第10話 適性検査
入学式が終わり、学校制度について説明がされた。
この世界の学校制度において重要な点は一つだけだ。
優秀な人間がより良い教育を受けられること。
良く言えば、実力に見合った教育が受けられるってことだ。
詳しく言うと、初等部卒業の時点で、優秀な生徒は王都の学校へ入学する。さらに優秀な生徒は、『学術都市エルシオン』の学校へ入学できると言うものだ。これは、中等部、高等部の卒業の際も発生するシステムだ。
現代の受験みたいなものだ。だが、定員が無いため優秀な人間が多くいれば多くの生徒が上に行き、全然いなければ誰も上に行けないと言う違いがある。
ーー
学校制度について説明があった後、今後の予定が話された。
明日は、適性検査。明後日は、結果を元にクラス分け。一年生は、適性によってバランス良く分けられる。2年生以降は、実力で分けられるそうだ。
同級生は、40人で2クラスに分けるそうだ。
ーー
全ての説明が終わり、今日は解散となった。
知り合いはノエラしかいないため、一緒に寮までの帰路に着く。寮と学校までは、徒歩5分の距離しかない。
「この前も話したけどクラス分け、一緒になりたいね。」
「分け方が結構ランダム要素強そうだから半半だね、一緒になれるかは」
俺の言葉を聞いたノエラは、ムーッと頬を膨らませる。いちいち仕草が可愛く、ドキドキしてしまう。
「そう言うこと言ってるんじゃないの!アッシュは私と同じクラスになりたくないの?」
「えっ?そりゃノエラと一緒のクラスになりたいよ。」
「...良かったぁ。アッシュが同じ気持ちで。でも来年からはアッシュと同じくらい強くならないと一緒にいられないんだよね?」
「先生の話を聞く限りだとそうだな。俺もノエラに置いていかれないように頑張らないと。」
「そんなことないよ。だってアッシュは私に色々なこと教えてくれたんだから。きっと下のクラスに行くとしたら私のほうだよ。だから頑張らないとっ!」
「いやいや、そんなことないって。ノエラは無詠唱だってすぐ覚えたんだから。あっ、寮ついたね。また明日。」
「うんっ!また明日。バイバイ」
ノエラが女子寮に入っていくのを見送った後に、俺も男子寮に入っていく。
ーー
翌日、ノエラと一緒に登校して教室の席に着く。
時間になると先生が入ってくる。名前は『エリス・ブランシュ』。20代後半から30代くらいの女性教師だ。
「今から、適性検査の説明を始めます。」
適性検査の項目は、3つ。
1個目は、魔力測定。『素質量』と『努力量』の判別ができるそうだ。
2個目は、属性適性。適性のある属性の判別を行う。
3個目は、剣術。これは、今現在剣術をできる生徒だけが行う。
「早速、魔力測定から始める。演習場に移動だ。」
ーー
教室から演習場に移動する。
演習場は、特に何もない、安全のために結界に囲まれた運動場みたいな場所だ。
「魔力測定の方法は、この測定器に魔力を込めるだけだ。一緒に属性適性も分かる。では名前を呼ばれた生徒は前に出てくるように。」
ーー
特に何事もなく淡々と名前を呼ばれ測定が進む。
「アッシュフォード・グレイブ」
「はいっ!」
名前を呼ばれ測定器の前に立ち手をかざす。
「いつでもいいぞ。」
「分かりました。」
測定器に対して魔力を込めると緑がかった色に光る。
「これは驚いたな。『素質量』は少し高い程度だが『努力量』が7歳にしては高すぎだ。いつから魔法を使い始めた?」
「3歳の時からです。」
「なるほどそれでか。...属性適性は風属性の適性が少し高い程度で突出してこれというほどでもない。以上だ、下がっていいぞ。」
紙に何かを記入しながら結果を淡々と報告してくる。
エリス先生から結果を聞いて、今まで努力した結果が数値として現れ、嬉しく思いながら生徒の集まりの中に戻る。
「次、ノエラ・フォレスト。」
ノエラが同じように測定器に魔力を込めると、他の生徒とは違う一際大きな青白い光が灯ったため、注目が集まる。
当のノエラ自身は「えっ?、えっ?」と困惑している。
結果を記録していたエリスとは別の教師が興奮している。
「すごい、すごいぞ。こんな結果初めてみたぞ。『素質量』が高すぎる。魔力量だけで見るなら、上級魔法を使える量だぞ。属性適正も水属性の適性が一番高いが、どの属性でも平均以上の高さだ。」
その言葉に演習場に居る新入生達からどよめきが起きる。
「おい聞いたか今の」
「もしかしてどこかの貴族様なんじゃないの?」
「とんでもない奴と同学年になっちまったな。俺たちは一生2位争いになりそうだ。」
