第19話 中級魔法
初級魔法を使えるかどうかのテストがあり、全生徒がクリアしたため、クラス対抗戦に向けた魔法の実戦について説明がされた。
「クラスの全生徒が初級魔法を一つは使えるようになったから魔法の実戦練習について説明する。魔法の戦いになった時は、基本的に魔法の撃ち合いだ。手数で勝負するも魔法の威力で勝負するもどっちもありだ。個々人が自分に合う戦闘スタイルを身につけるといい。」
生徒の反応を見ながらエリス先生は話していく。
「また、授業で教えたのは各属性1つずつしか教えていないが初級魔法もいっぱいある。それぞれで自分が覚えたい魔法を覚えていくといいだろう。詠唱文は、教科書を見ればわかる。魔力に余裕があるものは中級魔法を覚えるのもいいだろう。ただし、中級魔法は私が許可したものだけ練習を許す。理由は、魔力が足りるか判断するためだ。実際に誰かと組み手をしてもいい練習になるだろう。怪我しても治癒魔法で治せるし医務室もあるから心配するな。...以上だ。質問があるなら聞きに来い。解散。」
「「はい」」
クラスのみんなが返事をし、いつも通り生徒たちは仲が良いグループに分かれた。もちろん俺は、ノエラ、ルーク、ミアの3人と一緒だ。
「俺は、中級魔法の許可もらいに行こうと思うけどどうする?」
俺が尋ねると真っ先にノエラが「ボクも行く。」と身を乗り出した。
「俺はパス。」とルークが答える。
「私も大丈夫。」とミアも答える。
3人がそれぞれ返事をする。
「じゃあ、ノエラ行こっか。」
「うん。」
エリス先生の元にノエラと共に行く
「エリス先生、中級魔法使用の許可をもらいにきたんですけど。」
「ノエラとアッシュフォードか、分かった許可を出そう。ノエラは心配いらないと思うが、アッシュフォードは魔力量に気をつけろよ。それと、普通の的じゃすぐ壊れるからあっちにある中級用の的を使え。」
エリス先生が指を刺した方を見ると、いつも魔法で使ってる的とはずいぶん離れた位置にある金属製の的があった。
「はい、分かりました。ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
俺とノエラは、許可をもらい終え、ルークとミアの元へ戻る。
「おかえり、どうだった?」
「問題なくもらえたぞ。ルークとミアは、新しく覚えていく魔法何にするか決めたのか?」
「ああ、俺は剣メインで戦う時に使えそうな魔法覚える予定だ。」
「私は、とりあえず攻撃とか防御なんかの色々な種類の魔法を覚えていこうかなって思ってる。」
「そうか、俺とノエラはとりあえず中級魔法覚えていくから特訓は別々だな。...あっ、そうだ。最初っから無詠唱で覚えていこうとしないほうがいいと思うぞ。ちゃんと詠唱して魔法を使いどんなものか『想像』出来るようになってから無詠唱を試した方が俺は上達しやすくなると思う。」
全員の方針が決まったので、それぞれの特訓に移る。
ーー
俺とノエラだけみんなと離れた場所に移動した。
「ノエラはどの属性覚えるんだ?」
「ボクはとりあえず適性が高い水属性覚えようかな。アッシュは?」
「俺も一番適性が高い風属性かな。」
教科書を捲り、俺は風属性の中級魔法が乗ったページをノエラは水属性の中級魔法が載ったページを見る。
「俺は、『風空槍』をまず覚えようと思うけど、ノエラは決めた?」
「えーっと...ボクは、『激流』にするよ。」
「分かった。まず俺から使ってみるね。」
的の前に立ち、教科書で確認しながら詠唱する。
「[大気を満たす静かなる風よ、我が手にて鋭き刃となり、敵を穿て]」
ーヒュゥゥゥゥッ...
