第17話 休日
学校が始まってからの初めての休日。ノエラ、ルーク、ミアの三人と一緒に遊びに行こうという話になった。発起人は、ミアだ。どうやらこの街のおすすめの場所を教えてくれるらしい。
4人はミアの実家である『パン工房ベイカー』というパン屋さんに集合することになった。
俺やルーク、ノエラは寮に住んでいるため、3人でミアの家に行くことになった。
俺は、実家にいた時と変わらない無地の紺色のシャツにやや黄色がかった明るい茶色のハーフパンツとラフな格好をしている。
ルークは、白のインナーシャツに明るいオレンジの前を開けたパーカージャケット、ズボンは濃い茶色の短パンとイメージ通り元気少年って感じの格好だ。
ノエラは、薄いピンク色の袖口がふんわりしたブラウスに白のショートパンツの可愛らしい格好だ。ルミィの町にいた頃は、ツノを隠すためフードばかりを被っていたが、魔法で隠す必要がなくなったから自由にオシャレを楽しんでいる。
「ノエラ、その服どうしたんだ?」
「この前、ミアと一緒に帰った時があったでしょ。その時に一緒に買い物行ったの。どう似合ってる?」
くるりと一回転してみせると、いつも何か聞く時と同じように、ノエラは下から覗き込むように上目遣いで聞いてくる。
「似合ってるよ。」
「...っ!....ありがとう。」
ストレートな感想にノエラは少し顔を赤くする。
「アッシュはルミィに居る時からその服着てるよね。他の服着ないの?」
ノエラは話題を逸らす。
「この服気に入ってるんだ。動きやすいし。」
「いつも同じ服じゃつまんないでしょ。今度一緒に買いに行こうよ。ボクが選んであげる。」
「じゃあ、よろしく頼もうかな。」
「任せて!」
そう言って自信満々に胸を手で叩く。
「なぁ、お二人さん。俺がいること忘れてない?」
「忘れてないってルーク。ミアが待ってるし早く行こう。」
俺がそう言うとなんとも言えない顔をする。
「はぁ〜、そうだな。行くか。」
(ノエラのパーカー以外の私服は新鮮だ。それにしてもノエラは相変わらず可愛いな。将来絶対モテるだろうな。前世では、ありえないと思ってた『可愛い幼馴染』は本当に存在したんだな。俺自身ファッションセンスに自信が無さすぎてずっと同じ服着てたけどノエラが選んでくれるなら安心だな。)
ーー
それから、3人で談笑しながらミアが待つ『パン工房ベイカー』に着いた。
ミアが店の前で手を振りながら出迎えてくる。
「みんなー、こっちだよ。」
ミアは、ノエラと同じ袖口がふんわりした白のブラウスに深みにある黄色のサスペンダースカートを身につけている。
(やっぱりこの世界は、化学繊維とかがないから麻とか綿素材の服がほとんどだな。魔物とかの素材とかで服や靴とかも作られてそうだけど)
「みんなよく来たね。ここが私の家、『パン工房ベイカー』だよ。約束通りお昼をご馳走してあげる。」
ミアの両親に挨拶をし、パンを昼食として食べる。
「ノエラその服やっぱり似合ってるね。」
「ミアが選んでくれたおかげだよ。また一緒にお買い物行こうね。」
「もちろん。」
二人がガールズトークに花を咲かせてる間、ルークと話す。
「ルーク、今度の休み空いてるか?」
「ん?空いてるぞ。どうしてだ?」
不思議そうに首を傾げる。
「次の休み、特訓しようと思って一緒にどうかなって。学校に申請すれば演習場使えるみたいだし。」
「お!いいな、もちろん行くに決まってるだろ。」
そこにミアが身を乗り出してくる。
「なになに、二人で特訓するの?私達も混ぜてよ。ねっ、ノエラ?」
「うん、ボクたちも参加したい。」
ノエラもコクコクと頷く。
「もちろんいいぞ。」
「やったぁー!」
ミアは嬉しそうにする。
ーー
その後も4人で楽しく会話を続けた。日が傾き始めた頃にミアがそろそろ行こっかと話す。そう言えば今日はミアのおすすめの場所に行くって話だったよなと思い出す。
ミアの両親にお礼を言った後、ミアの言うおすすめの場所に案内された。
そこは街が見下ろせる高台だった。
「わぁー、綺麗。」
ノエラが感嘆の声を上げる。
「でしょ、...ここ好きなんだ。特に夕方の今くらいの時間。なんか落ち着くんだよね。」
「なんか俺も分かる気がする。」
ルークが同意する。
「この街に少なくとも三年間居るんだし何か悩み事あったらここおすすめだよ。...ま、私の家のパン屋でもいいけど。」
ミアの真面目だけど冗談めいた言い方に4人でくすくすと笑う。
4人で黄昏ながら何気ない話をする。
(平和だな。この日常が続けばいいな。続けるためにも強くならなきゃな。)
ーー
その後、ミアは家に帰るため、ルークは別の場所で素振りをしてくると二人と別れ、ノエラと二人で帰路に着く。
「あの二人、いい人達だね。...ボク、あの二人になら、いつかツノのこと話したいって思うんだ。アッシュはどう思う?」
ノエラは、不安そうにしながらも覚悟を決めている目でこちらの意見を聞く。
「俺は、ノエラが打ち明けるっていうなら反対しないよ。それに俺もあの二人のことは信頼できるって思ってるから。」
「そっか...。ありがと、流石に今すぐは勇気が出ないけど、もしも言う時はアッシュも絶対そばにいてね。」
「もちろんだ。」
「ふふ...。やっぱりアッシュは優しいね。」
そう言いながら手を繋いできた。別に断る理由はないのでそのまま手を繋いだまま寮の前まで帰る。
名残惜しみながら手を離す。
「じゃ、また明日。」
「じゃあね。」
ノエラが女子寮に入ったのを見送って自分の部屋に戻り、一人考え事をする。
ノエラは、ルークとミアのおかげで俺以外にも友達ができて、いい方向に成長していってる。いずれツノのことも自分から話すって言って欲しかったけどまさかこんなに早く決断するなんて。やっぱり本当の自分を知ってもらいたいって思ってる証拠だよな。
その分、ツノのことを話して、距離を取られたらその時こそノエラは立ち直れなくなりそうだな。この世界の一般人がどこまで『三大種族』に恐怖しているかが大事だな。打ち明けるタイミングは絶対に間違えちゃいけないな。
今のノエラは誰が見ても普通の可愛い7歳の女の子だ。でも、抱えてるものが大きすぎる。今俺が作った魔法が解けただけで、ノエラがまたあの暗い少女に戻ってしまうかもしれない。もっと完璧な魔法陣を作らないとな。その辺も学校で学べるだろ。




