第27話 レバーノ中等学校
入学式当日、剣の持ち込みはできないためアッシュは鞄だけを持って学校に登校する。登校と言っても寮は学校の敷地内にあるため、少し歩く程度で校舎までたどり着くことができる。
アッシュが正門の方を見ると次々と馬車が止まっては生徒が降りてくる。その一方で普通に歩いて登校している生徒もいる。
アッシュが身分が高い人が馬車で登校してるのかな、と思いながら校舎の入り口へと歩いていく。
「いよいよ今日からか...頑張るぞ」
気合いを入れ直し、校舎に入ると貴族学校なのも納得な豪華な内装となっていた。しかし、学校の外観と同様に古い伝統がありそうな様子を感じられる木造で造られている部分も多かった。
中には先生や上級生と思わしき生徒たちが入学式の会場まで案内をしていた。アッシュは、案内されるまま会場へと辿り着いた。
それぞれ決められた席へと案内され、アッシュの席は後ろの方だった。アッシュが席に座った時には前方に同じ学年になると思われる生徒たちがいた。席の空白数を見るとアッシュの到着は遅い方だった。
(この席順ってやっぱり身分の高い順なのか?貴族以外にも俺と同じ初等学校で成績が良くてここに来てる平民とか商人の家出身の人とかも少数だけどいるらしいけどな。俺と同じ列にいる生徒たちがそうなのか?)
アッシュが考え事をしていると生徒が全員揃ったのか入り口の扉がバタンッと大きな音を立てて閉められる。
入学式は、校長の話があったり生徒会長の話があったりと特段変わり映えのしないものだった。アッシュは、その話をどこの世界でもこういった学校の式典は眠たくなるなと思いながら聴いていた。
入学式が終わると新入生は生徒会や先生に連れられて演習場へと移動した。どうやらグループに分けられてグループ内で実践形式の総当たりをするらしい。
今年の新入生は全部で30人おり、AからFの6グループに分けられるそうだ。グループの分け方は、学校側が適当に決めたそうだ。
ルールは、シンプルで一対一の魔法、剣術なんでもありの対戦だ。対戦中は、グランツでも使われてた実践練習用の致命傷だと判断されると飛ばされる結界が展開される。
アッシュは、Cグループに選ばれた。グループごとに指定された場所に行くとそれぞれグループメンバーの名前が書かれた名簿と対戦表が渡された。
ーー
Cグループ
シャーロット・フォン・イグニス(11歳)
セリア・フォン・レイリア(13歳)
ヘンリー・フォン・バレン(10歳)
シド・コリンズ(10歳)
アッシュフォード・グレイブ(10歳)
ーー
(フォンがついてるやつは、貴族出身か。爵位はわからないけど貴族が3人、俺と同じ平民か商会の子供が一人か....あれなんで年齢が違うんだ?多分この年齢って今年何歳になるかだよな?)
対戦表に記載されてる年齢を見てアッシュは疑問を持つ。
「あのすみません、なんで年齢が上の人がいるんですか?」
アッシュは近くにいた生徒会の生徒に質問をする。
「ああ、君は初等学校からの子か。なら知らなくても当然だね。この学校は、10歳で入学するのが基本なんだけどそれぞれの家での教育期間を長く取りたいとか色々な事情もあるから三つ上、13歳までに入学すればいいって決まりがあるんだ。だから三つ上までは同じ学年にいる可能性があるってことだよ」
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
「また何かあったら遠慮せずに聞いてくれていいから」
その生徒は丁寧にアッシュの質問に答えてくれた。
(そういうことか...やっぱり貴族ならではだな。それにやっぱり初等学校に行かない分それぞれの家で教育を受けてるのか...他の人の実力がどれほどか楽しみだな)
アッシュは、未知の相手に少しだけワクワクする。
アッシュの最初の相手はシャーロット・フォン・イグニス。試合は3回戦目に行われる。1回戦目がシャーロット対セリアなのでアッシュはどんな闘い方をするのか観察する。
シャーロットは、エレノアやフィオナのような雪のような白色ではなく白色に灰色が混じったような白銀の髪を一つでまとめたポニーテールの少女だった。
一方セリアは、金髪ロングの少女だ。
二人が戦いの準備をする。シャーロットは木剣を握るがセリアは、魔法の杖を握る。
(なんだあれは...魔道具ってやつか?初めて見たな本物。どんな性能なんだろうか)
「では、試合開始!」
アッシュの質問に答えてくれた生徒会の生徒が試合開始の合図をした。
「火球よ」
まず最初に動いたのはセリアの方だった。セリアが言葉を発すると数十発の火の玉がシャーロットを襲う。
シャーロットは、避けに徹する。被弾しそうになると木剣で身を守り、セリアの攻撃を無傷で乗り切った。しかし、火の玉を剣で弾いた際に爆発し、煙が舞う。
(すごいな...この数の『ファイアーボール』を一度に出せるなんて。それに、ファイアーボールはあんな派手に爆発しないはずだ。これもあの杖のおかげか?あの杖は、放てる魔法の数を増やすとか魔法が弾かれた時に目眩しの煙が出るとかそんな効果なのか?面白いなぁ...相手のシャーロットは剣しか使ってないが魔法は使えないのか?)
