第22話 クラス対抗戦
クラス対抗戦当日。
「今までの練習お疲れ様。対戦に出る順番は、こちらで指定する。リーダーの強さ順で決めさせて貰った。ジル、サラ、アッシュフォード、ノエラのチームの順で出てくれ。練習の成果を十分に発揮するように。」
ーー
第一試合は、ジルチームとBクラスのゴードチーム。
結果は、ゴードチームが勝った。
第二試合は、ルークがいるサラチームとBクラスのピートチーム。
結果は、サラチームが勝った。
第三試合は、俺のチームとBクラスのクロエチーム。
ーー
クロエチームは、剣術が1人、魔法が4人のチームだ。
試合前の作戦会議を行う。
「相手は剣使い1人だ。ロイド、一人でいけるか?」
「ああ、任せとけ!」
ロイドが自信満々に答える。
「俺含め他4人は、魔法で戦う。Bクラスに中級魔法を使える生徒がいるって聞いたことがある奴はいるか?」
全員が首を横に振る。
「そうか。...じゃあ、俺が中級魔法を使うからなるべく敵を惹きつけてくれ。」
「分かった。アッシュの魔法で敵を一掃するってことだね?」
ハルが聞いてくる。
「いや、俺にノエラほどの威力は出すことができないから、全員は倒せないと思う。...それと、中級魔法使ったら魔力が結構削れるから、使った後は、剣を使う。」
「任せて。アッシュの援護はするから。」
カリンが胸を張って言う。
「いよいよ本番だ。気合い入れていこう。」
「「おう!」」
4人が声を揃えて返事をした。
ーー
「それでは、第三試合開始!」
Bクラスの担任であるダン先生が開始の合図をする。
「[大いなる大地よ、穿つ弾丸となれ]」
「[熱き火炎の素よ、我が手に集まれ]」
「[吹き抜ける風たちよ、大気を切り裂け]」
開始の合図とともに、カリンが『アースバレット』をハルが『ファイアーボール』をエマが『ウインドカッター』を発動した。ロイドは一気に駆け抜け、相手との間合いを詰める。
アッシュも、『ウインドカッター』を使い、無数の刃で敵チームの放つ魔法を相殺していく。
アッシュが魔法を相殺していくため、クロエチームは防戦一方になる。
開幕戦を制したアッシュは、中級魔法『風空槍』の発動のため、深呼吸をし、集中力を高める。
ーヒュゥゥゥゥゥゥ
アッシュの周囲の風が集まり、一本の槍となり槍の周わりには無数の風の刃が吹き荒れている。
ーヒュンッ
槍は、アッシュの元から音を置き去りにするほどのスピードで放たれる。
「なっ!」
最初にリーダーであるクロエに攻撃が当たる。クロエは反応できずに結界の効果により場外へと飛ばされる。
ーヒュンッ、
そのまま目標を他のメンバーへと移していく。スピード、威力は徐々に落ちるがカリン、ハル、エマ、ロイドの4人からの攻撃も相まって風の槍を防ぐことができず、クロエチーム全員が場外へと飛ばされた。
「試合終了。勝者アッシュフォードチーム!」
ダン先生が、試合終了を告げる。
「よっしゃー!」「勝ったぞー!」
チームメイトがアッシュのもとに集ままり、ハイタッチをする。
「おい、アッシュ。全員倒せないって話どこ行ったんだよ。一人で全員倒しちまったじゃねぇか。」
ロイドが背中をバンバンと叩いてくる。
「痛いぞ、ロイド。みんなが相手の注意を引いてくれたおかげで俺の魔法に対応できなかったんだよ。俺一人の力じゃないよ。」
「謙遜すんなって!」
「そうよ。アッシュのおかげだよ。」
「やっぱりアッシュさんはすごいですね。」
「ありがとね、アッシュ。」
ロイド、カリン、エマ、ハルがそれぞれ俺を褒めてくれる。
「照れるからやめてくれ。...こちらこそありがとね、みんな。」
ーー
それから観客席に戻り最後の一試合、ノエラチームの応援をする。相手は、例の貴族ルーカスチームだ。
「それでは第4試合、始め!」
ルーカスチームは、ルーカスと取り巻きのジムウッド、ザックが剣をその他の2人が魔法を使う。
「行くぞ!ジム、ザック。」
開始の合図とともにルーカスたち3人は突撃する。
ノエラチームは、剣使いが2人しかいないため、余ったルーカスはそのまま魔法使いの元へ突撃する。その相手を、ミアが担当する。
ミアは、ファイアーボールを次々と放っていく。
「[寄せる牙を焼き払い、燃えさかる盾となれ]」
ルーカスは突撃をやめ、『フレイムガード』の詠唱をする。詠唱を唱えると、ルーカスを守るように円形の炎の盾ができ、ミアの攻撃を防ぎながら間合いを詰める。
「チッ!鬱陶しいな。おい、援護しろ。」
ルーカスは、後ろにいる2人の魔法使いたちに命令する。しかし、その二人はノエラの攻撃を防ぐのに手一杯だった。
ミアの援護にノエラチームのもう一人の魔法使いレックス入り、ルーカスに次々と攻撃する。
戦いが拮抗していたが、ついにルーカスチームの魔法使いが一人ノエラ倒される。
「レックス君、こっちの相手お願い。」
「おう!」
ノエラはレックスに指示を出し、ノエラ本人は『激流』発動の準備をする。
ーゴォォォォォ
