章間 ギルバードとエレノア①
キャラの外見変更しました
ギルバード ミルク色の髪→黒髪
シャロン 黒髪→水色髪
聖歴517年、アッシュフォードが生まれる2年前。
眉にかかるほどに伸びている黒髪、18歳の少し幼い面影がありながらもその瞳には冒険者としての鋭さが宿っているギルバード・グレイブは、アルカディア王国の南東に位置する小国『自由都市ルーベン』の冒険者ギルドに居た。この国は、アルカディア王国と武装国家ヴィクトリアとの中継地点に位置し、どちらの国にも行きやすい点が冒険者から重宝される土地だったため、ギルバードもこの国を拠点として選んでいた。
ギルバードは、仲のいい冒険者のニコラスと一緒にギルドにある酒場で酒を飲んでいた。身長は、ギルバードより少し低く、無造作に散らした金色よりも少し暗い色の髪で、前髪を少し上げている男だ。傍には、武器である魔法の杖を置いている。
「お前、また別の女と宿から出てきてただろ?いいよなぁ、顔も良くてしかもAランクで。女を取っ替え引っ替えじゃねぇか。」
「またそれかよ。しょうがないだろモテるから。」
「お前、一回死んどくか?」
「怒るなって...そんなに羨ましいならまた紹介してやろうか?」
「マジか?やっぱ持つべきは親友だな!」
そう言うと冒険者の男は、ギルバードの背中をバンバンと叩く。
「相変わらず都合がいいなお前は」
ギルバードは呆れながらもその顔には笑みが浮かんでいた。しばらく談笑しながらギルバードは今回一緒に飲んでる本題を話す。
「久しぶりに一緒に依頼受けないか?最近一緒にやってないだろ?」
「珍しいな、お前から誘うの。いっつも一人で行ってるのに。....まさか何か企んでるのか?」
いつも一人で依頼を受けているギルバードが急にそんなことを言ってくるので、ニコラスは怪訝な顔で聞き返す。
「俺ってそんな信用ないか?」
「ああ、ないな。」
「お前なぁ...まあいいや。ちょっと魔法使いが必要なんだよ。地竜の討伐依頼を受けるから。」
「地竜?なんでそんな面倒なもん受けるんだ?」
「ギルドから直接依頼されたんだよ。」
「Aランク冒険者は大変だな....それにしてもいいように使われすぎだぞお前。普通、ランクが上がったら楽できるんじゃないのかよ。」
「報酬はいいからな。そもそものAランクの依頼が、めんどくさいやつばっかだから別にギルドからの依頼とそんなに変わんねぇんだよ。」
同情的な口調で話すニコラスの発言をやれやれと言った感じで反論する。
「で、どうすんだ?...組んでくれるのか?」
「チッ...しょうがねぇな、お前の頼みだ。組んでやるよ。...その代わりちゃんと女紹介しろよ。」
「じゃあ、出発は明後日だからな。」
ーー
2日後、ニコラスと合流し今回討伐対象の地竜が生息しているルーベンの南東にあるアルヴァルトと言う山に登る。
「山登り始めたがその地竜ってのはどこにいるんだ?」
山を登りながらニコラスが質問する。
「詳しい場所はわかんない。」
「はぁー?...何で地竜討伐にAランクのお前が依頼されてるか疑問だったがそういうことかよ。どうやって見つけんだよ。」
ニコラスは普通Bランクパーティーが討伐する地竜を、Aランクのギルバードに対して依頼があったのに納得し、面倒なことに巻き込まれたと思いながら聞く。
「とりあえず登りながら地竜が住みそうなところを探していく。」
「キリねぇな。本当にこの山にいるのか?」
「最近になってアルカディアやヴィクトリア、それぞれの国の国境付近の村や町を地竜が襲撃してるらしい。で、その地竜がこの山に飛んで帰っているって証言が結構出てる。まぁ、情報はそれだけだがな。」
「おいおいおい、少なすぎだって情報。」
ニコラスは、呆れながら言う。
「そう言うなって、行くぞ。」
それから二人は、山を登りながら竜が棲家にしそうな洞窟や谷、開けた岩場などを探していた。山に登って3日が過ぎた頃、開けた岩場に普通のサイズよりも巨大な地竜を見つけた。