煙が舞う中で、セリアは続けてライトアローも放つ。
攻撃を防いだシャーロットはこっちの番だと言わんばかりに煙から飛び出しセリアに向けて突進していく。セリアは冷静に次の魔法を放ち応戦しようとする。この短距離であの数の魔法を放たれたら不利のはずのシャーロットの口元にはニヤリと笑みが浮かんでいた。
「なっ!」
ボカァァァンとセリアの背後で爆発が起こる。セリアはその攻撃が直撃する前に結界の効果で場外へと出される。
「試合終了、勝者シャーロット」
審判が宣言をする。シャーロットは当然とばかりに感情を表に出さずに椅子に座る。
(剣は囮か...魔法が使えないと思わせて煙の中で魔法を放ち背後から攻撃する。すごいな、相手の作戦をも利用する。それに多分あれは火属性の中級魔法『フレイムバースト』だ。それを本来の威力を維持したまま爆発範囲は落としていた...魔力操作が完璧だ)
続く第二試合は、ヘンリー・フォン・バレン対シド・コリンズの試合で勝者はヘンリーだった。
いよいよアッシュの試合の番となる。シャーロットとアッシュは向かい合う。
「あなた平民でしょ?私が貴族だからって遠慮しなくていいわよ」
シャーロットがそう告げるとアッシュは、頭の片隅にあった貴族相手だから負けた方がいいのかなという不安がなくなる。
「それでは、試合開始!」
「火よ、燃やせ」
審判の合図とともに先ほどの試合とは打って変わりシャーロットは魔法での攻撃を始める。シャーロットが最初に放ったのは火球だ。
ドカァァァンッ
火球は、巨大な壁に阻まれ爆発する。
アッシュは、それがさっきの中級魔法『フレイムバースト』と同じものか判断できなかったため土属性の中級魔法『城壁』にて前方に巨大な壁を出現させた。
(後三試合あるのに中級魔法一発使っちゃったな)
アッシュはこの後どう動いていくか考える。
シャーロットは、アッシュとの間を巨大な壁によって阻まれる。火属性のさまざまな魔法を使って攻撃をしているもののこの壁が簡単に破れるものではないと思っている。
(この壁がある限り向こうも攻撃は仕掛けれないはずだ。この壁をアイツが消した瞬間勝負を決める)
シャーロットがそんな考えを巡らせている。その時壁の上からアッシュが突撃してきた。
「はぁ!?」
シャーロットが困惑した声を上げながら急いで木剣で応戦する。
バァンッと木同士がぶつかり合う鈍い音が響く。
-数秒前-
アッシュは、正体のわからない魔法と戦うよりも近接戦で剣で勝負することを選ぶ。
ヒュゥゥゥゥ
足元に『ウインド』を使い、少しずつ浮いていく。
(これ使うとノエラとの特訓を思い出すな。危なすぎて何回も止められたっけな)
壁の上へと辿り着いたアッシュはそのまま壁を足場にまだアッシュの存在に気づいていないシャーロットの元へと突撃する。
-現在-
アッシュの予想外の奇襲をシャーロットはなんとか防いだが、防戦一方となる。
アッシュは、剣で攻撃しながらも魔法を放つ。シャーロットはアッシュの剣と魔法を組み合わせた攻撃を紙一重で交わしたり防いだりしながら戦う。
(コイツ、魔法の発動スピード早過ぎだろ。なんなら詠唱してないぞ)
アッシュは、距離を詰め攻撃していたが一旦後退する。その間に、シャーロットは立て直す。
(物量で一気に終わらせる)
アッシュは、風の刃、火の玉、光の矢など複数の魔法を同時に発動する。
それを放つと同時にアッシュ自身も突撃する。
「くっ!」
圧倒的なアッシュの物量による攻撃に最初はなんとか防いでいたシャーロットも最後には耐えきれずに結界が発動し、場外へと飛ばされる。
「勝者アッシュフォード」
アッシュの勝利が宣言される。
「はぁ、はぁ...一試合目から疲れたな」
息が上がっているアッシュをシャーロットは鋭い目つきで睨む。アッシュは、怖いなぁと思いながらその目線に気付かないフリをした。
