第9話 入学式
グランツの学校へは寮から通うため、6年とちょっと過ごした家から引っ越す準備をしていた。グランツの町まではエレノアが付いてきてくれる。
俺は、家族に別れの挨拶をする。
「父さん、行ってくるよ。」
そう言うとギルバードは、笑いながら
「しっかりやれよ。後、剣術の修行サボるなよ。帰ってきた時、弱くなってたら承知しないからな。」
「分かっているよ。」
ギルバードは相変わらず乱暴に頭を撫でる。
「シャロンさん、今まで特訓するたびに心配かけてごめんなさい。これからも程々に頑張るよ。」
「アッシュ様は、いつも無茶をしますから、今後ともお怪我がないように頑張ってください。」
シャロンと握手する。
最後にベットで寝ているフィオナの元に行く。
「じゃあねフィオナ。成長を見れないのは悲しいけどフィオナを守れるくらい強くなるから、元気に育てよ。」
フィオナに話しかけながら優しく頭を撫でると、笑ってくれた。
「じゃあ、みんな行ってくるよ。長期休暇の時、必ず帰ってくるから待っててね。」
手を振りながら実家を後にする。
ーー
町の門のそばにノエラの姿を見つける。
以前までとは違い、ツノを隠す必要がなくなったノエラは、笑顔で俺たちに手を振る。
「お待たせ、ノエラ」
ノエラの両親は仕事で付き添いができないため俺と一緒にグランツまで行くことになっている。
「よろしくお願いします、エレノアさん」
「よろしくね、ノエラちゃん。学校でもアッシュと仲良くしてあげてね。」
「はい、もちろんそのつもりです。アッシュは、僕の大切な友達なので。」
ちなみにノエラは何度か俺の家に遊びに来ているので家族とは面識があり、仲良く過ごしている。
両親とシャロンにもノエラにツノが生えていることを話したが、偏見を持たずに接してくれているのが幸いだった。
「それじゃ、行きましょうか。」
町の門を出て、グランツ行きの馬車に乗り故郷の町と別れを告げる。
ーー
それから、1日かけてグランツに着き、寮がある街の中心部へと行く。
寮は男女別の場所にあるため、ノエラとエレノアとは寮の手前で分かれる。
それぞれの部屋に荷物を置き、先ほど別れた寮の手前まで行き、エレノアに別れを告げる。
「付き添いありがとうございます、母さん。...泣かないでよ、長期休暇でちゃんと家に帰ってくるんだからだから。...体に気をつけて元気でね。」
息子との別れを悲しむエレノアを抱きしめる。
「元気で過ごすのよ、長期休暇には絶対に帰ってくるのよ。それと、ノエラちゃんを悲しませたらダメよ。」
「わかっているよ、母さん。」
「ノエラちゃん、アッシュに何か酷いことされたらすぐに教えてね。ちゃんと怒るから。」
「ありがとうございます、エレノアさん」
エレノアは、ノエラの頭を優しく撫でる。
グランツの街の門まで、エレノアを連れていく。
「気をつけて帰ってね。じゃあ、また今度。」
手を振りながら見送る。
ーー
それから入学式までの3日間の間に新生活で必要なものをノエラとグランツの街へ買いに行った。
「買い物に付き合ってくれてありがとね、アッシュ。」
「気にするな、俺も買い物に付き合ってもらったし。」
二人はそれぞれ買い物袋を持ちながら、街中を歩いている。
「昼飯、食べにいくか?」
「行く!何食べる?」
「そうだなぁ。...あそこの店に入ろう。」
街中に店を構える大衆食堂に入り、昼食をとる。
「いよいよ明日、入学式だな。」
「そうだね、同じクラスになれるといいけど。」
ノエラは、不安そうな顔をしながら話す。
「まあ、確かに同じクラスになるのが理想だけど別々のクラスになっても遊べるだろ。」
「...そうだね。」
少し不安そうな顔が和らいだ気がする。
昼食を食べ、寮までの帰り道。
俺は、一つ抱えている大きな問題があった。
「ノエラもう少し離れて歩いてもいいんじゃないか」
そう、ノエラは毎回、距離が近いのだ。まるで恋人同士の様な距離感なのだ。いくら信頼している友達だからといっても、男子相手にこの距離感は色々とまずい。
「ダメなの?」
そんなに身長は変わらないはずなのに上目遣いで見てくる。正直言ってノエラは可愛い。こんな可愛い子に懐かれるのは嬉しいが女性経験の少ない俺には相変わらず刺激が強すぎる。
「いや、別に問題はないけど。やっぱり親しき仲にも礼儀ありと...っ」
俺が話終わる前にさらに距離を詰めてくる。
「問題ないならいいじゃん。」
有無を言わせない笑顔を見せてくるため、諦める。
これから、異性との距離感を覚えていけばいいか。まだ、今年7歳になる子供だから。
ーー
入学式当日。
真新しい制服に身を包んだ。
ノエラと一緒にグランツ初等学校へ登校し、門をくぐる。
「これより、聖歴526年グランツ初等学校入学式を始める。」
へぇー、今聖歴526年なのか。じゃあ俺が生まれたのは聖歴519年か。
そんなことを考えている中、入学式は淡々と進んでいき、学長の話の時間になった。学長の名前は、『モールス・ベルーナ』と言う名前だ。
「入学おめでとう。新入生諸君。これから三年間この学舎で切磋琢磨し、たくさんのことを学んでくれ。この学園から『エルシオン』へと旅立てる生徒ができることを期待している。以上だ。」
エルシオンへと旅立てる?エルシオンは、『学術都市エルシオン』のことだよな?選ばれた人間だけが通えるところなのか?
ーー
入学式が終わり、教室へと移動する。