丸太のように太い4本脚、岩肌のような色をした硬い鱗、背中には大きな翼、岩盤すら容易に砕けそうな頭部、爬虫類特有の細い縦裂きの瞳孔を持つ琥珀色の目を持つ地竜だった。
二人は見つからないようにその場を退く。
「デカすぎだろ。あんな巨大な地竜見たことないぞ。」
「くそっ、あいつこのこと隠してたな。」
ニコラスは、普通の地竜よりも遥かに大きいことに驚愕し、ギルバードはここまで大きいことを伝えずにこの依頼をしてきたルーベンのギルドマスターガルシアに対して文句を言う。
「ギル、あのデカブツどうやって倒す?」
「どうやってもなにも俺が前線で、お前が魔法で援護は変わらないだろ?」
「それはそうだけどな。なんか作戦とかないのか?」
「そんなのねぇよ。」
ニコラスは、はぁーとため息をつく。
「相変わらず無鉄砲だな。それならさっさと終わらせようぜ。」
「俺のことよくわかってるじゃないか。」
二人は、地竜がいる岩場のそばまで戻っていく。
「よし、ニコラスまず、お前の魔法を一発当てろ。」
「始めるぞ[光よ、爆ぜろ]」
ニコラスがそう唱える光属性の中級魔法『光子爆裂』が発動する。
ーボカァァァァァァンッ
地竜の体を囲うように光の玉が出現し、一斉に爆発する。
「グウォオオオオオオオオッ!!」
地竜の太い喉から放たれる咆哮が、地面を揺らす。地竜は、攻撃をしてきた相手を探す。
ギルバードは、ニコラスが魔法を放ち爆発した瞬間砂煙に紛れ地竜の脚元へと移動し、脚に対し攻撃を仕掛ける。
ギィンッと音を立ててギルバードが全力で振るった剣の攻撃が鱗に弾かれる。
「相変わらず硬いなぁ、地竜の鱗は。」
ーバコォォォォン
地竜が、ギルバードを踏みつけようとしたため地面が揺れる。ギルバードはすぐさまその場から離れ、地竜の正面に立つ。
「構わず魔法を打ち込め!」
そうギルバードが叫ぶとニコラスは再び魔法を放ち始める。
「[光よ、爆ぜろ][雨よ、敵を穿て]」
そう唱えると最初に撃った『光子爆裂』と頭上から水の矢が雨のように降り注ぐ水属性の中級魔法『穿雨』が、地竜を襲う。ニコラスは、飛べないようにするために翼を中心に狙っていく。
地竜の翼を自ら取っている個体が多いほど鱗に覆われた他の部分よりも耐久性が低い。鱗には傷があまりつかなかったことに対し、翼への中級魔法の攻撃は地竜に大きなダメージを与えることができた。
地竜は、魔法を受けながらもギルバードに対して前脚から伸びている鋭い爪で攻撃する。
ギルバードは、避けながら攻撃できる隙を探す。
「グオォォォォォ」
ニコラスの魔法がついに片翼に穴を開け、地竜は苦しげな咆哮を上げる。
「はぁ、はぁ...やっとか。これで逃げられないぞ。ニコラス、続けて鱗も剥がせ!」
「言われなくてもわかってるよ」
ギルバードの指示に休む暇もなく魔法を地竜に浴びせていく。
ーズドォォォォォン、ガッン
ギルバードが魔法を放つニコラスに近づけないよう、注意を惹きつけながら応戦する。地竜も鋭い爪で巨体とは思えない速度で攻撃する。しかし、魔法が止まることなく撃ち込まれるので攻撃のキレはだんだんと悪くなる。
ードォォォォォン
「ギル、背中が空いたぞ。」
ニコラスは、ついに背中のほんの少しの鱗が外れたことをギルバードに教える。
「オラァァァァァ!」
ギルバードは、それを聞いた瞬間に、素早く地竜の体を登っていき、皮膚が見えてる位置に全力で剣を突き刺す。ブスッと音を立て、突き刺した位置からは血が流れる。
ーズドォン!バコォン!
地竜は背中に乗っているギルバードを振り落とそうとして暴れ回る。
ギルバードは、背中の上で場所を変えながら魔法によって鱗が弱っている位置に次々と攻撃を仕掛けていく。
地竜は、ギルバードを振り落とすために動いたこと、攻撃による出血により次第に弱っていき息絶える。
ーズバァアンッ.......ブシャアアッ!