その後の試合は、シドとヘンリーには勝ったがセリアには負けてしまう。
(最後の試合は明らかに魔力が足りなかったな...魔力の使い方も課題の一つだな)
ーー
翌日、学校に登校した生徒たちは教室へと入っていく。教室内は、教壇を中心に扇形の階段状に広がる机の配置となっていた。アッシュは、行ったことないけどテレビとかで見た大学の教室みたいだなと思う。特に席は指定されてなかったため、縦は真ん中くらいの位置に、3列のうち右側に置かれた席へと座った。
アッシュは、当然知り合いなどいないため1人ポツンと座る。他の生徒たちは、元々実家同士が知り合いなのか数人まとまったグループができていた。そんな中、一際一人の生徒を囲むように人が集まっている場所があった。
囲まれている生徒は、金髪碧眼の整った顔立ちの男子だった。その男子は、周りに集まった生徒たちと話しながら人の良さそうな笑顔をしていた。周りの生徒たちは、少しでも男子と仲良くしたいと思われるような様子だった。
(貴族の令息や令嬢たちに囲まれてるあの男子は何者なんだ?俺たち新入生の中で一番爵位が高い生徒なのか?それにしてもイケメンだなぁ...まぁ、授業以外で関わることなんてまずないだろ)
そんなことを考えながら授業が始まるのをぼーっとしながら待っているとアッシュと同じ机に一つ席を空けて座る女子生徒がいた。昨日、戦ったシャーロット・フォン・イグニスだ。
(えっ?なんでこの人わざわざここに座ってきたの?他にも席空いてるだろ。まさか昨日負けた恨みを晴らすとかか...なんか喋ってくれよ、怖ぇんだよ)
アッシュは突然の無言の来訪者に混乱していた。
少し無言の間が続いた後、流石に気まずくなったアッシュは自分から声をかける。
「あの...昨日はいい試合でしたね。あの『フレイムバースト』みたいな魔法ってなんですか?」
「あれは『フレイムバースト』に似たようなもの。この先は私の家の秘術だから教えない。質問に答えたんだから次はこっちの質問に答えてもらうわ」
「はい...」
有無を言わせないシャーロットの口調にたじろぎながら返事する。
(確かにこっちから質問したけど、無言は気まずいだろ。後、さっきから目つきが怖いって。せっかく顔はいいのに可愛いより怖さが勝ってるぞ)
アッシュは、口には出せないため内心で文句を言う。
「あなた、魔法使う時詠唱してなかったよね。詠唱の短縮とかじゃない完全にゼロだったよね?」
「いや、そんなことなかったと思うけどな...」
アッシュは、予想外の質問に少し引きつった声になっていた。
(なんでバレたんだ...戦いに夢中になりすぎで誤魔化し忘れてたのか?まずいな...別になんとなくめんどくさそうだから隠してただけだけど)
「無詠唱なんて珍しいよね。無詠唱ができる人がいるってのは聞いたことあるけど数は相当少ないはずよ。正直に答えて」
席一つ分空いている距離を詰め寄り強い口調で問い詰める。
「はい...詠唱してないです」
「やっぱりね。私にそのやり方教えなさい」
「えっ!?」
シャロットは、アッシュの回答に満足したのか席に座り直して新たな提案をする。その提案にアッシュは驚く。
「まぁ、教えてくれたらあなたが知りたがってる私の家の秘術『エクスプロージョン』を教えてあげるわ」
「それってさっき言ってた『フレイムバースト』に似た秘術ってやつですよね。そんな簡単に教えるなんて言っていいんですか?」
「普通はダメだけど無詠唱について教えてもらう方がメリット大きいもの」
その時、助け舟が出されるように先生が教室へと入ってきた。
(ふーっ、危ねぇ。本来知れないはずの秘術を知れるってのは魅力的だけどさすがにリスクの方が大きそうだな。それにあんまり貴族と関わりたくないし)
授業初日ということもあって内容自体は説明ばかりだった。一年の間は実技もあるが座学が中心となるらしい。後半からは、アッシュも目的の一つである冒険者についての授業も始まるらしい。
