第6話 無詠唱
しばらくは、剣術と魔法の特訓の繰り返しの日々を過ごしていた。
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この前のギルバードとの実戦練習で感じた課題点は、剣術の技術面もあるが、剣の打ち合いをしている時に詠唱をして魔法を放つ余裕なんてないことだ。
そこで本格的に無詠唱魔法の特訓を始めようと思った。
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詠唱は、魔法発動に必要な『想像力』の代わりとなっている。裏を返せば、想像さえできれば詠唱はしなくて良いと言うことだ。
まず初めに想像がしやすいウォーターボールの無詠唱から始めることにした。
空気中にある水分を手のひらに集めるように想像しながら魔力を込める。
少しずつ少しずつ水の塊が掌の上に集まっていく。
「よし、水が集まってきたぞ。この調子だ。集中しろ。」
さらに魔力を込めると、詠唱を使って発動するほどの大きさまで水の塊ができた。
「やった、成功だ。だけど、『想像力』が足りないのか?魔法が成功するまでにいつもより時間がかかるし魔力の消費も多い気がする。何度も練習する必要がありそうだ。」
それから何度も詠唱なしにウォーターボールを発動する。無詠唱を繰り返すことによりだんだん発動するまでの時間が短くなり、魔力の消費も詠唱する時と変わらない量くらいになっていく。
「ウォーターボールは無詠唱でも問題なくできそうだな。明日は、『ウインド』の無詠唱を試してみるか。」
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その後も、各属性の無詠唱での魔法発動は成功した。
それから、魔法の応用方法を考えた。
「戦う時に剣以外にも魔法を使えたら絶対に強いと思うんだよな。うーん...そうだ、『ウインド』を足元に使ったらめっちゃ早く移動できるんじゃね。よし、早速試すか。」
庭に出て足元に魔力を集中させる。
「ウインド」そう呟くと足に風が巻き起こり、制御できずに勢いよく家の壁にぶつかる。
「痛ってぇ、でもこれを制御できれば早く移動できそうだ。」
そんなことを考えていると音にびっくりしたシャロンが駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?アッシュ様、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です、シャロン。ご心配なく。」
「旦那様と奥様がグランツの病院に行っている間、アッシュ様のお世話を任されましたので心配しますよ。」
『グランツ』とは、俺が住んでいる『ルミィの町』の隣にある大きな都市のことだ。よく、この小さな町にないものを買いに行っている場所だ。今、両親はお腹の子の検査のためグランツに行っている。
「まぁ心配しないで。ちょっと魔法の練習してるだけだから。」
そう言うとシャロンは「あまり無理をなさらないでくださいね。」と言い家の中に戻っていく。
よし、続きをするか。とりあえず魔法は自分の意思次第で色々な場所に発動できることがわかった。でも、手に発動する時も制御が難しい。
繰り返す練習するしかなさそうだな。
それから、両親が帰ってくるまでの2日間繰り返し特訓した。何度も失敗したためシャロンに心配され、特訓中はシャロンにずっと監視されていたが、無事制御に成功できた。俺が喜ぶとシャロンも一緒に喜んでくれた。今まで、距離を感じていたが少し距離が縮まった気がした。
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両親がグランツから帰ってきた。
「おかえり母さん、病院はどうでしたか?お腹の子は順調でしたか?」
「ただいまアッシュ、お腹の子は順調に育っているそうよ。女の子だって。予定では来月産まれるそうよ。」
「来月ですか?楽しみだなぁ。あ、母さんは椅子に座って休んでてください。」
机から椅子を引き出しエレノアを座らせる。
「ありがとう、アッシュ。」
そう言うと頭を撫でてくれ、自然と笑みが溢れた。
「そうだ、父さん。新しい技考えましたよ。」
「新しい技?どんなやつだ?」
「まあ、見てからのお楽しみです。早速庭に行きましょう。実戦で使えるかみてみてください。」
ギルバードと一緒に庭に出る。エレノアは窓から俺たちの様子を見守り、唯一俺以外にこのことを知ってるシャロンはエレノアのそばに仕え、様子を見守っている。
「行きますよ...『ウインド』」
そう言い、足に風を纏い地面を蹴ると子供の脚力とは思えないほどのスピードで走り抜けた。
「すごいぞアッシュ。これなら一気に間合いを詰められる。不意打ちにも撤退にも使えるぞ。」
ギルバードに褒められると嬉しくなり誇らしげに言う。
「すごいでしょ、父さんたちがいない間に練習したんだ。最初は制御できなくてシャロンに心配かけたけど。」
シャロンに笑顔でピースをして、喜びを表す。
するとシャロンも嬉しそうな顔でピースを返してくれる。
「ちょっと、驚くのはそこじゃなくて魔法を詠唱なしで使っていることでしょう。どうやってやったの!」
エレノアは、魔法は詠唱して使うものと言う常識を覆す状況に誰も反応していないことにツッコミを入れた。
「そう言えば詠唱してなかったな。その後の行動に目が入って全然気づかなかったぜ。どうやって詠唱せずに魔法を発動したんだアッシュ。」
「実は、父さんと実戦練習した後、剣を使っている時も魔法使いたいなぁと思ったんだ。だけど、詠唱してたら時間がかかるなと思って。詠唱は『想像』を補う行為だから想像さえできたら魔法は使えるんじゃないかと思ったら本当に使えたんだ。」
「『使えたんだ』ってそれすごいことだろ?なぁエレノア。」
「すごいことなんてレベルじゃないわよ、常識を覆してるんだから。アッシュは天才だよ。」
「天才だなんて。えへへ、嬉しいな。」
天才と言われてニヤけてしまう。