ギルバードは、地竜の首目掛けて剣を振り下ろす。首は地面に落ち、血が溢れてくる。
「お疲れ、ニコラス。助かったよ。」
「ギルお前の戦い方は無茶苦茶すぎ。」
「そんなこと言って何も言わなくても何をしたいかわかってくれてるじゃないか。」
「それはお前と一緒にいっぱい地竜倒してきたからな。」
お互い軽口を言い合いながら地竜が居た岩場の奥の洞窟に歩いていく。
「なるほど...急にあの地竜が街を襲うようになった理由はこれか。」
ニコラスは、納得したように声を上げる。二人は、おそらく子供であろう寝ている小さい白色の竜を見つける。
「でもこれ、地竜じゃないよな?」
「まぁ、そんなことどうでもいいだろ。ギル、どうする?」
「このまま放っておこう。別に討伐対象じゃないから。」
「Aランクに上がっても何にも変わってないな、討伐対象と敵意を向けてきたやつしか殺さないところは。」
「さっさとギルドに帰ろう。ギルマスにたっぷり報酬貰わないとな。」
二人は、白い竜を放置してアルヴァルト山を降りてルーベンのギルドまで帰る。
「先に飲んでていいぞ。俺はギルマスのとこ行って文句言ってくるから。」
「おう、頑張れよぉ。」
ギルドに入ると、ギルバードはギルマスの部屋へとニコラスは、酒場へと別れる。
ーー
「入るぞ。」
ギルバードはノックもなしにドアを開ける。
「帰ったか、ギル。」
額から右目の眼帯を通って右頬まで伸びた傷があり、白髪混じりのダークグレーの髪をオールバックに纏めているガルシアは、書斎に座りながらギルバードに一瞥もしないで話しかける。
「帰ったか、じゃねぇよ。あんた、黙ってたなあんだけデカいの。」
「サプライズだ。図体だけデカくても同じ倒し方で問題なく倒せただろ?」
ガルシアは、ギルバードの文句に対して悪びれることなく答える。
「....クソオヤジが」
ギルバードは、小声で文句を言う。
「そんなことよりもお前が今日帰ってきてくれてよかったよ。」
ガルシアが机の書類から目を離し、ギルバードを見る。
「急にどうしたんだよ。」
「明日、護衛の依頼を受けてくれ。」
「はぁ!?明日?今日帰ってきたばっかりだぞ。それに俺が護衛の依頼は嫌なの知ってるだろ。護衛専門で受ける奴もいるんだからそいつらに頼めよ。」
ギルバードは、スラム出身のため貴族や商人などを護衛する依頼を受けるのはずっと拒否していた。
「今回ばかりはダメだ。Aランク以上と言われてるからな。それにお前以外のAランクは、他の依頼で遠出しているから今このギルドにはお前しかいないんだよ。」
「珍しいな....あんたがそんなに依頼者の条件を忠実に守るのは。今までだったらAランクって指定されていても護衛専門のBランクに行かせてたのに。」
普段とは違い焦っている様子のガルシアに疑問を持つ。
「本当はお前をこのギルドの代表としてよこすの嫌なんだぞ。いつまで経っても奥義習得しないのに。」
(それはあんたの教え方が悪いからだろ。感覚派すぎるんだよ。)
ギルバードは、剣の師匠でもある『風帝』の称号を持つガルシアに内心悪態をつく。
「悪かったな、覚えが悪くて。」
「翌朝、アルカディア王国側の城門に依頼主は居るから合流しろ。言葉遣いには気をつけろよ。」
「分かったよ。」
ギルバードはそう返事するとギルドマスターの部屋を出て酒場へと行く。
酒場で酒を飲んでるニコラスと合流する。
「報告お疲れ。お前も早く飲めよ。」
「俺は今日はいいや。明日護衛の依頼受けろって言われたから。」
「今日久しぶりに帰ってきたばっかだぞ。それは流石に断ってもいいだろ。俺が文句言ってやろうか!」
「もちろん文句言った。でも、ギルマスがめずらしく真剣な顔してたからな。」
「へぇー、あのおっさんが?それはめずらしいな。護衛対象とんでもない相手なんじゃないのか?」
「かもな。」
「もし、めっちゃ綺麗な令嬢でも手出すなよ」
ニコラスは、揶揄ったようにギルバードに言う。
「誰が手出すか。」
「冗談だよ....お前が手を出さないように今日のうちに発散しておくか?」
「お前それが目的だろ。...まぁ、いいぜ。今回の依頼を手伝ってくれたお礼だ。」
そうして二人はギルドを出て、街にいた二人組の女の子に声をかけそれぞれ別れて宿に入って。