ーー
昼休みアッシュは、食堂へ昼食を食べに行った。食堂は、大広間に机が五列に並べてありそれぞれ仲の良いグループで固まって食事がとられていた。
教室の時同様、特に知り合いもいないため食事を受け取ったら空いてる席へ適当に座る。ちなみに、シャーロットは授業の合間の休み時間にも「無詠唱を教えろ」と言ってきたがアッシュが断り続けたおかげで諦めたのか昼休みに入ると他の女子の元へと行った。
(まずいぞ...ぼっちだ。ここに一人でいる生徒を見つけるのが難しいほどみんな固まって過ごしている。まぁ、今日はまだ初日だ。まだ焦る時じゃない。貴族以外にも同じ平民のやつはいるんだからそいつらと仲良くなればいいだろ)
アッシュは、時々食堂を見渡しながら昼食を食べる。そんなアッシュと向かい合う位置に生徒が一人現われる。
「ここ座ってもいいかな?」
アッシュは、一瞬声の主をチラッと見るが、顔までは見えなかった。仲良いやつと来てるんだろうと特に何も考えずに「どうぞ」と答える。
カチャリと机に料理が置かれた音がする。しかしその音は、明らかに一つだけだった。
「初めまして、アッシュフォード君だよね」
話しかけられたアッシュは、初めて相手の顔を見た。その相手は、教室で囲まれていた金髪碧眼の生徒だった。
「俺は、レオヘルト。レオでもヘルトでも好きなように呼んでくれ、これからよろしくな」
「あ、よろしくお願いします。アッシュフォードです」
アッシュは、急に挨拶されたのでたじろいでしまう。
「敬語じゃなくていいって、俺も今年10歳だから同い年だろ?」
「そうですけど...」
「俺が貴族だから遠慮してるのか。ここでは身分なんて関係ないから心配しなくていいぞ」
「それで用件は何ですか?」
そんなこと言われてもなと思いながらも話を切り替える。
「昨日、シャーロットに勝ったんだろ?」
「はい、そうです」
「随分と噂になってたよ」
「噂?なんでですか?」
「シャーロットの実家、イグニス子爵家は武闘派の貴族だ。その実力は王国内でも高いほうだ」
「そうだったんですね」
(だからあんなに無詠唱を知りたがってたのか、強くなるために)
「それにしても随分と詳しいんですね。やっぱり貴族だと他家についても知っておかないといけないんですか?」
「それもあるが全てを把握してるわけじゃない。でも、有名どころは把握してるよ」
「そうですか...レオヘルトさんもいろんな人に囲まれてたからその有名どころってことですよね?」
「うーん、まぁ正解かな。詳しくは教えないけど。俺の家のことなんてどうでもいいだろ?」
(こっちにとっちゃどうでも良くないけどな)
内心そんな感想を抱くが、口には出さない。
アッシュが、昼食を食べ終え席を立とうとした。
「これからもよろしくね」
レオヘルトが人の良さそうな笑みを浮かべる。
「こちらこそお願いします」
挨拶を返して席を後にする。
(ただ挨拶に来ただけでだろ。シャーロットもレオヘルトもそのうち俺に興味なんかなくすだろ。なるべく貴族と関わりたくないし。でも、レオヘルトが何者かは知っておいた方が良さそうだな。面倒ごとになると嫌だし。顔がいいだけであんな人に囲まれないから、多分公爵とかそこら辺の貴族のトップだと思うな)
ーー
アッシュは関わらないと決意を固めていたがそんな決意も虚しく数日後の実技の授業で関わることになってしまった。
授業の内容は、2人1組を作り魔法や剣を教えあるというものだ。アッシュは、ペアを組んでするのに何の意味があるんだと思いながらも、同じ平民同士で少し話すようになった男子生徒とペアを組もうとしていた。しかしそこにレオヘルトが来た。
「アッシュフォード君、俺と組もうよ」
「えっ?俺はこいつと組もうと思ってるから他を当たってください」
「そんなこと言うなよ。ねぇ、アッシュフォード君と俺組んでいいかな?」
