではフィオナのお世話をしながら剣術や魔法の練習をし、外ではノエラと遊んでいる。
「そういえば、後少しで学校の入学式だよね。アッシュもグランツの学校に行くよね?」
「学校?」
「あれ、アッシュは学校行かないの?平民なら7歳になる年には大体の人は初等学校に通うはずだけど。」
「ああー。多分俺もグランツの学校だと思うぞ。ノエラも?でも、ツノ、大丈夫なのか?学校ならバレる可能性が高いだろ。」
「学校の先生には『先祖返り』の事話すから、...多分大丈夫だと思う。それに、アッシュに教えてもらった無詠唱魔法があるからね。いじめられても大丈夫だよ。」
ノエラをいじめから救った時に魔法の詠唱をしていなかったため、「私にも、アッシュ君の無詠唱魔法教えて」とお願いされ、無詠唱魔法を教えた。
するとノエラは、上達が早く、俺が魔法を覚えて1年以上かかって身につけた無詠唱魔法をたったの2週間で習得した。その間にいつの間にか「アッシュ君」から「アッシュ」呼びに変わっていたが、それは俺に信頼を寄せていると感じ嬉しかった。
「アッシュは学校に行ってもそばにいてくれるよね?」
こちらを見てお願いされる。
いくら、6歳の女の子とはいえ、俺も今じゃ6歳の男子だ。前世で女性経験がなかった俺からしたらそのお願いは刺激が強すぎた。
「もちろんだ。同じ学校なんだから避ける理由はないだろ。」
恥ずかしくなり目を逸らしながら答える。
「やったぁー!ずっと一緒に遊ぼうね。」
「あぁ。」
ぶっきらぼうに答える。
初対面の時とは大違いだな。でもこれがノエラの本当の性格だろう。今までツノのせいで友達ができず苦しんでいたからこそあんなふうになっていたのだろう。
ーー
その後、家に帰り考える。
いくら学校側に『先祖返り』であることを伝えたとしても、生徒からの偏見は受けるだろう。なんせ『三大種族』の特徴を持つんだからな。どうしたものか。ノエラが俺以外と仲良く出来ないのはまずい気がする。あのツノさえ見えなければ普通の女の子なのに。
ふと思い出す。
そういえば、物が見えている仕組みは〈物質に反射した光が目に届いているから〉と理科の授業で習った気がする。
この世界には、光属性の魔法がある。だったらそれを利用して光を曲げてツノを反射しないようにすれば認識できなくなるんじゃないのか?
「試してみる価値はあるか。ただ光を曲げるだけなら魔法陣に書いてそれをツノに使えばほぼ永久的に使えるだろ。理論自体は簡単だ。あの本に書かれた魔法陣の内容だけでも作れそうだ。」
そう考えると今まで魔法について学んだ『魔法の基礎』を開き、魔法陣のページを開いた。
ーー
それから、2週間ほどかけて魔法陣を完成させる。
「出来た。早速発動してみるか。」
完成した魔法陣を書いた紙の上にノエラのツノのサイズまで大きくした土弾を置く。
魔法陣に魔力を込めると、さっきまで魔法陣の上にあったはずの土弾は確かに何かわからなくなったが、黒塗りの物体となっただけだった。
「くそ、失敗か。反射しなくなるだけで見えなくなるわけじゃないのか。それにこんな真っ黒な物が生えてる方が不自然すぎる」
どうする、ツノが見えなくなり、なおかつ普通の肌のように見える必要があるよな。そうか、光をツノが生えていないおでこに反射させてそこには何もないように見せればいいのか。
ーー
それから改良を重ねること3日後。
「...出来た!今度こそ完璧なはずだ。」
再び魔法陣の上にツノほどの大きさに作った土弾を置き、魔法陣を起動する。
すると魔法陣の上には床と同じ色の物体が置いてあるように見えた。
「よっしゃぁぁぁ!!成功したぞ!」
あまりに大きな声上げたため、シャロンが慌てて「どうされましたか?」と心配しに部屋に入ってくる。
シャロンに「急用が出来たから、ちょっと出かけてくる。」と言い、完成した魔法陣を持って、いつもノエラと会っている町はずれの大きな木がある場所に行く。
ーー
いつものように木陰で本を読んでいるノエラを見つけ、走ってノエラの元に行く。
「ノエラ、完成したよ。」
はぁ、はぁと息を切らしながら話す。
「そんなに急いでどうしたのアッシュ。それになんでずっと来なかったの。寂しかったよ。」
ノエラは、ずっと遊びにこなかったことに抗議の目を向ける。
「ごめんごめん、それよりも魔法が完成したんだ!」
「そういえば、さっき完成したって言ってたね。どんな魔法を作ったの?」
「絶対にノエラも喜んでくれると思うよ。ちょっとツノに触ってもいい。」
「えっ!...別にいいけど。」
そう言うとノエラは、恥ずかしながらもツノを触りやすいよう前屈みになってくれる。
ノエラのツノに先ほど作った魔法陣を付ける。
「新しい魔法ってどんな魔法作ったの。」
前屈みの体勢のまま不安そうな声で聞いてくる。
「よし、準備できたぞ。...ツノが見えなくなる魔法だ。」
「ツノが...見えなくなる魔法?そんなことできるの?」
期待に満ちた目でこちらをみてくる。
「発動してみてもいいか?人に使うの初めてだから失敗するかもしれないけど。」
「アッシュが僕のために作った魔法なんでしょ?...だったら信頼するよ。」
信頼するとは言っても不安げな表情で覚悟を決め、俺を見つめる
「ありがとう、ノエラ。魔法、発動させるよ。」
魔法陣に魔力を込め、魔法を発動させる。
「終わったよ、ノエラ。」
魔法が成功し、安堵した声で話しかける。
『ウォーターボール』を鏡がわりにしてノエラに自分の顔を見せる。
「えっ!?ツノがなくなっている。」
そこには、あるはずのツノがなくなったノエラが映っている。
ノエラは、驚いた表情で自分の顔を見て、ツノを触る。
「触ったらツノはちゃんとあるのになんで見えないの?」
「光魔法を応用したんだ。物質が見える仕組みは光の反射だから、ツノに当たるはずの光を他の肌の部分にずらしてあたかも普通の額に見せている。これで!?...ちょっとノエラ?」
「ありがとう...っ、ありがとう...っ、アッシュ。」
話し終える前にノエラが抱きついて、感謝の言葉を涙声で言う。
その後も泣いているノエラの背中をさすりながら落ち着くのを待つ。
「ごめん、...急に抱きついたりして。...本当にありがとうアッシュ。」
「気にしないで、友達を助けるのは当たり前だろ。」
その言葉を聞き、ノエラはまた泣き出しそうになる。
「僕たちずっと友達だよね?どこにも行かないでね。」
「心配するな。どこにも行かないから。」
ノエラの頭を撫でる。
再びノエラが泣き出すので、優しく抱きしめる。
「ノエラは泣き虫だな。」




