第16話 剣術の授業
エリス先生から解散の合図があった放課後。
ノエラはミアと買い物に行くそうなので、ルークと一緒に帰宅している。
「やっと剣術の授業が始まるぜ。わくわくするなぁー。」
ルークが、嬉しそうな声で話す。
「嬉しそうだな。そんなに剣術好きなのか?」
「ああ、大好きだ。...父さんは騎士だったんだよ。だから、俺に剣術を教えてくれてた。でも、2年前俺が5歳の時に死んじまった。だから、俺が父さんの後を継ぐんだ。立派な剣士になってな。...どうだ、いい夢だろ?」
どこか悲しげにでも、前を向いて明るく話す。
「いい夢だな。」
「だから、騎士になるために剣術も魔法も一番になって、王都に行くんだ。...だから、俺に教えてくれ。父さんに教えてもらったことは本当にちょっとだけだから。」
さっきまでの明るさに不安な声色が混じる。
「友達の頼みを聞くのは当たり前だろ。...音を上げるなよ。」
「上げるわけないだろ。...ありがとなアッシュ。じゃあ、また明日。」
ーー
翌日、午前中は三つの流派の説明があった。
この学校の先生は、エリスが『鏡神流』、Bクラスの担任のダンが『闘神流』と『風神流』を使え、中級くらいの腕前らしい。この二人の担任が交代でそれぞれの流派を教えるそうだ。
午後からは、演習場で実技が始まった。
「今日は私が担当する。とは言っても剣も握ったこともない者が殆どだろうから素振りから教えていく。...その前にレクリエーションをしよう。アッシュフォード、前へ。」
「は、はいっ!」
突然名前を呼ばれびっくりしながら立つ。
「お前は、今年の新入生の中で一番剣術の実力がある。私と模擬戦をしよう。」
そう言うと木剣を投げられる。木剣を握り、エリス先生と相対する。
(エリス先生は、中級だ。父よりは実力は下だがおそらく俺よりは格上だろう。流派は、『鏡神流』だから俺が動くのを待つはずだ。...ここは誘いに乗るか。本当は
魔法も混ぜたいが、剣術の授業だし出来ないな)
アッシュは、呼吸を整え地面を蹴り一気に間合いを詰める。
闘気を込めた一撃を振るう。
ーガギィンッ!と木剣同士が当たる鈍い音が演習場に響く。
音に反して手応えは感じず、エリスは攻撃を受け流しカウンターを仕掛ける。
(予想通りだ。)
エリスのカウンターを受け流し反撃する。
(やっぱり父さんに比べたら一撃が軽いな)
「ほう、中々やるな。」
俺が攻撃を受け流したことに感心したように呟く。
俺は反撃の手を止めず、手数で勝負をかける。
シュパパパパパパッ!風を切る鋭い攻撃がエリスを襲う。
攻撃を受けながらエリスは声を出す。
「終了だ。」
その合図とともに攻撃を止める。
「ハァ、ハァ.....っ」
父さんとの修行ぶりに『風神流』の手数で攻めるやり方をしたため、疲労により息が切れる。
(やっぱり長く全力は出せない。もっと体力をつけないと。...それにしても全然攻撃が通らなかったな。)
「見事だ。7歳でこれほど実力があるのなら将来が楽しみだ。しかも、全部の流派使うとは、誰に習った?」
「フゥー、フゥー...元冒険者の父に教わりました。」
「なるほど。」
そう言うと満足そうに生徒の方を向き直す。
試合を見ていた生徒たちは、何が起きたのか分からず呆然としていた。そんな中、仲が良いノエラ、ルーク、ミアだけは目を輝かせていた。
「いきなりアッシュフォードのように強くなれとは言わない。まず素振りなどで剣になれるところからだ。身に付けたい流派は、各自考えておくように。...じゃあまず木剣を握ってみろ。」
それから、魔法の時とは違い丁寧に教えていく。取り敢えず素振りまで教え終えたところで各自の練習になった。
俺は、全く剣を握ったことのないノエラとミアの元に行く。ルークは父親から素振りを教えてもらっていたので一人で練習している。
「アッシュ、すごかったよ。流石だね。」
ノエラは目を輝かせ嬉しそうに話す。
「ノエラはたまに俺の特訓見てたから知ってただろ?」
「それもそうだけど、やっぱりアッシュはすごいね。」
「ちょっと幼馴染同士で話すのはいいけど私にも教えてよね。」
「分かってるよ。よし、まずは構えからだ。」
それから二人に父さんに教わったように素振りの仕方を教える。
「ルーク、調子はどうだ。」
「アッシュか。お前マジですごいなぁ。俺には全然目で追えなかったぜ。」
「俺が先に教わってただけだから。...ルーク、長期休暇俺の家に来ないか?一緒に父さんに教わらないか?ルークのお父さんは亡くなって教えてくれる人がいないんだろう。」
「.....っ。ああ、そうなんだ。お前の言う通り、色々教わる前に父さんが死んじまった。唯一教わったことは素振りくらいだ。...迷惑じゃなければその話、宜しく頼む。」
「もちろんだ。俺も同年代のライバルが欲しかったんだ。父さんは強すぎて稽古にならないからな。」
お互い笑い合う。
ーー
授業を終え、ノエラとの帰り道にある公園に移動する。
「腕がパンパンだよぉ。手もジンジンするし、毎日素振りしてるアッシュはすごいよ。」
ノエラは初めての素振りで疲れた腕をさすりながら話す。
「ノエラもだんだん慣れてくるよ。...手を出して。」
「うん、何?」
ノエラは不思議そうに首を傾げ、素直に両腕を伸ばす。
「ひゃうっ!?」
俺は、ノエラの腕に温度を下げた『ウォーターボール』を押し当てた。いわゆるアイシングだ。
「これ何してるの?」
可愛らしく首を傾げる。
「剣術とか体を動かした後、疲れた場所を冷やすと疲れが和らぐんだよ。」
「へぇー、そうなんだ。...はぁ、冷たくてすごく気持ちい〜。」
両腕を冷やし終え、帰路に着く。
「今日はしっかり休めよ。また明日。」
「うん、じゃあね。」
手を振りながらノエラが寮に入っていくのを見送る。