ーー
翌朝、ギルバードは、宿で女の子と別れアルカディア王国側にある南西の城門へと向かう。そこには、すでに一台の豪華な大きい馬車と護衛と思われる騎士20人程度の一団が居た。
ギルバードは、どんな身分のやつが馬車に乗ってるんだとかあんなに大人数護衛がいるなら俺はいらないだろと思いながらその一団へと近づいて行った。
「誰だ!お前は、それ以上近づくな。」
一団の端っこにいた下っ端そうな騎士が剣を構え警告を出す。
ギルバードは、敵ではない意思を示すため両手を上げる。
「俺は、ギルドから来たギルバード・グレイブだ。護衛の依頼を受けてきた。」
「ちょっと待ってろ。」
ギルバードが名前を名乗った後、騎士は剣を構えながらもう一人隣にいたやつに合図を出して確認に行かせた。
しばらくして20代後半くらいの赤い髪をした騎士の男がやってくる。
「待たせたな。この騎士団隊長のアロイだ。」
「よろしくお願いします。」
ギルバードは、慣れない丁寧な口調で握手しようとするが拒否される。
「勘違いするな。お前のような一介の冒険者の助けなんか借りたくないがこちらも護衛の数が減ってな。別に戦力として期待してないから邪魔にならないように端っこにで壁にでもなってくれ。」
そう言うとアロイは立ち去って行く。ギルバードは、若い騎士に案内され一団の一番外側に配置される。しばらくして、アルカディア王国に向け出発する。
(アロイとか言ったか。偉そうなやつだな。テメェらの事情で呼んでおいてしかたなくってなんだよ。だったら依頼するなよ。クソ迷惑なんだよ。それに戦力として期待してない、壁になれだぁ?テメェを壁にするぞ)
ギルバードは、アロイの態度にイラつきながらも護衛として周りを警戒しながら歩いていく。
(それにしても馬車といい騎士の身なりといい普通の貴族とかじゃないな。相当身分が高そうだ。)
歩きながら、近くにいた騎士に話しかける。
「すみません、これってどこまで向かうのですか?」
「聞いてませんでしたか。ここからまず王国領に戻り、道中各地の領土を回りながら城まで向かいますよ。」
この人は丁寧だな、と関心する。
「へぇー、そうですか...ちなみに何日くらいの予定ですか?」
「王国領には、明日までには入れると思うのでそこから20日くらいかけて城に戻る予定です。」
長すぎだろと思いながら質問を続ける。
「もしかしてずっと野宿ですか?」
「いいえ、今夜は野営ですが、王国の領内に入ったら宿が用意してあります。」
「そうですか.....ちなみに今護衛している方が誰かって教えてもらえますか?」
「すいません、それは出来ません。」
「そうですか、ありがとうございます。」
(やっぱり教えてもらえないか...まぁ誰でもいいけど。敬語疲れるなぁ。)
その後、日が沈み始めたあたりで野営の準備を始めた。当然のようにギルバードの分のテントはなく、一人だけ野宿となった。日中一緒に話していた騎士の人からは「テントに入れましょうか?」と誘われたが「一人が落ち着くので」と断った。
火を起こし木を背にしてボーッとしながら干し肉を食べているギルバードの元へ、同い年くらいの胸元のあたりまで伸びた雪のように真っ白な髪、琥珀色の目をした綺麗な女性が周りに見つからないようにキョロキョロとしながらゆっくりと食事を持って近づいてきた。ギルバードは、その女性から目が離せなかった。今まで色々な女性と一夜限りの関係を続けてきたが生まれて初めて一目惚れしていた。
「あの...冒険者の方ですよね。もしよろしければ、食事食べられますか?」
女性は、様子を窺うように遠慮がちに食事を渡そうとしてくる。
「あっ!いえご心配なく、飯は持ってきてますので。」
ギルバードは、平静を装いながら返答しながら目線を逸らすように女性が持っている料理を見るとパンとシチューという野営とは思えないほど豪華な料理に驚いた。
「お隣座ってもいいですか?」
「えっ?隣ですか?いいですけど汚れますよ?」
ギルバードは、深く考えないようにするため思考を逸らそうとする。女性は、ギルバードから許可をもらい、隣に木を背にして座る。
(騎士に女性はいなかったから侍女か?)