全員の頭上を覆うように巨大な水の渦が生成されていく。
ジムウッドとザックと戦っているノエラチームの剣使い同士は拮抗しており、ノエラを止めることができない。レックスの相手も攻撃を防ぐのに精一杯だ。
ルーカスは、『フレイムガード』でミアの攻撃を防ぎながらミアとの間合いを詰めている。ノエラのことなど視界に入っていなかった。
「ノエラの勝ちだな。」
観戦していたアッシュは確信をもって呟く。
ルーカスチームはノエラを止めることができずに、巨大な水の渦が完成する。しかし、ノエラはそのまま放つとチームメイトにも被弾するため、攻撃を躊躇っていた。
「ノエラ、やっちゃえ!」
躊躇っているノエラに気付きミアが声をかける。
その言葉を聞き、ノエラは手を振り下ろす。
「クッ!」
ルーカスはノエラの攻撃に気付き、前方に展開していた『ファイアーガード』を頭上に展開する。
ードゴォォォォォォンッ
巨大な水の落下音と共にノエラ以外の全員を巻き込む。落下した水が土を抉り濁流となり周囲に流れる。魔法を発動したノエラは、濁流から身を守るため『アクアシールド』を展開する。
水飛沫が視界を奪う。飛沫が雨のように地面に降り注ぎ、視界が晴れていくと、そこにはノエラだけが立おり、ノエラ以外の戦っていた生徒8人は結界により場外に飛ばされていた。
「試合終了、勝者ノエラチーム!」
ダン先生が試合終了を告げる。
ノエラはチームメンバーと勝利の喜びを分かち合う。
ーー
放課後、ノエラと二人で寮に帰る。
同じ寮に住むルークは、別のところで用事があるらしい。
「お疲れ、ノエラ。相変わらず『激流』の威力すごかったね。」
「えへへ、そうかなぁ。...そう言うアッシュも『風空槍』で勝負決めてたじゃん。」
「それはチームのみんなが注意を惹きつけてたからね。」
「私もそうだよ。」
「次は、アッシュとチーム組みたいなぁ。」
ノエラが呟く。
「そうだな、ノエラと組んだら色々な作戦立てれるだろうし、そこにルークとミアも入れたら絶対楽しいだろ。」
「うん、そうだね。絶対楽しいよ!」
ノエラは、少し前に出て笑顔で振り返える。
「...ッ!」
思わず目を逸らしてしまう。
(相変わらず破壊力が高いな、ノエラの笑顔は。無自覚にしてそうだから将来変な男に引っかからないか心配だ)
ーー
-寮内のとある一室-
ードガァンッ!
「くそぉ!平民の分際で貴族であるこの俺様をコケにしやがって。」
机を蹴る音と共に男の怒声が部屋に響く。
「ノエラ・フォレスト、絶対に許さねぇぞ。」
男は引き出しから金の入った袋を取り出し、部屋の扉を開ける。
バンッと乱暴にドアを閉め、寮を後にする。
ーー
その男は、グランツの街中にある『宴の夜』と言う店へと入る。
ーカランカラン
「ガキがここになんのようだ?」
店の中の小汚い酒に酔った男が店に入ってきた男に喧嘩越しに話しかける。
「依頼だ。父上から困ったらここに依頼しろって聞いたぞ。」
「なんだ、客か。ここは、金さえ出せば殺しや誘拐などなど、なんでも引き受けるぜ。...へっ、『父上』なんて言い方貴族かなんかか?」
卑しい笑みを浮かべながら男は話す。
「そうだ。俺は、マイヤー男爵家だ。」
「へいへい、お貴族様がここになんの依頼だ?」
(マイヤー家?聞いたこともねぇな。わざわざ本人が裏の店に足を運ぶなんざどうせ領地も持たない落ち目の貴族だろ?)
「貴族である俺をコケにした平民の女を誘拐しろ。金ならある。」
ージャララッ
金の入った袋を、男に向けて投げる。
「確かにその依頼受けたぜ。その女ってのは誰だ。」
「グランツ初等学校に通うノエラ・フォレストって名前の青髪の女だ。」
「その女誘拐してどうするんだ?犯して大人の階段でも上がるのか?」
相変わらずの卑しい笑みでニタニタと話す。
「あ?違ぇよ。平民の女なんかで興奮するかよ。痛めつけた後で奴隷商にでも売るんだよ。」
「俺の名前は、ダグだ。よろしくなお坊ちゃん。」
「お坊ちゃんじゃない。俺はルーカス・フォン・マイヤーだ。ルーカス様と呼べ。」
「へいへい、分かりましたルーカス様。それでいつ誘拐しますか?」
ダグと名乗った男は、下手な態度をとってはいるが口調はルーカスを舐め腐っている。
ルーカスはそれに気づかず満足げに喋る。
「明日、学校が終わったら攫え。」
そう告げるとルーカスは店を出て行く。
ダグは店で一人になると、金の入った袋を見る。
「金貨10枚か。まぁガキ、それに女一人攫うくらいなら十分だな。それにしてもあのガキはバカだな。落ち目の男爵家なんて平民と大して変わらないのにとんだ世間知らずだぜ。おい、話聞いてただろ?今日はこの金で酒でも飲もうぜ?」
ダグがそう言うと、店の奥の扉からゾロゾロと薄汚い男たちが出てくる。
「いいのか?ダグ。そいつはお前の報酬なんだろ?」
「あんな内容仕事のうちにも入んねぇよ。」
「違いねぇな。ギャハハハハッ!」
男達は下品な笑い声を店に響かせながら酒を飲む。




