第2話 学び①
知識を身につけたり特訓をしたりする前に言語の読み書きができるように、母に教えてもらうことにした。前世では、日本語以外わからなかったが幼い頃からこの世界の言葉を聞き、話せるようになっているおかげで文字の習得にはさほど時間はかからなかった。
子供部屋にある数冊の本から一冊取り出す。
「タイトルは『世界地図』か。一番とっつきやすい部分だな。」
ーー
本を広げると大きな地図が描かれていた。地図上には大きな大陸が二つと少し小さな大陸が一つ描かれていた。左側にある大きな大陸には、『アルカディア大陸』と書かれており右側の大陸には『ノヴァ大陸』、アルカディア大陸の下にある小さな大陸には『ソラリス大陸』と書かれている。
「ソラリス大陸?何か聞いたことがある言葉だな。あー、ソラリス教だ。よく耳にする宗教の名前だな。おおかたこの大陸はこの宗教の聖地ってところかな。」
ページを捲るとそれぞれの大陸について解説されていた。
アルカディア大陸はかつてこの大陸を支配していたアルカディア帝国の名を冠する大陸で今は5つの国に分かれている。
1つ目の国はかつてアルカディア帝国の帝都があった『レバーノ』を王都として力が弱まった帝国が王国に名前を変えた『アルカディア王国』
2つ目は大陸の中央に位置する完全なる中立国にして他の4ヶ国がこの地では争わず優秀な人材の育成の地にすると協定を結んだ『学術都市エルシオン』
3つ目の国はちょうどソラリス大陸の海を挟んだ先の大陸南部に位置する宗教国家、『ヴァルハイト聖王国』
4つ目は北部に位置する実力主義の国、『武装国家ヴィクトリア』
5つ目は海の先に魔大陸との玄関口で冒険者ギルド本部がある東部の国、『レムニア合衆国』
「なるほど、王国に宗教国家、いろいろあるんだな。戦争がないといいけどな。せっかく転生したのに戦争で死にたくないし。おっ、冒険者ギルドもあるのか。やっぱりファンタジー世界は冒険者だよな。」
地図や説明を見ながら不安や期待を感じながらページを捲ると次は魔大陸の説明だった。
ノヴァ大陸はかつて魔王が支配していた場所。他2つの大陸と比べると人族が住むことに適さない環境が多く、魔物の強さも桁違いである。そして『三大種族』が住まう土地。
「なんか冒険者になるのも怖くなってきたな。冒険者になってまでこんな土地絶対に足を踏み入れたくないんだけど。それになんだよ三大種族って、不穏すぎるだろ」
不安が大きくなりながらも最後のページを捲る
ソラリス大陸。人族に最も信仰されている宗教ソラリス教の聖地があり、ソラリス教総本山。かつてこの地に神ソラリスが降り立ち、恵みを与えたとされる土地。
「やっぱり想像通りソラリス教の大陸か。大陸の名前まで冠するなんて相当影響力が強い宗教っぽいな。地球の世界史も宗教の争いは多かったしあまり深入りしない方が良さそうだな。」
ーー
そんなこんなで本を読み終え次の本を出す。
「次の本のタイトルは『世界聖戦』?急に不穏だな。」
恐る恐るページを捲る。
今から500年前、人族の大国アルカディア帝国の王でもあり勇者でもある『アーク・リ・アルカディア』を中心に多種族の連合軍と魔王『ヴォイド・ノヴァ』率いる魔王軍が戦った。この戦いが世界の命運を背負ったことから後に『世界聖戦』と呼ばれるようになる。
聖戦の結末は、勇者アークと魔王ヴォイドの相打ちによる決着。500年前の聖戦以降、魔王ヴォイドの魔力が観測されなくなった。この戦いを『聖歴0年』としそれ以前を旧暦と表し始めた。
「よかったぁー。魔王死んでるんだ。でも勇者と相打ちか。そういえば『かつて支配していた帝国』ってさっきの本の説明にあったけど勇者である王が死んだ影響でアルカディア帝国は力を失って王国になったのか?」
ページを捲ると聖戦がもたらした影響について書かれていた。
聖戦後、王を失ったアルカディア帝国は衰退していき王国としては残ったが大陸全土を支配する力は無くなっていた。
魔王が支配したノヴァ大陸は魔王の影響がなくなったが強力な魔物が跋扈しており、腕の立つ冒険者などしか足を踏み入れるには厳しい土地だった。しかし、その環境に適応できる種族や元々魔王に支配されていた種族などが住み着いていった。ノヴァ大陸に住んでいた種族との交流も徐々に増えていった。
世界は魔王がいなくなり安定したと思われたが、聖戦後に突如として暴れ始めた三つの種族がいた。
一つ目は『鬼人』。一つまたは二つのツノを額から生やした種族。元は人間とは友好的だったが聖戦後、突如として敵対し始めた。現在は海に浮かぶ小島に生息していると情報がある。
2つ目は『雷翼族』。大きな翼と雷を操る種族。聖戦後、空を支配し、雷翼族が通った後の街には雷が落ちた痕跡と消し炭しか残らないと言われていた。現在の生息地は不明だが聖戦終結から5年ほど暴れた後からは雷翼族による大きな被害は観測されていない。
3つ目は『蜘蛛魔族』。元々魔王軍に所属していた魔族。一見妖艶な美男美女に見えるが本質は多種族を欺き暗殺を行う種族だった。しかし聖戦後からは世界各地に堂々と現れてはその場にいる多種族を惨殺していった。現在は、ノヴァ大陸の地下深くに住み着いている。他2つの種族と違い、現在でも多く存在と被害が観測されている種族。
この三つの種族をまとめて『三大種族』とした。そして元々魔王を禁忌としていたソラリス教はこの三大種族をも禁忌の存在としたのだった。
「想像以上に怖わすぎだろ。鬼は日本で馴染みがあって少しは想像ができるけど残り二つなんなんだよ。通った後は消し炭って。他種族を惨殺って。絶対に会いたくねー。まぁ、今蜘蛛魔族以外はおとなしいみたいだし会う確率は低いだろう。それにノヴァ大陸なんて行く予定ないし。この世界思ったよりも過酷だな。ある程度には強くならないとすぐに死んでしまうぞ。」
頭を抱えながら焦りの混じった声で独り言を呟く。
「決めた。目標は学術都市エルシオンに行くことだ。中立国らしいから戦争にも巻き込まれないし危険生物も少ないだろ。どんな基準で入学できるかわからないから今のうちに色々なことをしておこう。
ーー
新たな目標を決め、次の本を探していると『魔法の基礎』と書かれた本を見つけ、引っ張り出す。
「これこれ、やっぱりファンタジーと言ったら魔法だよな。」
ワクワクしながらページを捲る―。