そんなざわめきの中、この状況を作った張本人のノエラは、注目を集めていることに恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして身を縮ませながら生徒達が集まっている場所に移動する。
ノエラが来るや否やノエラを囲み質問攻めが始まる。
「さっきのすごかったね、名前なんていうの?」
「どこ出身なの?グランツ?」
「どこかの貴族様なんですか?」
ノエラは、さまざまな質問に困惑しながら答える。
「え、えっと...ノエラです。...ルミィの町出身でただの平民です...」
ノエラの回答を聞くと新たな質問がさらに投げかけられた。
ノエラは、生徒に囲まれながらも周りをキョロキョロと見て、誰かを探していた。
そんなノエラと目が合うと、助けを求めるような顔で見られるが、ノエラが俺以外の新しい友達を作るいい機会だと考え「がんばって」と口パクで伝える。
ざわめきの中、生徒たちがノエラを囲む様子を見て面白くなさそうな顔をしたガタイのいい男とヒョロガリの男そして顔立ちの整った男がいた。
ーー
生徒たちのざわめきはエリス先生の声で治った。
「諸君、静かに。全員の魔力測定及び属性適正の検査が終了した。次に剣術の検査を始める。剣術ができる者は、手を挙げろ。できない者はいずれ授業であるからお手本と思い見学しておけ。」
手を挙げたのは俺も含めて8人ほどだった。その中にはさっきの3人の男子もいた。
「8人か。では実戦想定のトーナメント戦をしてもらう。」
一回戦第一試合は、3人組の男の一人ガタイのいいジムとピトー。ジムの勝利
一回戦第二試合は、アッシュと3人組の一人ヒョロガリのザック。俺が勝った。
一回戦第三試合は、ルークとゴード。ルークの勝利
一回戦第4試合は、3人組の顔立ちの整ったルーカスとトビー。ルーカスが勝った。
二回戦第一試合は、俺とジム。問題なく勝利。
二回戦第2試合は、ルークとルーカス。ルーカスの勝利。
決勝戦。俺対ルーカス。
「おい、アッシュフォード。ジムとザックに勝ったからといって調子に乗ってんじゃないぞ。俺はお前たち平民と違って貴族なんだからな。」
「なるほど、貴族だから自分より目立ったノエラのことを見て面白くなさそうな顔してたんですね。自分より目立ったから。」
「あ?舐めてんのか平民如きが。あんな女すぐに俺に従うさ。」
こいつ本当に7歳児か?7歳が発していいセリフじゃないだろ。だが、友達を馬鹿にされたのは腹が立つな。こんな辺境の学校に通う貴族なんて大した力持ってないだろ。手加減はいらないな。試合を見てた感じ、剣の腕前もそんなにだった。
「初め!」
試合開始の合図が出た瞬間、風神流を使い一気に間合いを詰め、ルーカスを吹き飛ばす。
「止め。勝者アッシュフォード。」
あんなに自信満々だったのに弱すぎだろ。
受け身を取れなかったルーカスは医務室に運ばれる。
「これにて、適性検査は終了する。今日はここまで解散。」
ーー
放課後、ノエラは生徒に囲まれる前に急いで帰る。
そんなノエラを追いかけ話しかける。
「検査の結果、凄かったな。多分一位はノエラだな。」
「ありがとうアッシュ。アッシュも剣術、すぐに終わらせてすごかったね。」
「父さんと修行してたから流石に同年代には負けないだろ。」
「あはは、ギルバードさんスパルタだからね。」
笑い合っていたノエラが、ジト目で俺を睨みつけてくる。
「それよりもアッシュ。...なんで助けてくれなかったの。目があったの気が付いてたよね。みんなに囲まれてめっちゃ恥ずかしかったのに。」
「ごめんごめん、ノエラが色んな友達作るチャンスかなって思って。それに俺が行ったところで何もできなかったって。」
その言葉を聞き、ぷくっと頬を膨らませる。
「むぅ〜!アッシュがそばにいてくれるだけで違うのに。」
「えっ!?」
ノエラは、その言葉を言った後、顔を真っ赤にしてパッと下を向く。
ノエラ可愛すぎだろ、流石に。こんなこと言われたら俺のこと好きなのか?って勘違いするよ。...だめだ、惑わされるな。まだ7歳のノエラに恋愛感情なんてあるはずない。あくまで友達に対して言っているだけだろう。
「...今回のお詫びに今度、僕の言う事なんでも聞いてね。」
「分かったよ。じゃあ、また明日ね。バイバイ」
「約束だよ。バイバイ、アッシュ。」
寮の前でノエラと別れ、自室に戻る。
ベットに腰掛け、ふと思い出す。
「あっ!あの貴族のこと気をつけるように言うの忘れてた。明日ちゃんと伝えないとな。」




