第5話 剣術
4歳になり数日が経った頃、父ギルバードは俺に剣術を教えるため張り切っていた。
ーー
庭でギルバードと向き合いながら立っている。母エレノアは家の中からその様子を見守っていた。
「アッシュ、お前ももう4歳になった。そろそろ剣術を教えようと思う。剣術を教える時は、父ではなく師として接する。いいな。」
ギルバードは、剣術を教える前に最終確認を行う。
「よろしくお願いします、父さん。」
「いい返事だ。だが最初は座学からだ。そんなに気を張らなくていい。」
そう言うと、この世界の剣術の流派と階級の説明を始めた。
ーー
ギルバードが教えてくれた内容はだいたいこうだ。
流派は三つ。
闘気を纏う『闘神流』
素早い太刀筋の『風神流』
相手の攻撃を受け流しカウンターを行う『鏡神流』
階級は6つ
それぞれの流派のトップである『闘神』『風神』『鏡神』
トップに認められた人たち『闘王』『風帝』『鏡皇』
それぞれの奥義を習得した『闘伝』『風伝』『鏡伝』
その下に、『上級』『中級』『下級』の順に階級がある
そんな中で、ギルバードは『闘神流』と『鏡神流』は上級。『風神流』は風伝の階級に位置するらしい。全ての流派を学ぶ人間は少ないらしいから、Aランク冒険者と言っていただけあってギルバードの腕前は高そうだ。
ーー
説明を終えたギルバードは、木製の剣を渡す。
「ほら、とりあえず素振りをしてみろ。」
ーブンッ、ブンッと風を切る音と共に父が庭で剣を振っていたように剣を振ってみる。
初めて剣を振ってみたが手がジンジンとしてきた。素振りでこれなら剣同士で打ち合う場合ってどれだけ手が痛くなるんだよ。
「初めてにしては上出来だろ。だがまだ力強さが足りない。それだとただ剣を振っているだけだ。」
初めての素振りにそんな無茶なこと言うなよ。と思いながら父の教えを聞く。
「アッシュは今剣を振り下ろす動作に強弱がない。剣を振り下ろそうとする動作では力を込めず素早く振り下ろし、相手と剣を撃ち合う瞬間や相手を切る瞬間に力を込めるイメージを持て。」
「お手本を見せる。よく見ておけ。」
ーシュッ、シュッと俺が振った時とは違う、早く力強い風を切る音が聞こえる。
それから一日中素振りについて教えてもらっていると日が沈み出した。
「今日はこんなもんだろ。初めてにしては上出来だ。明日からこの素振りを毎日50回しろ。素振りをできるようになってから実践練習に入る。いいな。」
「はい、わかりました。」
「よし、いい返事だ。それじゃ家に戻るか。」
ーー
それから毎日、素振りを50回し、終わった後には魔法の特訓をする。そんな生活が一ヶ月続いた。
素振りの影響で豆だらけになった手を、母が優しく手当てをしてくれる。そしてよく「頑張るのはいいことだけど無理はしないでね。」と頭を撫でてくれる。
「素振りを初めて一ヶ月が経った。だいぶ素振りも形になってきたからそろそろ実践を始めるぞ。とりあえず俺に攻撃を仕掛けて来い。」
その言葉を聞き、覚悟を決め叫びながらギルバードに攻撃を仕掛けにいく。
「オラァァァァァッ!!」
全力で仕掛けた攻撃は、ギルバードの剣によって簡単に流され目の前にギルバードの剣が迫っていた。その剣は俺の頭にコツンッと軽い音を立て当たった。俺は腰が抜け、尻餅をついていた。
「これが鏡神流の基本、受け流しとカウンターだ。まずはこれを覚えてもらう。」
そこから、鏡神流の特訓が始まった。
ーー
それから4ヶ月後。
「今から試験を始める。俺の攻撃を受け流し、カウンターができれば次のステップに進む...行くぞ。」
そう告げるとギルバードは、地面を蹴り間合いを詰め剣を振り下ろす。対する俺は、剣の軌道を必死に追いながら攻撃を受け流そうとする。