レオヘルトが俺が組もうとした生徒に聞くとその生徒は遠慮するように「どうぞお構いなく」と言い別のペアを探しに行く。
「これで問題ないね。よろしくアッシュフォード君。アッシュって呼んでいいかな?」
「はい、それで大丈夫です」
(なんでこっちくるんだよ。おまえのペアなら引く手数多だろ)
「早速始めようか。剣と魔法どっちにする?やっぱり教えやすい魔法にするかい?」
「どちらでも大丈夫です」
「じゃあ魔法にしようか。アッシュの実力はどのくらいなんだ?」
「基本属性なら全属性中級魔法まで使えます」
「へぇ、そうか。さすがだね。初等学校から上がってきただけあるな。俺も適性がある属性なら中級魔法まで使えるよ。どうしようかな、教え合う内容がないな...そうだ、魔法の発動の仕方を教えてくれよ。やっぱり短縮で使ってるのか?」
(こいつ、俺が無詠唱なの知ってて聞いてるのか?それとも単純に質問してるのか?)
「短縮して使ってます」
「なぁ、そのコツ教えてくれよ。一応俺も短縮してるけどどうも苦手で他の人に比べるとまだ長いほうなんだ。君の試合見てた奴が言ってたぞ、色んな魔法を一瞬で出してたってな」
「そうですか」
(どうやら無詠唱まではバレてないみたいだな。でも詠唱の短縮なんてしたことないぞ。理論的には無詠唱と一緒だとは思うけど)
そこでアッシュが導き出した答えは、魔法が発動できるラインまで徐々に詠唱を短くしていくことだった。アッシュのアドバイスは、正しかったのか徐々にだがレオヘルトの詠唱は短くなっていった。
そんなこんなしていると授業終了の合図がされる。
「ありがとなアッシュ」
「自分は何もしてません」
「また、よろしくな」
「色んな人とした方がタメになると思いますよ」
アッシュは、別にレオヘルトのことは嫌いじゃないがあまり貴族と関わりたくないため、遠回しにもう組みたくないことを伝える。
「心配してくれてありがとうな。でも大丈夫だ、まだ聞きたいこともあるしな」
アッシュの提案があっさりと拒否される。
ーー
-王城、レオヘルトの自室-
レオヘルトは、ソファに座りコーヒーを飲みながら考え事をしていた。
(学校に在籍してる間に優秀な人物を見極めるのも王族の役目だが、貴族だとどうしても派閥が発生してしまうからな。その点平民は、向こうの意思さえあれば起用できるから、優秀な平民の目星もつけないとな。
同学年の平民の中で一番実力が高そうなのはアッシュフォード・グレイブだな。
アッシュフォード、グランツ初等学校からの入学...同学年のグランツ初等学校の出身には、エルシオンへの入学が認められた同じく平民のノエラ・フォレストも在籍していた。二人は、同郷でルミィ出身。
今日の詠唱の短縮の話も別に俺は既に教わっていて困っていなかったけど理にかなった教え方だった。魔法についての理論もしっかり理解してそうだったな。
それに将来有望と言われているシャーロット・フォン・イグニスにも試合で勝っている。剣も魔法も実力は申し分ない。
俺の正体に気づいていなくて貴族についての知識が乏しいことが欠点だがそれくらい些細なことだ。
将来、国に仕えてほしいが今のところそこまで興味がなさそうだ。俺のことを避けようとしてることから何事もなく暮らしたいように思える。
貴族の中ならやっぱり、シャーロット・フォン・イグニスだ。イグニス子爵家は、王家に対する忠誠心も厚く、優秀な人材が多い。現当主であるシャーロットの父親も優秀な人物だ。そのせいもあって一部の貴族からは煙たがられておるが表立って言及する問題点も存在しない家だ。その令嬢ということもあってアッシュフォードに負けたものの実力も申し分ない。イグニス家の秘術『エクスプロージョン』も習得しているらしいしな。
今のところこれぐらいか。まぁ、まだ始まったばかりだ。今後、変わってくるだろう)