詠唱を唱えると同時に、初級魔法を使った時とは比にならないほどの魔力が抜ける感覚と共に、1点の空間に吹き荒れる風が集まり、一本の槍となる。槍の周囲には風の刃が吹き荒れ、静かな殺気を放っている。
ーキィィィィィンッ...バコォォォォォン
その槍は、音を置き去りにし目に見えぬ速度で放たれ、気がついたら金属製の的に着弾して霧散した。
離れた場所にいた生徒が大きな音に、「なんだなんだ?」と練習をやめ、注目する。
「すごい!すごいよアッシュ。」
ノエラがぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。
「はぁ...はぁ...嘘だろ。初級と中級でここまで変わるのかよ。...一発で限界だ。」
的自体を破壊することはできなかったが、その威力と魔力消費の桁違いさに驚愕する。そして、大量の魔力を消費したことでその場に座り込む。
ノエラは、さっきまでのはしゃいでいた様子とは違い、心配そうに近づいてくる。
「大丈夫...アッシュ?」
「ちょっと、魔力を消費しすぎただけだ。エリス先生が気をつけろって言った意味がわかったよ。今の魔力量じゃ、一発が限界みたいだ。」
「7歳で中級魔法が使えるだけで立派なことだ。」
いつのまにか近くに居たエリス先生が声をかけてくる。
「『風空槍』成功していましたか?」
「ああ、出来てたぞ。いずれあの的破壊できる威力を出せるだろう。」
「ありがとうございます。」
それからしばらく休憩をして、立てるくらい落ち着いた後にノエラが的の前に立つ。
俺と同様に教科書を見ながら、詠唱を唱える。
「[青き深淵に集いし水流よ、轟く滝となりて立ちはだかるすべてを呑み込め]」
ーゴゴゴゴゴゴッ....
そうノエラが唱えると、地鳴りのような音を鳴らし、的の頭上に水が渦となって集まっていく。
ードバァァァァァァンッ!!
ノエラが手を振り下ろすと同時に、水の渦が巨大な滝のように的に降り注ぐ。叩きつけられた水圧に地面がエグれ、土を含んだ濁流となり周囲を巻き込む。
「...っ!?えっ」
魔法を放った張本人であるノエラは、予想以上の威力の大きさに驚き、濁流が迫っていることに反応が遅れる。
「くっ...」
ーダンッ!
残り少ない魔力を使い、足元に『ウインド』を纏い『風神流』の技も使い地面を思いっきり蹴る。今出すことができる最高速度でノエラに近づく。
「あっ...!」
濁流が迫る寸前でノエラ力強くを抱き寄せ、そのまま勢いを殺さずに濁流の範囲外に逃げる。
「はぁ、はぁ...大丈夫か、ノエラ?怪我はないか?」
「...うん、大丈夫。...ありがとう。」
「...それにしてもノエラの中級魔法の威力高すぎだろ。」
視線の先には、ノエラが放った『激流』によってできたクレーターがあった。
「あっ...うんそうだね。ここまでなるなんてボクも思ってなかったよ。...アッシュも魔力いっぱい使って疲れてたのに迷惑かけてごめん。」
俯くノエラの頭をポンポンと撫でる。
ノエラは、俺の手が頭に触れた瞬間ビクッとなったが、拒むことなくそのまま身を委ねる。
「...謝るなよ。友達を助けるのは当然だろ。それに、やっぱりノエラはすごいな。『素質量』が高いだけのことはあるな。...魔力の方は大丈夫そうか?」
「うん、多分問題ないと思う。...本当にありがとう...アッシュ。」
ノエラは、顔を上げ、今にも泣き出しそうな表情で再度お礼を言う。そんなノエラの頭を優しく撫で続ける。
「おい、さっきのスゲェな。ノエラちゃんがしたのか?」
「ノエラ大丈夫だった?」
ルークとミアも練習を中断し、こっちに来る。
それからも、音に驚いたクラスの生徒たちがゾロゾロと集まってくる。
パンパンとエリス先生が手を叩き、各自自分の練習に戻るように伝え、生徒の集まりが解散し、俺とノエラ、エリス先生だけが残った。
「ノエラ、素晴らしい魔法だった。でも、威力を自分で調整できるように練習をしろ。初級魔法で魔力を込める量の調整を練習するといい。」
「はい、分かりました。」
そう言い終えると、エリスは他の生徒の指導に戻った。