カンッと剣が当たる音と共にギルバードの剣を受け流し反撃をする。俺の反撃をギルバードは簡単に受け流す。
「はぁ、はぁ」と息が上がる。
「どうですか、出来ていましたか。」
そう聞くと満足そうに笑いながらギルバードが答える。
「上出来だ。これなら次のステップに進めるな。」
「よっしゃあぁぁぁぁ!」父の言葉を聞き、思わず叫んでしまう。
その様子を見守っていた母エレノアが、「お昼ご飯の用意できたわよ。」と声をかける。
家族みんなで食卓を囲み談笑をしながら、お昼ご飯を食べているとエレノアが真剣な表情をする。
「実は、赤ちゃんができたの。」
えっ!と言う表情に俺とギルバードはなる。
そしてギルバードがエレノアに抱きつき嬉しそうな顔をする。
「エレノア、ありがとう」そうエレノアに対して感謝を告げ、俺に話しかけてくる。
「喜べアッシュ、お前に兄弟ができたぞ。」
「そうよ、アッシュちゃん。弟か妹かまだわからないけどお兄ちゃんになるのよ。」
両親が、そう声をかけてくる。母の元に駆け寄り、抱きつく。
「俺、お兄ちゃん頑張るよ。」
3人で抱き合いながら新しい家族の誕生を心待ちにする。
ーー
それから、風神流と闘神流の基本も教えてもらいながら、剣術の特訓を続け、俺も5歳となり、剣術の特訓を始めて一年が経った日。
「剣術を教え始めてちょうど一年だ。アッシュお前の腕前を見せてみろ。」
ギルバードは、構える。
深呼吸をし、集中し『闘神流』の基本である闘気を纏い身体能力を高める。
「オラァァァァァ!!!」
地面を蹴り一気に距離を詰め、『風神流』の風のように素早い太刀を闘気で強化した力を目一杯こめ、ギルバードに打ち込む。
ギルバードは満足そうに笑みを浮かべながら、攻撃を受け流す。
「風神流奥義『斬空・鎌鼬』」
その言葉と共に、俺が使った風神流とは比べることができないほどの目に見えぬ無数の斬撃が俺を襲う。
ーバンッ!
ギルバードからの攻撃を必死に受け流そうとしたが一発目の斬撃が剣に当たった瞬間、庭に植えてあった木に打ち付けられる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
全力で攻撃を仕掛けたことや木に当たった衝撃と手に残るジンジンとした感覚に息が上がる。
木に背を預け息が上がっている俺にギルバードが近づいて手を差し伸べる。
「一年でよくここまで上達した。それぞれの流派『初級』の力はあるだろう。」
ギルバードの手を取り立ち上がる。
「最後の攻撃はなんですか?奥義って聞こえたんですけど。」
「いきなり打って悪かったな。あれは、風神流奥義の『斬空・鎌鼬』だ。よく剣に当てることができたな。あの技を初見で剣に当てることができるなら上出来だ。」
「たまたまです。全然見えてませんでしたから。」
訓練のフィードバックをもらっていると、お腹が少し膨らんでいるエレノアが庭に出てくる。子供の性別は女の子らしい。
「ギルバード、5歳の子供に奥義なんて使って、何かあったらどうするの」
エレノアは、俺に対し治癒魔法をかけながらギルバードに抗議する。
「違うんだ、誤解しないでくれ。アッシュなら大丈夫と思ったしちゃんと当たった時には手加減したから。」
ギルバードは必死に弁明する。さっきまでのかっこい姿が台無しだ。それにしてもあの衝撃で手加減してたのか。まだ手がジンジンするぞ。
「アッシュちゃん、鬼畜なパパは放っておいてお昼ご飯食べようか」
エレノアは、俺と手を繋ぎながら家に向かう。
「待ってよ、エレノアァァ。アッシュお前からも何か言ってくれよ。」
情けない父の言葉が聞こえてくるが無視をして家に入ると、シャロンが玄関で待っており「お疲れ様です。」とタオルを渡してくる。