「あの、この料理余ってるので遠慮せずに食べていいですよ。」
「えっと...じゃあ頂きます。」
女性が申し訳なさそうに話してくるのでギルバードは断ることができずに食事を貰う。
ギルバードが食事している様子をジーッと女性は見つめる。ギルバードが食事を食べ終えると女性は安心したように微笑む。
「よかった。食べてくれて。....あのお名前聞いてもよろしいですか?」
「ギルバードです。」
「ギルバードさんですか。私は、侍女のエアです。よろしくお願いします。」
エアと名乗った女性は丁寧にお辞儀をする。
「こちらこそよろしくお願いします。何で食事なんてもってくれたんですか?」
ギルバードもボロが出ないように丁寧に挨拶をして料理を持ってきた理由を聞く。
「私がお仕えている主人が護衛のお礼に持って行ってあげてとおっしゃいましたので。」
「それでですか。...ご厚意ありがとうございます。明日からも護衛の依頼をきちんとこなしますと伝えてもらってもいいですか?」
「はい、もちろんです。あの、敬語やめませんか?同じくらいの年齢ですよね?私、18歳です。」
「俺も、18です。....分かった、敬語やめるね。敬語慣れてなくて疲れるんだよな。」
「ふふっ、やっぱり慣れてないんですね。頑張って話してるのが伝わってきましたから。」
「冒険者なんてしてると敬語なんて話さないからな。」
「そろそろ戻りますね。またお話ししましょう。」
そう言うとエアは、立ち上がると服についた汚れをパタパタと叩き、お辞儀をして一番大きなテントへとコソコソ戻って行った。
ギルバードは、その後ろ姿をボーッと見惚れていた。頭をブンブンと振って冷静になる。
(落ち着け俺。貴族の侍女に惚れたなんてニコラスに知られたら爆笑されてしまう。これが終わったら二度と会うことはないんだ。それに今までどれだけの女と関わってきたと思う。今更、なに緊張してるんだ。....寝て忘れよ。)
ギルバードは、周りへの警戒へと意識を割きながらも目を閉じて休む。
-テントの中-
「王女様、今までどこにいらっしゃたのですか。」
水色髪の女性が、ギルバードに対しエアと名乗った女性にそう言った。
「そんなに心配しなくても良いわよ、シャロン。ちょっと冒険者の方に挨拶をしてたのよ。」
エアと名乗った女性は、アルカディア王国第一王女エレノア・リ・アルカディアだったのだ。
「何かあったらどうするんですか。それに冒険者の方には王女様の護衛ってことは知らせてないんですよ!」
「分かってるって。ちゃんと侍女だって言ったから。」
はぁ〜、とシャロンは溜息をつく。
「あんまり勝手に動かないでくださいよ。ヘルス隊長をはじめ多くの護衛の騎士が地竜に殺されて、今は副隊長だったアロイさんが隊長となってまとめてますが、騎士たちは隊長を失って混乱してるんですから。」
「ヘルスの穴埋めのために腕の立つAランクの冒険者に依頼したんじゃない。心配すぎるよシャロンは。私より年下なんだからもっと気楽になったら?」
「そんなこと出来ませんよ。」
「小さい頃から一緒なんだからもっと素直になってくれてもいいんじゃない?」
「私は、王女様に仕えるために育てられましたので。」
「硬いんだから、せめてエレノアって呼んでよ。」
「分かりました、エレノア様。でも、二人っきりの時だけでもよろしいですか?」
「ま、今はそれでいいよ。」
エレノアは、名前で呼んでくれたことに満足したように笑顔を浮かべている。シャロンも、主人に振り回されているが小さい頃のようにエレノアと名前で呼べて少し微笑んでいる。




